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丘の上の王様とお妃様 11
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部屋の中はまるで、小さな美術館の様に、壁一面に肖像画や写真が額に入れられて飾られていた。
私は、部屋の中を簡単に見回した。肖像画と写真のほとんどは、王さんの一族の方々のようである。
「この部屋は、父の大切なアルバムの様な部屋でね。」
王さんは、ドアから左回りに歩き出した。
「肖像画のほどんどは、見てのとおり王の一族の肖像画。そして...」
王さんは一つの写真の前に立ち止まった。
「ほら。これが若いときの父と君のご両親。」
そこに写っていたのは、王さんによく似た若い金髪碧眼の青年と、若かりし私の両親であった。
「高校時代から三人は、年も近いこともあって、仲がよかったそうだ。」
私は、モノクロームの写真の中で笑っている3人の若ものが、とても輝いて見えた。
「三人は大学を出た後、父と司さんは帝都財閥の本社に就職。環さんは、大学院へ進んだ。」
王さんは、次の肖像画の前に進んだ。その肖像画は、金髪の美しい女性が椅子に座り、男性がそのすぐ脇に立っているものだった。
「就職して3年。その頃父は帝国財閥の跡取りとして認知されていた。それに、結婚もし母が俺を宿していたからな。」
隣の肖像画は、王さんのお父様とお母様の若い二人の肖像画だろう。こちらの方は、男性の方が金髪に青い瞳をしていた。
「司さんも帝国財閥の本社で頭角を表していて。既この年で課長になっていて。優秀だった司さんは、祖父にも可愛がられていたらしい。」
二つの肖像画を見る限り、髪の色は違えど王さんは、肖像画の女性に顔が一番よく似ている。さぞや祖父母に可愛がられたことだろう...私は、自分の両親の話も気になってはいたが、王さんの綺麗な顔はお婆様からの隔世遺伝に違いないと、思わず想像を膨らませてしまった。
おうさんは、さらに話を続ける。
「その頃、祖父が懇意にしていた政治家のご子息と環さんに、縁談話が持ち上がり出してね。」
「縁談...」
王さんは、私の方を見ながらうなずいた。
「でも、それがきっかけでね。環さんが司さんに縁談の事を相談したら、実は二人は両思いだった事が分かって。それで、父が二人の駈落ちを手伝おうとしたんだ。」
自分の母親はご令嬢で、しかも両親が駈落...娘の私も流石に驚いてしまった。
何せ生前の両親は、そんな事を仕出かすような感じではなかった。どちらかと言うと、身内の私が見ていても超恥ずかしいぐらいな、バカップルな夫婦だった。そんなエリートとか、ご令嬢なんて、全く似合わない。
しかし、私はここで、微妙な、基本的な2つの違和感を感じた。
「でも、木崎の姓は母方の姓ですよね?」
それに対して、王さんの答えは至って簡素だった。
「環さんには、お兄さん夫婦がいたし。そもそも、祖父母も二人を気に入っていたからね。『駈落ちなんて言語道断!』と言うわけで。司さんが木崎の婿養子に入るなら結婚を許すと言うことになったと言う訳さ。」
なるほど...私の父司が木崎姓をを名乗ることになった所までは、理解した。
しかし、もう一つ。疑問が残っている。
「でも、なんでうちの両親は、帝国財閥の方に戻らなかったの?」
王さんは、次の写真の前にやって来た。そこには、喫茶店「坂の上」と私達親子の写真が飾ってあった。
「昔、父とご両親が若かった頃。この街によく遊びに来来ていてね...」
つまり、話はこうであった。
元々この丘の当り周辺を王家が所有していて。昔から別荘があったんだとか。その時別荘の管理をしていたのが、近藤不動産(近藤さんのお父さん)で。若かった近藤のおじさんも3人に混じってよく遊んでいたんだそうな。
その後、お互い社会人になって、この土地と疎遠になっていたが、父と近藤のおじさんは、ずっと連絡を取り合っていたのだそうだ。
それで、二人が駈落ちする話が出たとき、近藤のおじさんにお願いして。隠れ家として用意されたのが、私の実家だったのだそうだ。
結局、駈落ちはしなかったものの、両親がこの土地を気に入って。そのままこの地に移住してしまったのだそうだ。
そして、コーヒー好な母のために、器用な父が退職金を使って本格的なコーヒーの器具を揃えだし。結局、気がついたら喫茶店「坂の上」を開店していたのだそうだ。
「そして、俺が生まれてから5年後。タマちゃんがこの地で生まれたんだ。」
私は、自分の知らなかった両親の話を聞き終わると、自然に涙が頬を伝っていていた。
