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第1部 勤労令嬢、愛を知る - 第1章 勤労令嬢と侯爵様
第7話 クェンティンの冒険
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「『クェンティンの冒険』……?」
「初めてですかな?」
「はい」
「それはよかった。『クェンティンの冒険』は様々な版が出ておりますが、わしはこの版が一番のおすすめでございます」
「版が違うと、内容も違うんですか?」
「もちろん。挿絵も違いますし、ストーリーが大幅に改変されておる場合もあります。古くから言い伝えられている昔話ですからな」
「そうなんですね」
「最初に読まれる『クェンティンの冒険』がこの版とは! お嬢様は運がいい」
「はあ」
「読まれますか?」
「はい」
ジリアンが頷くと、オリヴィアが書見台の前に椅子を置いてくれた。クッションで高さを調節してくれる。
「ありがとうございます」
「はい。ゆっくりお読みくださいね」
* * *
北の大地、雪深い山奥で生まれた少年・クェンティン。
彼の出生には秘密があった──。
* * *
そんな書き出しで始まる、冒険譚だった。
「そろそろ、晩餐に行きましょうか?」
ジリアンはロイド氏に声をかけられるまで、夢中になって読み耽っていた。アフタヌーンティーの時間を通り過ぎて、晩餐の時間になってしまったらしい。
「はい」
「その本は、お持ちいただいて構いませんよ」
「本当ですか?」
「はい。ここの本は、全てお嬢様のものですからな」
老人の笑顔に、ジリアンは曖昧に微笑むことしかできなかった。
「では、お借りします」
ジリアンのものだと言われても、そんな実感は一つもなかったからだ。
「気に入りましたか?」
食堂へ向かいながら、ロイド氏がジリアンの手元にある本を覗き込んだ。
「はい」
「懐かしいですね」
「懐かしい?」
「子供の頃に、よく読みましたから」
「子供の頃に?」
「はい。この物語は、長く子供たちに愛され続けているんです」
「そう、なんですね」
ジリアンは恥ずかしくなって顔を伏せた。そんなことも知らなかったのだ。
「ここの図書室には、他にもたくさんの物語がありますよ。『バーバラと魔法の城』とか、『不思議の森の眠り姫』とか」
俯いたジリアンに、ロイド氏が慌てて言い募る。相変わらず、ジリアンは曖昧に笑うだけだった。
晩餐を終えて部屋に戻ったジリアンは、オリヴィアが出ていったことを確認してからこっそりと枕元に本を広げた。
蝋燭をつけると目立ってしまうので、自分の目に暗視魔法をかける。
(早く読んでしまわないと)
続きが気になったというよりも、この物語を知らないことが恥ずかしかったから。
* * *
『なぜ、私は隠れて暮らさなければならないのですか!』
『あなたには、果たさねばならない役割があるからです』
『役割?』
『人はそれを運命と呼ぶ』
『運命? ならば、それを教えてください!』
クェンティンの問いかけに、祠の賢者は何も答えなかった。
『まだ、その時ではない』
それだけを言い残して、祠の賢者は姿を消してしまった──。
* * *
クェンティンに親はいない。森の中の古城で、森の獣たちの手によって育てられた。彼らはクェンティンにさまざまなことを教えた。『賢くなれ』『強くなれ』『立派な大人になれ』と。
しかし、それが『何のためであるのか』を、誰も話してはくれなかったのだ。
世の全てを知っていると言われる祠の賢者を訪ねたが、彼も何も教えてはくれなかった。
(役割があるのに、誰もそれを教えてくれなかったのね。それなのに、強くなれ賢くなれと言われ続けて……辛かったでしょうね)
* * *
燃え上がる炎の中に、祠の賢者が佇んでいた。
『クェンティンよ、旅に出るのだ』
『どこへ?』
『どこかへ』
『なんのために?』
『……運命のために』
そう言って、祠の賢者は消えた。前と同じように──。
* * *
ある日、急に現れた祠の賢者の手によって、クェンティンを育てた森が焼かれた。親代わりだった森の獣たちは姿を消し、暮らすための城すらも失ってしまったクェンティン。結局、彼は旅に出るしかなかった。
(どうして、ちゃんと説明してくれないのかしら。帰る場所がない上に、目的のわからない旅だなんて……)
* * *
たった一人、クェンティンは夜空を見上げた。
『僕にはわからない。僕は、何のために生まれてきたんだ?』
* * *
(……私と一緒だわ)
ジリアンは、自分はクェンティンと同じだと思った。生まれてきた意味を知らず、何のために生きるのか分からない日々。
