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お姉様、願い出る。
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「なんだか疲れている様子ね、リビア嬢。」
「そんなことはありませんわ、王女殿下。お久しぶりにお会い出来て嬉しく思っております。」
「私もよ。ごめんなさいね、バタバタしてて。」
お互いに血色の悪い顔でお茶を飲む。
私は唯一、心が休まるクリフト教授のゼミにあのジュリアン・ギャラガーが通い始めてから、彼に癒しの場を奪われてしまって心労がどっと溜まってしまった。
そして王女殿下は、正妃様の事故死のことで精神的にご負担をかかえていらっしゃる。
「でも不幸中の幸いだわ。
正妃様がお亡くなりになって私の母が正妃になったけれど…
私がもし男に生まれていたら私も王太子候補にされるところだったんだもの。
王女は政治的に知らない国に嫁がないといけなけれど、それでも兄弟で王位を争い、勝っても一生国の為に自由なく国政をさせられるなんて私にはとても耐えられないわ。」
憂鬱そうに紅茶を飲む王女殿下。
「そうですわね。
ですが、王女殿下が嫁がれる際は私もご一緒させてください。」
「え、でも......私は嬉しいけれど……
リビア嬢だって結婚しないといけないでしょう?」
「私は結婚は遅れても大丈夫です。
それに私、実は出来ることなら結婚なんてしたくないのです。」
「まあ......」
私の言葉に衝撃を受けている王女殿下。
そうよね、普通の女性なら適齢期になれば結婚したいと思うもの。そもそも結婚しないなんて選択肢も概念も貴族の女性にはないから。
でも前の人生で一度結婚している私にとって結婚になんの期待も未練もない。
もしも世間の目も気にしなくてもいいなら絶対に結婚なんてしたくない。
「私は恋は結婚してからするものだとお母様に教えられたけれど、
でもリビアはもう違うでしょう?」
「え......」
「私の代わりにっていうのもおこがましいけれど、家に囚われずリビアには私の代わりに幸せな恋愛をして欲しいわ。
元婚約者の方と色々あったから恋愛が嫌になる気持ちも分かるけれど、世の中を見渡せばリビア嬢に見合った素敵な殿方との出逢いがあるかもしれないでしょう?」
「では、王女殿下が嫁がれた後にその先で私の旦那様を探してみますわ。」
「まあ、リビアったら。」
前の人生で王女殿下が嫁がれた後のことを私は知らない。
王女殿下が嫁がれる方が素敵な方だといいのだけれど、私が殿下に着いていくからには何があっても必ず王女殿下をお守りしたい。
だって、私をあの家から引きずり出してくれようとしている王女殿下の恩に報いたい。
でもその為には、私自身がもっと強くなる必要があるわ。
「そういえば今度、久しぶりにお茶会を開くのだけれどリビア嬢がルイスお兄様とダンスしたあの舞踏会で着ていたドレスがあったでしょう?あれはどこのドレスなの?」
「あれでしたらべリーヌのお店のドレスですわ。」
「私にも紹介して下さらない?あのデザイン、私も着てみたくて。」
「勿論ですわ。」
作戦通りね。
べリーヌの店の上品かつ社交界では地味だけど気品のあるドレスは、こういった喪にふくすの時期には打ってつけだもの。
***
それから第三王子殿下のところへ遊びに行きたいという王女殿下のお言葉で、第三王子殿下の宮殿へと向かうことになった。
「そういえば、リビアは私の宮殿以外に行くのは初めてよね。」
「はい。城の奥がこんなにも広いだなんて知りませんでした。」
「ほんと、無駄に広くて嫌になるわよ。」
王女殿下、今日は疲労からか本心がよく漏れてらっしゃるわね。
「あ、リビア見て。騎士団の皆様よ。」
「え、あっ、王女殿下お待ちくださいっ」
急に小走りになる王女殿下を追いかける。
「目の保養よ。」
そう言われる王女殿下の視線の先には、訓練をする騎士達の姿がある。
筋肉隆々が殿下の好みなのね。
「あら、第二王子殿下もいらっしゃいますわね。」
「え、まぁほんとね。」
騎士達と同じ服装で訓練されるのね。
「そういえば、リビアよく分かったわね。お兄様はあまり社交界に出られない方なのに。」
「え......ああ、えっと、殿下はとてもお顔立ちがよろしいですから......一度見たら忘れませんわ。」
オホホホと笑って誤魔化す。
本当は前の人生で、二十代の頃はそれなりにお顔を拝見したことがあるからなのだけど。
「なんだか笑い方があやしいわよ。」
「そ、そんなことないですわ、ホホホ……」
「分かった!リビア貴方、お兄様に一目惚れしていたのね!」
「え、ああ、はい。一目惚れまではいかないかもしれませんが」
完全な王女殿下の勘違いだけど、こうなったら話を合わせた方がいいわよね。
「それなら呼んであげるわ。」
「え、お待ちくださいっ」
王女殿下が第二王子殿下にお手を振られれば、元々第二王子殿下もこちらに気付いておられたのか、すぐにこちらに歩いてこられる。
「殿下っ、そこまでして頂かなくてもっ」
「いいじゃない、挨拶するくらい。」
くらいではないのですっ!
「ソフィア、こんなところで何をしているんだ。」
「お兄様に差し入れですわ。」
そう言って王女殿下は第三王子に持っていくはずだったお菓子のカゴをしれっとした顔で第二王子殿下に手渡す。
「それと、私がお願いして侍女になってもらう予定のリビア・フェルディナントですわ。」
「第二王子殿下にご挨拶申し上げます。」
「君のことは知っている。フェルディナント家に初めて生まれた火属性だそうだな。」
「お兄様ったら、いつも人を属性で覚えるのは悪いくせですわ。」
「いいえ、いいんです。本当のことですから。」
「私はただ、火属性ならソフィアの警備要員にもなりうると思っただけだ。」
……!
「もう......ですからお兄様っ」
「い、いえ王女殿下!わたくしも思っておりました、私も自分の属性を活用して王女殿下をお守りできるようになりたいと。
それに今まで目を背けてきた自分の属性と向き合い強くなりたいですわ。」
王女殿下も、自分自身も守れるように強くなりたい。
もう前の人生のように惨めな思いはしたくないわ。
そうよ。
私はとても強い武器を持っているじゃない。
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