エンドロールに贈る言葉

月岡夜宵

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彼と初めての夜

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 レオンの借りている部屋。大きな寝台の上に僕は寝かされている。押し倒した彼は、現在、楽しげに僕の衣服を脱がせていた。

「自分でそのくらいやるよ」
「いいや。駄目だ。俺がする」
「なんで??」
「それは――ユーフェとの夜を楽しみたいからな」
「脱がせるのも、その一環なの?」
「ああ」

 まるで不思議な回答をするレオン。人の服を脱がせても、どこが楽しいのかちっとも分からない。僕がお子様だからか? レオンを脱がせれば、僕にもその楽しみとやらは理解出来るだろうか?

「ねぇ、レオン」
「なんだ?」
「僕もあなたを脱がせてもいい?」
「ふっ、その状態でどうやって?」
「え……あれっ? なんで? 動け……ない??」

 何故か僕は拘束されていた。上着を脱がされる時に、両手をばんざいした格好で。手首をなにかで留められているが……よく見ればそれはシャツだった。僕のシャツ、それが使われている。

「…………どうして僕、捕縛されてるの?」
「万が一逃げ出さないように、かな?」
「疑問に疑問で返された……。っていうか、別に逃げないよ」
「じゃあ……アレだ」
「あれ?」
「俺の性癖」
「ぶはっ!」

 強烈なワードが出てきて、僕は思わず噴出した。レオン程「性癖」なんて言葉が似合わない男もいないだろう。真面目一辺倒だった彼。最近はいくらか砕けてきたのか、おかしなことを言って僕をからかう。その変化に希望を見出したが……

「性癖って……レオン、そんなのあったの?」
「あるかもしれん。今、ゾクゾクしてる。動けないユーフェを、どうしてやろうかと」

 ぞわり。背中が逆立つような、興奮。生半可な誘いなんて吹き飛びそうな、直接的な表現。それと、少しの畏怖。僕は彼によってどう料理されてしまうのだろうか?

「ひゅい!?」

 ちゅっと耳たぶを吸われて、その後で耳の上の方を甘噛みされた。素っ頓狂な声が自分の喉から飛び出して恥ずかしい。

「ふふ、可愛いな?」
「からかわないでよ、レオン!!」
「からかってない。弄んだだけだ」
「弄ぶ!? もっと悪いじゃないか!!」
「じゃあなぐさみにした?」
「結局、同じじゃんか!!」

 なんだろう。こういうたわいも無い会話にさえドキドキする。僕は浮かれていた。
 レオンは深呼吸して、僕と目線を合わせる。そして彼は言った。

「じゃあ、――シようか?」

 壮絶な、色気を滲ませて。


「やめっ、レオン――やめてぇっ!!」
「やめない」
「い、意地悪! レオンのばか」
「馬鹿でも意地悪でもいい。今は――悪魔にだってなりたい」

 今の僕はまな板の鯉だった。逃げ場を失い、彼から与えられるそれを受用するしかない存在。

「たすけっひぃ、たすけてぇ、レオン、もう、だめっ、ああ!!」
「悪魔に助けを求めるのか?」
「ふっふー、ふー、」

 僕は発情しきった犬猫のような声をあげる。体の末端まで桃色の快感に染められてしまっていた。僕は――僕の秘めたる場所にレオンの男らしい指を埋め込まれた状態なのだった。ぐちょぐちょという水音。先に垂らされたローションの影響で中はドロドロで痛くは無い。それでも僕は悲鳴をあげる。快楽によって。

 感じすぎて、おかしくなりそう。

 涙をこぼしながら、僕はレオンを見る。上体を少しあげて振り返れば、レオンのにやっという笑みが見えた。僕は瞬間的に恐怖した。なんだか知らないけど、ものすごく楽しげだ。

「もっと、やるか?」

 こんな、こんな、拷問みたいなの、耐えられるわけない……!!