これまでは『仕事』がそれだったのに。『仕事』を取り上げられてしまったジリアンには、何もない。どれだけ大切に扱われても、その穴を埋めることはできないのだ。
* * *
『クェンティン! 君ならやれる!』
ドラゴンを前に足がすくんでしまったクェンティン。背の後ろから、仲間が声が飛んできた。
『そうだ! 君は強くなった! そのために旅をしてきたんだろう!?』
* * *
(そうか。クェンティンは、ドラゴンを倒すために強くならなきゃいけなかったのね。それが、運命……)
ならば、自分はどうだろうか。
* * *
『クェンティンよ、よくやった』
王様が、跪くクェンティンの肩を叩いた。
『許しておくれ、クェンティン。ドラゴンを出し抜くために、お前を隠さなければならなかった』
王様の瞳に、涙が光る。
『だが、お前は自らの運命から目を背けなかった。長い旅路の果てに自らの役割を悟り、その運命に打ち勝ったのだ!』
『よくやった、我が息子よ』
王様は、そう言ってクェンティンの頭上に至上の王冠を載せたのだった──。
* * *
(すごいわね、クェンティンは……)
誰も彼の役割を教えてくれなかったのに。ただただ、旅をしろ、強くなれ、賢くなれとい言うだけだったのに。
それでも『自分には役割がある』と信じて、やり抜いた。そして最後にはその役割を見事に果たしたのだ。
(私も、こんな風になれるかしら)
ジリアンは本を抱えてベッドに潜り込んだ。はしたないけれど、クェンティンと離れたくなかったのだ。
(クェンティンは、旅をして強くなった)
それだけではない。
(旅をして、自分が強くなったことを、役割を果たせるようになったことを証明したのね)
祠の賢者は、クェンティンに魔法をかけていた。ドラゴンから見えなくする魔法だ。最終章でその魔法が解かれて、クェンティンはドラゴンと対峙することになる。
(証明しなきゃいけなかった。役割を果たせるってことを。そのための旅だったのね)
証明できなければ、祠の賢者は魔法を解くことはなかったはずだ。
(……だから、侯爵様は私に何もさせてくれないんだわ)
ジリアンが役割を果たせると、侯爵は知らないのだ。
(証明しなくちゃ)
きちんと役割を果たせる人間であるということを。
(旅に出なくちゃ)
クェンティンのように。
(証明するのよ、私が役割を果たせるってことを──!)
「初めてですかな?」
「はい」
「それはよかった。『クェンティンの冒険』は様々な版が出ておりますが、わしはこの版が一番のおすすめでございます」
「版が違うと、内容も違うんですか?」
「もちろん。挿絵も違いますし、ストーリーが大幅に改変されておる場合もあります。古くから言い伝えられている昔話ですからな」
「そうなんですね」
「最初に読まれる『クェンティンの冒険』がこの版とは! お嬢様は運がいい」
「はあ」
「読まれますか?」
「はい」
ジリアンが頷くと、オリヴィアが書見台の前に椅子を置いてくれた。クッションで高さを調節してくれる。
「ありがとうございます」
「はい。ゆっくりお読みくださいね」
* * *
北の大地、雪深い山奥で生まれた少年・クェンティン。
彼の出生には秘密があった──。
* * *
そんな書き出しで始まる、冒険譚だった。
「そろそろ、晩餐に行きましょうか?」
ジリアンはロイド氏に声をかけられるまで、夢中になって読み耽っていた。アフタヌーンティーの時間を通り過ぎて、晩餐の時間になってしまったらしい。
「はい」
「その本は、お持ちいただいて構いませんよ」
「本当ですか?」
「はい。ここの本は、全てお嬢様のものですからな」
老人の笑顔に、ジリアンは曖昧に微笑むことしかできなかった。
「では、お借りします」
ジリアンのものだと言われても、そんな実感は一つもなかったからだ。
「気に入りましたか?」
食堂へ向かいながら、ロイド氏がジリアンの手元にある本を覗き込んだ。
「はい」
「懐かしいですね」
「懐かしい?」
「子供の頃に、よく読みましたから」
「子供の頃に?」
「はい。この物語は、長く子供たちに愛され続けているんです」
「そう、なんですね」
ジリアンは恥ずかしくなって顔を伏せた。そんなことも知らなかったのだ。
「ここの図書室には、他にもたくさんの物語がありますよ。『バーバラと魔法の城』とか、『不思議の森の眠り姫』とか」
俯いたジリアンに、ロイド氏が慌てて言い募る。相変わらず、ジリアンは曖昧に笑うだけだった。
晩餐を終えて部屋に戻ったジリアンは、オリヴィアが出ていったことを確認してからこっそりと枕元に本を広げた。
