丘の上の王様とお妃様

よしき

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丘の上の王様とお妃様 20

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  私、木崎 環子は、我が家に帰ってきた...

  と、言いたい所だが。
  実は父方の祖父母の家に戻っていた。
   何せ、実家は聖さんの別邸の隣である。今帰ったところで、直ぐに聖さんに会うかもしれない。しかし、ここなら流石の聖さんでも、来れないだろうし。その間に、私の事を忘れて他の人を選ぶかもしれない。いや、そうした方が彼も幸せになれる。
  しかし、だ。
  私も、急いで王家の屋敷から出てきて、4~5日...
  家より祖父母の住んでいた所は、田舎なのを忘れてた...。
  お陰様で、必要最低限の生活は出来るものの、食料の調達は自分で しなくてはいけない。近くにコンビニもスーパーも無い田舎だから。
  ちなみに風呂も薪割りをして、くべるというとレトロな風呂である。
「お婆ちゃん、どうやって独りで暮らしていたのかしら?」
  自分から勝手に上がり込んでおいて、数年前に亡くなった祖母につい、ぼやいてしまうほど、ここはのどかだ。
  祖父は、私が子供の頃に逝ってしまい、私の祖母は亡くなるまでここで暮らしていた。何度も両親が一緒に暮らそうと言っても、祖母はこの家を選んだものだった。
  だから、祖母が亡くなる少し前まで、よくこの家に両親と来たものだった。(高校2年の時に祖母は亡くなったのだが...)だから、私にすればもうひとつの実家になる。(私が大学に行った後は、父がここを管理していた。)

  そんなこんなで、今私は、のどかな自然の中で独りで色々と考えて暮らしているのだが。
  どうしても、両親の亡くなった原因に間接的にではあったものの、関わっていた事にショックで。
  その事を直視できずに、聖さんの元から逃げ出してきた私。
「ねぇ...お婆ちゃん。私、これで良かったのよね。」
  そう、呟きながらも、この家に来て心に浮かんでくるのは、聖さんの顔。何度もその顔を忘れようとしたけれど、どうしても忘れられない。
「天使様...私を守って。聖さんが幸せになれるように、私もここで暮らしていけるように。」
  私は、そう自分に言い聞かせるように、あの可愛らしい夢の中に出てくる天使様に、お祈りをするくらいしかできないのだ。
  自分でも分かっている。こんなに情けないだなんて。OLをやっていた頃よりもっと、今の方が情けなさすぎる私。
  「本当に愛していたから...」
   失ってみて初めて、聖さんのをこんなに好きだったんだと気付かされるなんたて。
「本当に馬鹿ね私。やっぱり、しばらくはここで暮らして、何もかも始めから始めなくっちゃ...」
  山々に囲まれたこの場所で、私は、空を眺めながら呟いた。

  
  

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