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しおりを挟む「ど、な、なっ……!」
首筋を吸われていたような気がするし、抱きしめられていた気もする。
私、男……しかも悪魔にカラダを……!
「舐めただけだ。そんな顔を赤くされる覚えはない。
それに身体もだいぶん回復しただろう。」
「ぁ……」
言われてみればそうだわ。
聖力を奪われて、余命幾ばくなかった身体がいつの間にか不思議なことに回復している。
「聖力不足を魔力でカバーしたというの……?
それにしてはあまりにも魔力が順応しすぎているわ。」
「もっと禍々しいものだと思っていたのか?魔も聖も元をたどれば同じ神から派生した神の末裔だ。
順応して当たり前だろう。」
そんな話は聞いたことが……
いえ、そうではばいわ。私たちの世代までその情報が受け継がれなかったということよ。
でなければ、今起きていることに理由がつかないみの。
「とりあえずはこの教会を根城にするしかないか……。
お前の話振りだと俺以外の悪魔達はもうこの地を去って久しいということだろう?」
「え、はい。悪魔はこの地にはもう存在しない伝説上のものですから。魔物も辺境に少数しかいません。」
「なるほどな。」
「……貴方は、これかどうなさるおつもりなですか?」
「俺か?そうだなぁ……魔界には戻れないし、守るべき仲間もこの地にいない。
いっそ、弱っているこの地を支配して帝国を気づくのもいいかもしれないな。」
つまらなさそうに笑ってそう言う麗しい悪魔の横顔にセリアは胸を締め付けられた。
この人も、今孤独なのね。
「そういうお前は何故ひとりでこんなところにいるんだ。まさか聖女サマが迫害にでもあったのか?」
「……まあ、そのようなものですわ。」
偽りの聖女とされ、この地に追いやられてしまった私は実質の死刑を言い渡されたも同然。
出会ったのがたとえ悪魔でも、久しぶりに人と会話が出来て嬉しいわ。
「ますますこの世も末だな。人間はいつの世も自ら滅びに道を歩んでやがる。」
「やはり、人間はお嫌いですか?」
「聖女は別だ。上質な魂を持つ美味そうな人間だからな。」
……美味しそう、か。
この方からしたら、私は食料なのかしら。
でもきっと、獣に雑に食べられるよりはマシかもしれない。
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