【完結】ポンコツですが結婚して差しあげましょう。〜王太子殿下の農作体験記〜

雑煮

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米作りは7ヶ月かかるのです

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三ヶ月後。




「王太子殿下は一体どちらへ?」

「さあ、最近昼間はよく城から出ておられておいでで。」

「密かになにかされているのだろうか。」



城では王太子がたまに姿をくらますことが噂になっていた。



王から秘密裏に命を受けて動いているのではないか。と、貴族達は考えていたが真実はかなり異なっていた。




「フゥ......これで稲は全て植わったな。」

「殿下、お疲れ様でございます。」



王太子は郊外で田植えをしていた。




『では畑に稲をお一人で実らせることが出来たなら結婚して差し上げますわ。

平民の苦労を理解してこそ、尊敬に値する一貴族となる。わたくしも幼い頃、稲作りを学び食物を作る苦労を学びました。同じ思想を殿下もお持ちであれば嬉しいですわ。』


あの日、フリーシアのその一言で始まったこの企画。

出来上がった米は、結婚式のパレードで配ろう!っと意気込んで王太子は稲を植えていた。

勿論、激務の中一人で田んぼで稲作りをするのは一つ返事でやろうと思えるものでは無い。

だが、今まで十年間もフレーシアに片思いをしていた王太子、そして家臣達はそれで結婚して貰えるならと王太子と稲作り計画に取り掛かった。

勿論この事が公になると、王族に対して不敬ではないかとフレーシアに批判が集まるといけないのであくまで極秘だ。




「王太子殿下、お労しや」

「フレーシア侯爵令嬢も些かお高くおとまりすぎでは。」

「それを陛下も殿下も許されたのだ。致し方ない。」

「だが、未来の国王が妃に尻に敷かれるというのも......」

「殿下も日々成長されているではないか。最近は侯爵令嬢に口で負かされていることも......まぁ負かされていらっしゃるが昔ほどではないではないか。」


家臣達が毎日こんな会話をしているのを聞こえているのかいないのか、王太子は止まることなく慣れない手作業を進めている。




「待ってろよ、フレーシア!秋には美味い米を食べさせて結婚に同意させてみせるからな!」







一方、フリーシアはというと、


「何故あんな突拍子もないことを言ってしまったのかしら。」

と、物思いに沈んでいた。




王族の求婚に対して、それなら米を作れだなんて......

咄嗟に頭にでてきた我が一族の家訓だけれど、首都で今頃なんて言われてるのか恐ろしくて帰れないわ。



「素直じゃないのは父親譲りかしらね。」


「もうっ笑い事じゃありませんわ、お母様。こんなことなら問答無用で求婚状を渡された方が気が楽でしたのに。」


「陛下はどこまでもお見通しなのよ。」


「まさかお母様達がなにか陛下に進言されたのではないでしょうね。」


「いやだわフリーシア。そんな怖い顔をしないでちょうだい。」



ウフフと微笑む母を見てフレーシアは確信をした。




だが、今王都に帰るのも気が重く、元々母が全快するまでここに留まるつもりだったので、フリーシアが王都に戻るのは夏が終わる頃になりそうだ。



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