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〜Machinery city〜
「転移」Part Final
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「はぁ…はぁ…間に合った…」
ユウキがバス停に着いたのは、バスが来たのとほぼ同じだった。
バス停に向かってる道中、余裕を持って家を出たのだが、いつも通ってる道がある工事で通行止めになっていたので急いで遠回りしたのである。
ユウキは朝からついてないなと思いながらも取り敢えず間に合って良かったと安堵した。
しかも嬉しいことに一人席が空いている。
ユウキは一人席に座りながら思った。
…朝から走る事になるなんて…今日ついてないな…
高校では運動部ではなく、文化部に入っているユウキにとって朝から走らないといけないと言うのは冗談きつい事だった。
けどまぁいい…そのくらい大した事はない…なんたって今日は…短縮の3時間授業なのだから!
どこの高校も同じらしいが何故そうなのかは、聞いたような気がしたが覚えていなかった。
何故午前授業なのかは知らん!知らんでいい!ただ私は早く帰れればそれでいいのだから!それに…
するとバスのアナウンスが流れた。
『次は~~、~~終点です。お降りの際は―――』
…そろそろか…そして墓の場所もそこの近くなんだよな…
ユウキは墓に近づく度にいつも実感する。
両親と妹がこの世にいないことを、何故、自分だけ生き残ってしまったんだろうと。
ユウキの両親と妹は今から6年前、とある事件に巻き込まれて亡くなっていた。
その時の光景をよく思い出す。
当時、ユウキは家族全員で外出していたのだが…
………
ユウキは「助かってよかった」とは微塵も思えなかった。
地獄の日々の繰り返しだった。
家族がいない喪失感が襲い、当時の悲惨な光景がユウキにトラウマを植え付け、学校にも行けず引きこもりがちになり、毎日のように泣いてパニックだって起こした事だってある。
だが、今はもうそんなことは起きなくなった。
それは叔母と叔父の存在があったからだ。
叔母と叔父は、祖母も祖父もいなく、親族や親戚の人にも、音信不通や家庭の事情などが理由で引き取り手が見つからないユウキを快く受け入れてくれた。
余り面識はなかったのに、本当の家族のように優しく接してくれた。
だからあの時、身寄りのない自分を引き取ってくれた叔父達にはとても感謝している。
『終点~駅到着です。お忘れ物の―――』
気付くとバスの運転手の声が聞こえ、次々と乗客が降りていた。
いつの間にか終点に着いていたみたいだ。
よし、降りますか。
ユウキ以外の全員がバスを降り、最後の一人になった所で席を立った。
今日の事を考えると活力が溢れてくる。
ユウキはバスを降り、地下鉄のホームに行くと壁に貼ってある壁紙を見て拳を強く握った。
よしっ!学校終わったら早めに墓参りを済ませて、数量限定&イベント限定のプラモを手に入れるためにお台場に行くぞー!
今日何よりも大事な事。それは、ユウキの大好きなとあるロボアニメの聖地、お台場で発売される限定プラモを買うことだった。
んじゃあ!余裕もって学校行って、イベントの内容でもじっくりーーー
ーーー見よう!…そう、思っていたのだが…
「はぁ…はぁ…」
それからというもの、ユウキは今必死に走っていた。
何故走っているかと言うと、それは今から少し前に遡る。
ユウキはバスから降りた後、いつものように地下鉄に乗って、スマホを恋しく思いながら小説を読んでいたわけなのだが…
ユウキは苦虫を噛み潰したような苦渋の顔をした。
何で何で何で何で何で何で…何でだよー!?
まさか降りる駅手前で地下鉄が急に止まるとは思わなかった。
普段よっぽどの事がない限り止まる事のないあの地下鉄がだ。
何かあったのかと思ったが、車内アナウンスによると…地下鉄の急停車の原因は、大まかに言うとドアの開閉のトラブルだったらしい…それから降りる駅に到着したのは予定遅刻より20分もオーバーしていた。
遅延証明書を貰おうとは思ったが、案の定窓口は混んでいたし、そもそも並ぶ時間が惜しかった。
クッ…!本来なら早めに学校に行って、イベの内容閲覧とソシャゲの期間限定ログボをゲットするはずだったのに…!!
手元にスマホがあれば、遅延証明書を貰ってゆっくり歩けたかもしれない。だがユウキのスマホは、昨日学校に置き忘れてしまい、今は机の中にある。しかもそのログインボーナスを受け取れるのが、あと20分しか残ってない。
ああもうちゃんと整備しとけよ整備班ー!おかげでこっちは遅刻しそうで、SURの確定ガチャチケ取り逃がしそうなんですけど!?
