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丘の上の王様とお妃様 8
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「さあ、お待ちかねですよ」
コンコンと軽やかに扉をノックしながら、スタッフのリーダーなる女性が私に微笑む。美人に微笑まれると、人間男女関係なく釣られて笑顔になるものである。
「失礼いたします、木崎様をお連れいたしました」
爽やかな声と同時に扉が開く。私も『清水の舞台から飛び降りる』様な(?)気持ちで身構えた。
扉の向うは、白が基調の応接間となっており、そこに王さんがかけていた。王さんは、私を見るなり、ニコリっと笑った。
「やあ、タマちゃん。綺麗だよ。」
...。
その言葉に私は、耳まで火照るくらい顔を赤らめてしまった。
「あ、あの。ずっとここに?」
私は、何故か少しモジモジしながら王さんにたずねた。
「まあね。でも本社内にいると、結局何かしらの仕事があるもんでね。お陰て 、これからの時間を邪魔されずにすむよ。」
少し皮肉をこめながらも、笑顔で王さんは話す。改めて、王さんが日本の経済界の中心の一人であることを実感する。
そんな事を考えている私の事をまるでお見通しと言わんばかりに、王さんは私の近くまでやって来た。
「さあ、姫の準備は出来た。お腹も空いたことだし、これから食事に行こう。」
今の状況を受け入れるだけで精一杯な私を、王さんは優しく微笑みながら、スマートにエスコートしてくれた。再びエレベーターに乗り、地下の駐車場までそのまま降りると、すでに黒塗りの高級車が用意されていた。そして、二人で後部座席に乗り込み、車は優雅に走り出した。
数時間前まで田舎にいた私達は、超VIPなフランス料理店の個室で食前酒で乾杯していた。この店は、常にTVや雑誌で話題になっており、予約3ヶ月待ち必死っと言われている名店だ。
「タマちゃん、苦手なものとかない?」
王さんは、常に優しく私に気を使ってくれる。いや、これが本当の紳士というものなのだろう。始こそ緊張していた私も、そんな王さんに少しずつ気を緩めていった。
王さんがオーダーした、呪文の様な料理が次々運ばれてくるたびに舌包みをううつ私。それを見て王さんが笑い、私もお酒が少し入っていた事もあって、楽しい時間を過ごすことができた。時には、お腹が痛くなるくらいにお互い笑って...こんなに誰かと一緒になって、笑ったことって、何年ぶりなんだろう...こんなに口に入るものが『美味しい』とおもったことは、大人になってから有っただろうか?
王さんとそんな楽しい時間を分けあえる今を、私は心からの嬉しく思った。
素敵な時間を過ごした店を後にした頃には、私はほろ酔い気分で。王さんは優しく私の肩に腕を回し、車まで連れていってくれた。
『ああ...本当に王さんは私の婚約者なんだ...』
私は、ウトウトしながらとてもうれしい気持ちで満たされた。そして、今までのモヤモヤした気持ちの正体が何であったのかを、車の中で王さんの肩によっかきりながら、知ったのである。
『私、王さんのことが好きなんだ❗』
確かに、きっかけは、親同士の婚約話だった。でも、王さんを知れば知るほど、素敵な人で...
『王さんも、私と同じ気持ちなのかな⁉』
そんなことばかりが、まるでシャボン玉の様に次から次から浮かんでは消えて行く。
呑気な私は、そのまま幸せな夢の中へと落ちていった。
コンコンと軽やかに扉をノックしながら、スタッフのリーダーなる女性が私に微笑む。美人に微笑まれると、人間男女関係なく釣られて笑顔になるものである。
「失礼いたします、木崎様をお連れいたしました」
爽やかな声と同時に扉が開く。私も『清水の舞台から飛び降りる』様な(?)気持ちで身構えた。
扉の向うは、白が基調の応接間となっており、そこに王さんがかけていた。王さんは、私を見るなり、ニコリっと笑った。
「やあ、タマちゃん。綺麗だよ。」
...。
その言葉に私は、耳まで火照るくらい顔を赤らめてしまった。
「あ、あの。ずっとここに?」
私は、何故か少しモジモジしながら王さんにたずねた。
「まあね。でも本社内にいると、結局何かしらの仕事があるもんでね。お陰て 、これからの時間を邪魔されずにすむよ。」
少し皮肉をこめながらも、笑顔で王さんは話す。改めて、王さんが日本の経済界の中心の一人であることを実感する。
そんな事を考えている私の事をまるでお見通しと言わんばかりに、王さんは私の近くまでやって来た。
「さあ、姫の準備は出来た。お腹も空いたことだし、これから食事に行こう。」
今の状況を受け入れるだけで精一杯な私を、王さんは優しく微笑みながら、スマートにエスコートしてくれた。再びエレベーターに乗り、地下の駐車場までそのまま降りると、すでに黒塗りの高級車が用意されていた。そして、二人で後部座席に乗り込み、車は優雅に走り出した。
数時間前まで田舎にいた私達は、超VIPなフランス料理店の個室で食前酒で乾杯していた。この店は、常にTVや雑誌で話題になっており、予約3ヶ月待ち必死っと言われている名店だ。
「タマちゃん、苦手なものとかない?」
王さんは、常に優しく私に気を使ってくれる。いや、これが本当の紳士というものなのだろう。始こそ緊張していた私も、そんな王さんに少しずつ気を緩めていった。
王さんがオーダーした、呪文の様な料理が次々運ばれてくるたびに舌包みをううつ私。それを見て王さんが笑い、私もお酒が少し入っていた事もあって、楽しい時間を過ごすことができた。時には、お腹が痛くなるくらいにお互い笑って...こんなに誰かと一緒になって、笑ったことって、何年ぶりなんだろう...こんなに口に入るものが『美味しい』とおもったことは、大人になってから有っただろうか?
王さんとそんな楽しい時間を分けあえる今を、私は心からの嬉しく思った。
素敵な時間を過ごした店を後にした頃には、私はほろ酔い気分で。王さんは優しく私の肩に腕を回し、車まで連れていってくれた。
『ああ...本当に王さんは私の婚約者なんだ...』
私は、ウトウトしながらとてもうれしい気持ちで満たされた。そして、今までのモヤモヤした気持ちの正体が何であったのかを、車の中で王さんの肩によっかきりながら、知ったのである。
『私、王さんのことが好きなんだ❗』
確かに、きっかけは、親同士の婚約話だった。でも、王さんを知れば知るほど、素敵な人で...
『王さんも、私と同じ気持ちなのかな⁉』
そんなことばかりが、まるでシャボン玉の様に次から次から浮かんでは消えて行く。
呑気な私は、そのまま幸せな夢の中へと落ちていった。
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