蝋燭をつけると目立ってしまうので、自分の目に暗視魔法をかける。
(早く読んでしまわないと)
続きが気になったというよりも、この物語を知らないことが恥ずかしかったから。
* * *
『なぜ、私は隠れて暮らさなければならないのですか!』
『あなたには、果たさねばならない役割があるからです』
『役割?』
『人はそれを運命と呼ぶ』
『運命? ならば、それを教えてください!』
クェンティンの問いかけに、祠の賢者は何も答えなかった。
『まだ、その時ではない』
それだけを言い残して、祠の賢者は姿を消してしまった──。
* * *
クェンティンに親はいない。森の中の古城で、森の獣たちの手によって育てられた。彼らはクェンティンにさまざまなことを教えた。『賢くなれ』『強くなれ』『立派な大人になれ』と。
しかし、それが『何のためであるのか』を、誰も話してはくれなかったのだ。
世の全てを知っていると言われる祠の賢者を訪ねたが、彼も何も教えてはくれなかった。
(役割があるのに、誰もそれを教えてくれなかったのね。それなのに、強くなれ賢くなれと言われ続けて……辛かったでしょうね)
* * *
燃え上がる炎の中に、祠の賢者が佇んでいた。
『クェンティンよ、旅に出るのだ』
『どこへ?』
『どこかへ』
『なんのために?』
『……運命のために』
そう言って、祠の賢者は消えた。前と同じように──。
* * *
ある日、急に現れた祠の賢者の手によって、クェンティンを育てた森が焼かれた。親代わりだった森の獣たちは姿を消し、暮らすための城すらも失ってしまったクェンティン。結局、彼は旅に出るしかなかった。
(どうして、ちゃんと説明してくれないのかしら。帰る場所がない上に、目的のわからない旅だなんて……)
* * *
たった一人、クェンティンは夜空を見上げた。
『僕にはわからない。僕は、何のために生まれてきたんだ?』
* * *
(……私と一緒だわ)
ジリアンは、自分はクェンティンと同じだと思った。生まれてきた意味を知らず、何のために生きるのか分からない日々。
これまでは『仕事』がそれだったのに。『仕事』を取り上げられてしまったジリアンには、何もない。どれだけ大切に扱われても、その穴を埋めることはできないのだ。
* * *
『クェンティン! 君ならやれる!』
ドラゴンを前に足がすくんでしまったクェンティン。背の後ろから、仲間が声が飛んできた。
『そうだ! 君は強くなった! そのために旅をしてきたんだろう!?』
* * *
(そうか。クェンティンは、ドラゴンを倒すために強くならなきゃいけなかったのね。それが、運命……)
ならば、自分はどうだろうか。
* * *
『クェンティンよ、よくやった』
王様が、跪くクェンティンの肩を叩いた。
『許しておくれ、クェンティン。ドラゴンを出し抜くために、お前を隠さなければならなかった』
王様の瞳に、涙が光る。
『だが、お前は自らの運命から目を背けなかった。長い旅路の果てに自らの役割を悟り、その運命に打ち勝ったのだ!』
『よくやった、我が息子よ』
王様は、そう言ってクェンティンの頭上に至上の王冠を載せたのだった──。
* * *
(すごいわね、クェンティンは……)
誰も彼の役割を教えてくれなかったのに。ただただ、旅をしろ、強くなれ、賢くなれとい言うだけだったのに。
それでも『自分には役割がある』と信じて、やり抜いた。そして最後にはその役割を見事に果たしたのだ。
(私も、こんな風になれるかしら)
ジリアンは本を抱えてベッドに潜り込んだ。はしたないけれど、クェンティンと離れたくなかったのだ。
(クェンティンは、旅をして強くなった)
それだけではない。
(旅をして、自分が強くなったことを、役割を果たせるようになったことを証明したのね)
祠の賢者は、クェンティンに魔法をかけていた。ドラゴンから見えなくする魔法だ。最終章でその魔法が解かれて、クェンティンはドラゴンと対峙することになる。
(証明しなきゃいけなかった。役割を果たせるってことを。そのための旅だったのね)
証明できなければ、祠の賢者は魔法を解くことはなかったはずだ。
(……だから、侯爵様は私に何もさせてくれないんだわ)
ジリアンが役割を果たせると、侯爵は知らないのだ。
(証明しなくちゃ)
きちんと役割を果たせる人間であるということを。
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クェンティンのように。
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