捨てようとした命の価値

水谷アス

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新しい友だち

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生きるために水や食べ物も必須だが
まずは火を起こそう。
夜になったらきっと真っ暗になるし
暗くなってから慌てて
火を起こすんじゃ遅い。

小学校のとき、生活科の授業で
「火起こし体験」なんてのを
やった事を思い出す。

乾いた木の板と棒、そしてわら。
それがあれば火が起こせる。

木の棒を板の上で
ぐりぐりすることで
火が起きるのが面白くて
おれには珍しく
楽しい授業だったから
やり方もしっかり覚えていた。

火が点いて炎が燃え上がったとき
スゴイ達成感を感じた。
何だかんだ、1時間ぐらいは
かかったかもしれない。
時計がないからわかんないけど。

「やれば出来るじゃん、おれ」
たき火の前でおれはつぶやく。

やれば出来る、かぁ。

おれには何もないって全部諦めて
生きる事を辞めようとしたけど…
やってみようと思った事って
どれぐらいあったんだろうな。

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