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プロローグ

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 純白のドレス。
 高く結い上げた髪にはヴェールをのせて。
 ジリアンの黒髪に、純白のレースがよく映えている。

「綺麗だよ、ジリアン」

 ジリアンは、養父であるクリフォード・マクリーン侯爵のトフィーのような甘い視線に耐えきれずに下を向いた。

「ジリアン?」

 そんなジリアンの前に、侯爵がひざまずく。

「下を向くな」

 侯爵はそのままジリアンの手をとって、手ずから手袋をはめていく。
 純白の長手袋オペラグローブを。
 かつて下働きをしていた頃では考えられなかったほどの滑らかな白い肌に、侯爵はうっとりと目を細めた。

「とても綺麗だ」

 ジリアンが顔を上げると、甘いままの瞳と目が合った。

「私のかわいいジリアン。こんなに大きくなって……」

 その目尻に、わずかに涙が滲んでいる。

「素敵なレディになったな」

 今日は、拝謁の儀社交界デビューの日。
 17~18歳の良家の令嬢が宮殿に一同に会し、国王夫妻に拝謁する。この儀式をもって、一人前の淑女レディとして認められるのだ。

 今年17歳になったジリアンも、ついにデビューする。

「……私、ちゃんとしたレディになれましたか?」
「もちろんだ」

 微笑む侯爵に、ジリアンの表情も明るくなった。

(こんな日が来るなんて……)

 国一番の英雄であるクリフォード・マクリーン侯爵にエスコートされて、社交界にデビューする日が来るだなんて。
 あの頃のジリアンには、想像もできなかった。

(全てはあの日に始まった)

 ジリアンが8歳の誕生日を迎えたばかりの、あの夏の日。
 令嬢なのに働いてばかりだったジリアンは、一人の客人を迎えた。その出来事が、彼女の運命を大きく変えるとは知らずに──。
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