「私、何にも知らなかったから...知っていたなら二人の元にもっと早く帰っていたのに...」
王さんはそんな私を、両親の写真の前で優しく抱きしめてくれた。
私は、部屋の中を簡単に見回した。肖像画と写真のほとんどは、王さんの一族の方々のようである。
「この部屋は、父の大切なアルバムの様な部屋でね。」
王さんは、ドアから左回りに歩き出した。
「肖像画のほどんどは、見てのとおり王の一族の肖像画。そして...」
王さんは一つの写真の前に立ち止まった。
「ほら。これが若いときの父と君のご両親。」
そこに写っていたのは、王さんによく似た若い金髪碧眼の青年と、若かりし私の両親であった。
「高校時代から三人は、年も近いこともあって、仲がよかったそうだ。」
私は、モノクロームの写真の中で笑っている3人の若ものが、とても輝いて見えた。
「三人は大学を出た後、父と司さんは帝都財閥の本社に就職。環さんは、大学院へ進んだ。」
王さんは、次の肖像画の前に進んだ。その肖像画は、金髪の美しい女性が椅子に座り、男性がそのすぐ脇に立っているものだった。
「就職して3年。その頃父は帝国財閥の跡取りとして認知されていた。それに、結婚もし母が俺を宿していたからな。」
隣の肖像画は、王さんのお父様とお母様の若い二人の肖像画だろう。こちらの方は、男性の方が金髪に青い瞳をしていた。
「司さんも帝国財閥の本社で頭角を表していて。既この年で課長になっていて。優秀だった司さんは、祖父にも可愛がられていたらしい。」
二つの肖像画を見る限り、髪の色は違えど王さんは、肖像画の女性に顔が一番よく似ている。さぞや祖父母に可愛がられたことだろう...私は、自分の両親の話も気になってはいたが、王さんの綺麗な顔はお婆様からの隔世遺伝に違いないと、思わず想像を膨らませてしまった。
おうさんは、さらに話を続ける。
「その頃、祖父が懇意にしていた政治家のご子息と環さんに、縁談話が持ち上がり出してね。」
「縁談...」
王さんは、私の方を見ながらうなずいた。
「でも、それがきっかけでね。環さんが司さんに縁談の事を相談したら、実は二人は両思いだった事が分かって。それで、父が二人の駈落ちを手伝おうとしたんだ。」
自分の母親はご令嬢で、しかも両親が駈落...娘の私も流石に驚いてしまった。
何せ生前の両親は、そんな事を仕出かすような感じではなかった。どちらかと言うと、身内の私が見ていても超恥ずかしいぐらいな、バカップルな夫婦だった。そんなエリートとか、ご令嬢なんて、全く似合わない。
しかし、私はここで、微妙な、基本的な2つの違和感を感じた。
「でも、木崎の姓は母方の姓ですよね?」
それに対して、王さんの答えは至って簡素だった。
「環さんには、お兄さん夫婦がいたし。そもそも、祖父母も二人を気に入っていたからね。『駈落ちなんて言語道断!』と言うわけで。司さんが木崎の婿養子に入るなら結婚を許すと言うことになったと言う訳さ。」
なるほど...私の父司が木崎姓をを名乗ることになった所までは、理解した。
しかし、もう一つ。疑問が残っている。
「でも、なんでうちの両親は、帝国財閥の方に戻らなかったの?」
王さんは、次の写真の前にやって来た。そこには、喫茶店「坂の上」と私達親子の写真が飾ってあった。
「昔、父とご両親が若かった頃。この街によく遊びに来来ていてね...」
つまり、話はこうであった。
元々この丘の当り周辺を王家が所有していて。昔から別荘があったんだとか。その時別荘の管理をしていたのが、近藤不動産(近藤さんのお父さん)で。若かった近藤のおじさんも3人に混じってよく遊んでいたんだそうな。
その後、お互い社会人になって、この土地と疎遠になっていたが、父と近藤のおじさんは、ずっと連絡を取り合っていたのだそうだ。
それで、二人が駈落ちする話が出たとき、近藤のおじさんにお願いして。隠れ家として用意されたのが、私の実家だったのだそうだ。
結局、駈落ちはしなかったものの、両親がこの土地を気に入って。そのままこの地に移住してしまったのだそうだ。
そして、コーヒー好な母のために、器用な父が退職金を使って本格的なコーヒーの器具を揃えだし。結局、気がついたら喫茶店「坂の上」を開店していたのだそうだ。
「そして、俺が生まれてから5年後。タマちゃんがこの地で生まれたんだ。」
私は、自分の知らなかった両親の話を聞き終わると、自然に涙が頬を伝っていていた。
「私、何にも知らなかったから...知っていたなら二人の元にもっと早く帰っていたのに...」
王さんはそんな私を、両親の写真の前で優しく抱きしめてくれた。
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