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お姉様、狙いは第三王子。

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仮に私が婚約者を連れてきたとして、お父様が簡単に許してくれるとすれば、それは王族だと私は思っている。



この王国には三人の王子と一人の姫がいる。

第一王子は王位継承第一位の正統派。几帳面な性格で物腰穏やかだけれど、俗世なことは苦手な上に婚約者が既にいる。

第二王子に婚約者はいないけれど、騎士団に所属していて王都にはほぼいないから接点が作れない。

そして、ターゲットの第三王子。私と同い年だけれど病弱で、母親である 故第二妃は第三王子を産んですぐにお亡くなりになられ、第一王子、第二王子の母である正妃から目の敵にされ隠れるように避暑地にずっと身を置いていらした。



けれど第三王子はこの度、王都にお戻りになることになる。


そして前の人生で第三王子は、お戻りになってすぐの舞踏会で初めてダンスに誘われた令嬢に、コロッと落ちて直ぐに婚約した。
第三王子にとって目の上のタンコブである正妃様はなんとも第三王子に都合よく、今から一ヶ月後に事故でお亡くなりになった。


その後、王族の兄弟同士は仲が良く、兄弟同士が次期国王は第一王子で良しとしていた為、第三王子は私が知っているうちは穏やかに城でお過ごしになっていた。



社交界の噂では、俗世に疎い第三王子は舞踏会で誘ってもらった令嬢にすぐに恋をした所謂チョロい男だと言われていた。

噂通りのチョロい人物なら良し。ただほんとにその令嬢がタイプであったのなら仕方ない。諦めるわ。


でも試してみるのも私にすればローリスク。



第三王子に気に入られれば万々歳よ。





***



舞踏会当日。



「お姉様、本当にそのドレスで行かれるのですか?」

迎えの馬車で一緒になったエリーゼに最初に言われた言葉がそれだった。



「ええ。ラインが綺麗に出ているでしょう?」

ベージュで柄もフリルもないドレス。だけど、1年後に頭角を現すことになるベニーヌのお店のドレスよ。


今はフリルを沢山にあしらったドレスが主流だけれど、もうすぐ流行りが変わるの。


エリーゼは妖精を思い浮かべるようなフワフワなドレスが好きだから、私の光沢のあるタフタの生地のドレスは嫌いでしょうね。


貴方と差をつけるためにもこのドレスを私はいち早く着ることにしたの。




それはそうと、エリーゼはこの騒動の中堂々と舞踏会に行くのね。てっきりまだ引きこもるのかと思っていたわ。肝が据わってるものね。あれくらいじゃへこたれないわね。


でもエリーゼ、舞踏会の出席者達はまだあの映像を鮮明に覚えておいでよ?
   
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