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第十三話
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「鍵もなく無人とは……」
「家具もありませんから、建てたばかりの小屋でしょうか。」
本当は私がこの日の為に秘密裏に建てさせた小屋なのだけど、表向きの所有者の名前を偽造しているから後にもバレないようにしているの。
「仕方がないので今日はここに泊まらせていただきましょう。書置きと宿代を置いていけば、後から誰かが入ってきた気配があっても持ち主の気に触らないでしょう。」
「流石ですわ、ユーグ様。」
ピコン。ピコン。
さり気なく呼び方をフランクにすると、照れながらハートを出すユーグ様。
ピュアで人格も申し分無しだわ。
「明るいうちに外で魚を焼きましょう。」
火をおこすのも、魚を捌くことも手馴れているユーグ様。聞けば、旅をするのが趣味で野宿も慣れているのだとか。
それにしても野宿する旅って、どれだけ辺境に行かれていたんでしょう。
「焼きたてなので美味しいですわね。」
使用人に囲まれずに、山奥で生きる知恵に溢れる料理上手な殿方と二人きりというのも悪くないわね。
*ユーグside*
正直、貴族令嬢とは屋敷で手厚く世話され、高価な宝石とドレスで着飾り日焼けをおそれて外では日傘を使用人にさしてもらっているイメージしかなく、一生私とは価値観の合わない人種だと思っていた。
だが、今私の目の前にいるクロエ・バダンテールという侯爵令嬢はズボンを履いて馬に跨り、日に焼けるのを気にも止めずに一日中馬に乗っていた。
(太陽を気にしていなかったのは光の妖精たちに紫外線をカットさせていたから)
更に、山奥で幸い小屋があったといっても本当に家具も何もない小屋で風呂にも入れず寝るためにベッドもない状況で初めての経験だと楽しそうにされている様子がとてつもなく健気だ。
(何があっても精霊に頼ればいいので気楽なだけ)
(お風呂と歯磨きは水と風の精霊がいればどうにかなる)
(ベッドを置いていないのも作戦の内)
「そろそろ寝ましょうか。朝早く出発したいですし。」
せめて、ベッドだけも用意して差し上げたい。
この方を硬い板の上に一晩寝させることは私のプライドが許せなかった。
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