 僕はもう一度情けを乞うた。

「レオン……許し、て。もう……ダメなのぉ。おかしくなっちゃう!!」

 何度イキ狂ったか分からない。それでもレオンの手は止まない。中を乱暴な手つきでかき回しては、ピンポイントで良い場所を突き上げる。前立腺を抉られて、また声が漏れた。

「ひぐぅっ!!」

 舌をだらしなく垂らして、涎もこぼして、はしたない姿を晒す僕。レオンに冷められたら嫌だから、そんな姿を見られないように枕で隠していたのだが、さっきの動作で台無しになる。
 目を細めてレオンが言う。

「良さそうだな、ユーフェ」
「い、いいからぁ、もう、もう……あぁあああっ!!」

 何度目か分からない射精をする。もう透明な蜜みたいなのしか出ないのに、相変わらず射精感は募る。それが僕を苦しめることを、レオンは絶対分かっていてやっている。こんなの……はぅ、ダメなのにぃ……!!

「やだぁ、やだぁああ、も、苦しっ、……いやあッ!!」
「ああ、ユーフェ。そう嫌がらないでくれ。俺はユーフェを愛したいんだ」
「愛す……なんて、こんなの……、はっ、一方的だ、よ」

 折り曲げた指の節の部分を噛む。耐えるためにそれをやっていたら、目敏くみつけられた。レオンの顔が近づいて、ゼロ距離になり、唇を奪われる。ぬるぬるとした舌で弄ばれ、あらぬ所に熱が溜まる。股間が疼いて、ひくひくとお尻の穴が物欲しげになる。横からのしかかられるみたいな格好で、レオンは僕の秘部を暴く。

「ちゅっ、はぁ、んん……はぁ……」
「れお、ン……!」
「綺麗だ……ユーフェ」

 こんな状態で綺麗なんて……!
 嬉し恥ずかしという気分を味わう。

「好き……だ、ン、……ユーフェ」

 好きなんて言葉で、陥落する僕。すっかり僕の体はレオンに降伏している。

「しゅ……きぃい……、レオン、だいすき……」

 気持ちを確かめ合うような接触に、僕はすっかり自分がイイ・・ようにされていることを忘れていた。

「あっ……」

 レオンが頭を離す。絡んでいた銀糸が切れた。レオンもそれを目で追いかけているようだった。彼の顔が生真面目なものに変わる。

「そろそろいいか?」

 きゅんきゅんする胸の内。高まる期待。やっと、僕が待ちに待った刺激が――

「うん」


 ぼろん、と飛び出した彼の大物。僕のなよっとした物とは比較にならないそれを見て、それでも僕は彼を望んだ。

「いくぞ、……――」
「あ――あああああッ!!」

 彼の逸物が、僕の中に潜り込んでくる。その大きさを今になって実感した。熱く脈打ち、太く逞しい杭。その大きさに僕のアナルは圧倒されていた。中が、蠢く。生き物を体の中に埋め込まれた錯覚を覚えた程だ。
 
 彼とやっと一つになれた。その感動がひしひしと胸に響く。前世では叶わなかった恋。今、想いどころか体を繋げている。それが僕に大きな喜びをもたらす。
 好きな人とひとつになる。体から心が満たされゆく感覚に、僕は酔いしれた。

「ユーフェの涙はまるで慈雨だな」
「え?」
「俺の中に幾つもの感情をもたらしてくれる。涙まで美しいなんて、ユーフェは罪だな」

 彼の着飾った言葉に僕はふふっと笑う。さすが子爵様。上品なたとえに僕は気を良くした。
 中に入っている彼自身を慈しむように包み込む。

「最高に綺麗だよ。君は俺の――」

 耳元に囁かれた言葉で、僕はさらなる歓喜を覚えた。たまらず、彼の背中を引き寄せる。丈夫で広い背中に触れると彼がとても頼もしいと思える。

「ありがとう、レオン。僕をあなたの――にしてくれて」

 この夜の記憶は人生で最良のものになるだろう。一生抱えて生くだろう。今日と言う日に、そして彼の存在に、僕は深く深く感謝するのだった。
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