2 / 3
2
しおりを挟むそれは、生誕祭の宴での出来事だった。
「小公爵様、私と踊っていただけますか?」
麗しい一人の令嬢がカルディ小公爵の前に出て、可憐な声でダンスを申し込んだのだ。
「シュリー侯爵令嬢が小公爵様にダンスの申し込みを……!?」
「どういうことだ!?」
「た、大変なことになるぞ!」
シュリー侯爵令嬢は侯爵家の一人娘で花よ蝶よと侯爵家で大事に育てられたこの帝国で一番の社交界の華だ。
煌めく絹のような銀髪をサラサラとなびかせ、帝国一と謳われる美貌に誰もが見惚れる彼女は、皇家に嫁ぐのではと噂もあった彼女が小公爵にダンスを申し込む……つまり、好意を伝えたということはつまりどういうことなのか。
その場にいた貴族たちは大きく混乱していた。
ダンスを申し込まれた側のカルディも一体これはどういう状況なのか理解出来ずに一瞬躊躇ったが我に返り、一先ず目の前の令嬢に恥をかかせるわけにはいかないとその手をとった。
するとシュリーはカルディに微笑みを向け、ダンスホールへと誘った。
ダンスが始まり、
皆が若き二人の男女の事の次第を緊迫した面持ちで見守った。
「何故、私のような者をダンスに誘われたのですか?」
カルディはシュリーにしか聞こえない声で問いかけたが、シュリーはいたずらに微笑んだ。
「そんな恥ずかしいことを私に言わせるのですか?」
「いえ、」
「そのままの意味と受け取っていただいて結構ですわ。」
そう言って優雅に舞う妖精のようなシュリーにカルディは、これは夢なのだろうかと今起きている現実を疑ってしまった。
貴族令息の誰しもが一度は彼女のパートナーの座を夢見た。
実は小公爵であるカルディもその内の一人だった。
だが、憧れはあくまで憧れ。
伴侶の寿命を奪ってしまう、呪いともいえるものを背負った自分では到底シュリーに見合わないと憧れたその時からシュリーのパートナーの座を望んではいなかった。
だがこの日、いつものように令嬢たちから一線を置かれ、そしていつものようにダンスの時間を暇に過ごす予定だったというのに。
この蝶は一何を思って自分のところへやって来たのだとカルディは内心戸惑いながらシュリーをエスコートしたのだった。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる