蜜色の瞳のシェヘラ

よしき

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魔の森・マジェスマル

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  ファントリア帝国の東の果てに、魔の森・マジェスマルがある。
  そこには、伝説の魔女『黒い魔女シュバルツ ヘクセ』が住むヒースの丘があると言われる。
  その強大な魔女の力を手に入れようと、古来より皇帝の兵や近隣の王侯貴族達は、魔の森・マジェスマルへと入っていったが、誰一人『黒い魔女シュバルツ ヘクセ』に会うことはなく、皆森の中での記憶を失くしてしまうのだと言う。
  そのため、人々は魔の森・マジェスマルを恐れ敬い、今では誰もこの森に近づく事は無かった。

  そのマジェスマルの森のすぐ近くにある小さな村に、シェヘラと言う一人の娘が住んでいた。年の頃は17歳ぐらいだろう。白い肌に黒く長い髪を一つに結び、蜜色の瞳は、まるで猫の瞳を思わせる。
  シェヘラは薬師で。彼女が作った薬はよく効いたので、村人達にはとても重宝されていた。
  
  そんな春のある日の事。
  シェヘラはマジェスマルの森の入り口までやってきていた。お目当ては、マジェスマルの森の近くに沢山生えている薬草である。
「今日は止血草ヘモスタゼグラス降圧の草ボックグラスが沢山取れたわ。」
  シェヘラは、一息つけながら籠一杯に取れた薬草を見る。
  「さて、もうそろそろ昼になるから帰るとしましょう。」
  満足そうにそう言うと、彼女は、ヨイショと籠を持ち上げた。
  春のマジェスマルの森の周辺は、こう言った貴重な薬の原料となる薬草が多く自生する。
  ファントリアの首都『ブリリアント・シュロス』の近郊では、今日取った2つの薬草はほとんど見られないくらい貴重な品である。
  村から版刻くらいで来れるマジェスマルの森は、中にさえ入らなければ、とても恵多きところなのである。なので、シェヘラは、よく薬草を取りにくるのだ。
  彼女が足を前に出そうとしたその時。マジェスマルの森から何が聞こえた。
  シェヘラは、ゆっくりと体の向きを森に向ける。
「なにかしら・・・何かいる!?」
  マジェスマルの森には、誰も近づくことはない。それに、獣達は自ら人に近く事はない。つまり、『森から何かの気配を感じる』事は、有ってはならない事なのだ。
  しかし、確かにシェヘラには何かの存在を感じとれたのだ。シェヘラは密色の瞳を凝らした。
  数分後、それは現実のものとなって姿を表した。
  気配の主は、銀色の髪と、紫色の瞳をした青年であった。
   青年はふらふらと森の中から出てくると、力尽きた様にその場に倒れこんだ。
  シェヘラは、ゆっくりと青年の方へと歩み寄る。
  青年は、左肩に傷を負っているのだろう。服はすでに乾いた血で汚れている。
  そして、そんな青年を足元に見ながら、シェヘラは声をかけた。
「どうして森から出て来た?!お前は誰!?」
  シェヘラは、森から出て来た青年に無表情に声をかけた。
  「私は、アレックス・・・黒い魔女シュバルツ ヘクサ に逢いに来た…」
  青年・アレックスは、息も絶え絶えにそう言うと、そのまま意識を手放したのだ。
  
  
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