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〜Machinery city〜
「目覚め」Part Final
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「今からあなたには、支部長のところに来てもらうわ。そこであなたのことを話してもらう。あなたの疑問も、そこで聞くわ」
両手に手錠をかけた女性はそう言った。
「じゃあ靴を履いて立ってちょうだい。…ゆっくりね」
……
ユウキは言われるまま、靴を履き立ち上がった。
―――っ
立った瞬間、立ち眩みが起こりバランスを崩しそうになる。だが目を強く瞑り、そのまま治まるまで待つと、女性のもとまで歩みを進めた。
「大丈夫?」
「…は……はい……」
この立ち眩みは長く寝ていたからか、血が出すぎたせいかはわからないが、今はそんなことどうでも良かった。
「着いてきて」
言われた通り女性の後ろを着き、隣の部屋に移動してドアを潜ると、広い通路に出た。そこはコンクリート造りの古古しい構造。右側には窓枠があり、外はもう日が落ちかけている。左側は広い部屋がいくつも並んでいる。中は長い机と椅子が何列も並んでいて、まるで教室のようなーーー
「―――あなたでしょ。助けてくれたの」
女性が歩きながら言った。
「彼女のこと、位置情報を送ってくれたおかげで無事救出することができたわ」
女性は振り返り、立ち止まって正面を向く。
「…あなたが一体何者で、どうしてあの場にいたのかは分からないけど、奴を引き付けてくれたおかげで大切な命が失なわれずに済んだ。だからお礼を言うわ。救ってくれてありがとう」
女性は、小さく頭を下げた。
「……は…はい……」
…この時のユウキには女性が言っていることが殆ど頭に入ってきていなかった。ただ不安と、恐怖、一刻も速くもとの場所に帰りたい思いが脳内を駆け巡る。
そこからの会話はなかった。…一歩一歩が重い。ユウキは言葉がつっかえないよう、何度も家に帰れるための説明の思考を繰り返した。
「着いたわ」
女性が立ち止まると、目の前には巨大な両扉があった。
「…支部長にあったら握手だけでも交わしなさい。最悪それだけでもいいわ」
不意に言われた言葉。…いったいどういう意味なのだろうか…
「開けるわよ。いい?」
「…は……はい……」
……
…足が震える。…息が整わない…怖い帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたいっ…!
嫌だ何でこんなことにならなきゃいけないのか。目の奥がジンとなり体が熱くなる。必死に説明を考えるが、ちゃんと喋れるか分からない。
女性は扉横のスキャナーに手を置くと、電子音が鳴り響いた。
ドアノブを捻るとゆっくりと開いていく。
…家に帰るためにはもうこれしか残されていないことにとてつもない恐怖が煽る。
「来て」
泣きそうになったまま中に踏み入ると、広い空間の奥に一人の老人が座っていた。
両手に手錠をかけた女性はそう言った。
「じゃあ靴を履いて立ってちょうだい。…ゆっくりね」
……
ユウキは言われるまま、靴を履き立ち上がった。
―――っ
立った瞬間、立ち眩みが起こりバランスを崩しそうになる。だが目を強く瞑り、そのまま治まるまで待つと、女性のもとまで歩みを進めた。
「大丈夫?」
「…は……はい……」
この立ち眩みは長く寝ていたからか、血が出すぎたせいかはわからないが、今はそんなことどうでも良かった。
「着いてきて」
言われた通り女性の後ろを着き、隣の部屋に移動してドアを潜ると、広い通路に出た。そこはコンクリート造りの古古しい構造。右側には窓枠があり、外はもう日が落ちかけている。左側は広い部屋がいくつも並んでいる。中は長い机と椅子が何列も並んでいて、まるで教室のようなーーー
「―――あなたでしょ。助けてくれたの」
女性が歩きながら言った。
「彼女のこと、位置情報を送ってくれたおかげで無事救出することができたわ」
女性は振り返り、立ち止まって正面を向く。
「…あなたが一体何者で、どうしてあの場にいたのかは分からないけど、奴を引き付けてくれたおかげで大切な命が失なわれずに済んだ。だからお礼を言うわ。救ってくれてありがとう」
女性は、小さく頭を下げた。
「……は…はい……」
…この時のユウキには女性が言っていることが殆ど頭に入ってきていなかった。ただ不安と、恐怖、一刻も速くもとの場所に帰りたい思いが脳内を駆け巡る。
そこからの会話はなかった。…一歩一歩が重い。ユウキは言葉がつっかえないよう、何度も家に帰れるための説明の思考を繰り返した。
「着いたわ」
女性が立ち止まると、目の前には巨大な両扉があった。
「…支部長にあったら握手だけでも交わしなさい。最悪それだけでもいいわ」
不意に言われた言葉。…いったいどういう意味なのだろうか…
「開けるわよ。いい?」
「…は……はい……」
……
…足が震える。…息が整わない…怖い帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたいっ…!
嫌だ何でこんなことにならなきゃいけないのか。目の奥がジンとなり体が熱くなる。必死に説明を考えるが、ちゃんと喋れるか分からない。
女性は扉横のスキャナーに手を置くと、電子音が鳴り響いた。
ドアノブを捻るとゆっくりと開いていく。
…家に帰るためにはもうこれしか残されていないことにとてつもない恐怖が煽る。
「来て」
泣きそうになったまま中に踏み入ると、広い空間の奥に一人の老人が座っていた。
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