丘の上の王様とお妃様

よしき

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丘の上の王様とお妃様 23

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  私が、天使様とそっくりな肖像画の前て、思いを巡らせている時。誰かが部屋に入ってきた。
「タマちゃん...」
  それは、聖さんだった。
  聖さんは、真っ直ぐに私の元に来ると、そのまま力強く抱き締めてきた。
「珠子...」
  まるで、私が本物であることを確かめるように、愛おしそうに。
  私もその気持ちがうれしい...
  しかしその半面、複雑な思いが私の心を覆う。
そう、聖さんの体調ももちろん心配だけれど。新しく、天使様の肖像画への疑問が出てきたから。
  まずは聖さんの体調を確認する。
「聖さん、体調を壊してここにいるって...」
  聖さんは、ゆっくりと私の肩を両手で掴みながら、私の顔を見つめた。
「ああ、疲労していたみたいでね。主治医からは2~3日は、休めと言われたよ。」
「え?でも、かなり疲れているって...」
「!?  いや、ただ、皐月が少し長めに休暇を取れと言って。それで、この屋敷だったらタマちゃんが返ってくるんじゃないかと思って...」
  私は聖さんの話を聞いて驚いた。もしかして、『皐月さんが、私たちを逢わせるために 仕組んだ』そう思ってしまったから...いや、それが事実なのだ。流石、女性で若いが、専務を勤めてらっしゃるだけの事はある。
  しかし。私は、一目聖さんの姿を見たかっただけ。側にいては、きっと、彼を不幸にする。
  私は、聖さんの視線から目をそらした。
「あの、あなたが元気がないと皐月さんの手紙で知って。その、顔を見れたことですし。私、帰ります。」
  私は、そう言うと、聖さんの手を振り離そうとした。しかし、疲れているとはいえ、男の力を振り解く事はできない。
  聖さんは、私の顔を見つめながら呟くようにささやいた。
「すまなかった。タマちゃん。俺の口からもっと早くに、ご両親の話をしておけばよかった。本当に反省している。」
  聖さんは、そう言ってため息をついた。
「皐月が言ったことは、8割方合っている。でも、タマちゃんは勘違いをしている。」
そう、前置きをしてから更に話しかける。
「タマちゃんのご両親。響さんと環さんは、確かに君の事を皐月に聞いていて。OL時代、君のお付き合いしていた人の事で、色々心配されていた事は事実だ。だけど...」
  聖さんは、一息を置いてから私の事を傷つけないように話し出した。
「ご両親が事故を起こした日。お二人は、俺に会いに来る予定だった。」
  私は、驚いて聖さんの顔を見つめた。聖さんは、ゆっくりと。私を労るように話していく。
「その日は、前々から環さんが久しぶりに王家の本宅に来て、泊まってから君の居るアパートに行く予定だったんだ。」
  私は、てっきり両親が私の元に急いで向かうつもりで事故に遭ったのだと思っていた。だから、聖さんの微妙に違うニアンスに驚いていた。
聖さんは、更に話を続けた。
「まだ、前会長(聖の父)が元気な頃は、ここによく俺も来ていたんだが。俺が10才になった頃。父が寝たきりになってからは、一族に支えられながら世界中の帝国財閥の経営を担ってきた。そんな俺を影で励まし支えてくれたのは、君のご両親、響さんと環さんだった。だから、君の事を心配していた二人に、本宅に一晩泊まったらと、誘ったのは俺なんだよ。君のせいで事故を起こしたんじゃない。」
  聖さんは、私を再び抱きしめた。
「警察からも聞いたと思うけれど、本当に二人はもらい事故で亡くなったんだ。俺も独自のルートで検証をしてもらったが、やはり対向車の運転ミスによる不幸な事故だった。だから、君が自分を責めなくてもいいんだ。責めるなら、二人を本宅に招待したこの俺のせいなんだ...」
  聖さんの自分を責める声が、私の耳に低く悲しそうに響いていた。私は、聖さんの胸の中で、彼のシャツを必死に握りしめていた。
「それでも俺は、タマちゃん...いや、珠子。君が好きなんだ。」
 聖さんは、再び私を強く抱きしめた。
  私は、その胸のなかで、思った。
『ああ。私よりも聖さんの方が、何倍も心を痛めていたんだ...それなのに私がしたことは、聖さんを更に追いこんでしまったんだ...』
  私は、さっきまでの自分が恥ずかしかった。そして、私は、その思いよりももっと強く。もうひとつの思いが、私の心をあっという間に染めていくのが自覚していた。
  そして、その思いは、私の口からこぼれ落ちた。
「聖さん、私もあなたの事を心から愛しています...」
   聖さんは、その言葉を聞くと、更に強く私を抱きしめた。その後で、ゆっくりとお互いに顔を見つめあうと、二人は熱いキスを交わしあった。
  

  


  
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