この日のために、毎日毎日欠かさずログインしてきた。無課金勢にとって、ログインしてるだけで最高レアリティの確定ガチャが引けるなんて、こんなチャンス絶対に逃す訳にはいかない。
そんな事を思いながら走っていると何処からか鐘の音が聞こえてきた。
どこの鐘の音かは分かっている。その音にドキッとし、慌てて腕時計を見た。
やばっ!これ予備チャイムじゃん!急がなきゃ!
予備チャイムがなったと言う事、すなわち遅刻・ログインボーナスゲットまでのタイムリミットがすぐそばにまで迫ってきていると言う事だった。
ユウキは真面目に危機感を覚え、「やっぱ昨日戻ればよかった…!!」と後悔しつつ、 体力の限界が近づいていたが一心不乱に走り続けた。
「はぁ…はぁ…着いた…5分前…」
何とか遅刻ギリギリに着くことが出来た。
走った事による多大な疲労で校門前で手を膝に乗せていたが、そんな時間もなかったので一息付くと、すぐ手を離して教室に向けて歩みを進めた。
それから靴を履き替え、今度は憂鬱な気分で廊下を歩いていた。
やっぱ冷静になると、学校めんどくせぇな…
幾ら午前授業だと言っても勉強をしないわけじゃない。
いつも通り授業をするし、部活だってある。
ただ時限が減っただけで基本は何も変わらない。
それにユウキは学校という場所が好きではなかった。
その理由は小学校からの学校生活とユウキの性格にもある。
ユウキがどんな性格か、どんな学校生活を送っているかと言うと…すると、ちょうど前に歩いている同じクラスの人が教室に入って行った。
すると中からは
「~君おはよう」「~おせーぞ、早く昨日の続きやろーぜ」
「~さんおはよう」「お、今日はぜってー負けねぇぞ」
と如何にも高校生活を謳歌しているような声が聞こえてくる。
一方、ユウキはワンテンポ遅れて教室に入ったが、教室に入ってもさっきの人とは違ってなんの反応もなく、何人かがちらと見てくるぐらいである。
…まぁ、見慣れた光景だな。おはようございますっと…
ユウキは別にいつもの事だと思いながら自分の席に座った。そして机の横に荷物を置き、机の中からスマホを取りだして急いでアプリを起動する。
ふぅ…何とか間に合ったー…
時間ギリッギリのところでログインボーナスをゲットして、一息ついたユウキはスマホをポケットにしまうと、ふと後ろの話し声に気付いた。
「そういやさ、さっき『幻影の雨』の確定ガチャ引いたんだけどこれ強いの?」
「あー?お、The・GOMI☆」
「…は!?まじかよ!今までどれだけこのゲームにつぎ込んできたと…!」
「ゲームの優劣は課金額では無いと言うことだよワトソン君」
「ねぇねぇ、もしかしてツッキー達もこのゲームやってんの?」
「ん?そうだけど…あれ、美香もやってんの?」
「そうそう!ユーザー歴3ヶ月ぐらいかなー。因みについ先日このゲームに3000円溶かしました…」
「ぷっ、それは―――」
後ろから、凄い楽しそうな声が聞こえてくる。
青春、謳歌してそうだよなー…てか俺の真後ろで喋るなよ…
ユウキの真後ろでしかも同じゲーム。だんだん「お前と違って俺らは充実している」というのを、見せつけてるんじゃないかと思えてきてしまう。
はぁ…この陰気な性格、何とかしたいな…
ユウキは極度とは言わないが幼い頃から人見知りのコミュ障で、人と話す自信が無ければ、友達の作り方も分からず、小学校でも中学校でも存在感のない影の薄い存在だった。
因みに小中高一と休み時間などは本を読んだり、スマホをいじったりなどこのように過ごしてきている。
いわゆるボッチ。
他の人に話しかけられることもあるが、それは大抵問題の答えの事だったり、宿題の範囲の事だけである。
こんなんじゃダメだと思い、自分を変えたいと思っているが…まぁ人ってそう簡単に変われないんだよね。簡単に変われたら苦労しないんだよね。と自分はヤケクソ気味で内心そう思ってしまっている…と言うよりかは半ば諦めてしまっている。
ついさっきも下で靴を履き替えている時、先程前を歩いてた心の広い人に「おはよう」と挨拶をされたのだが、挨拶をされた瞬間に頭が回らなくなり「あ、お、おはよう…」とぎこちない挨拶をしてしまった。
でもまぁ…自分は今のままでいのかな。無理に変わろうとして周りの人から変な目で見られるのも困るし…別にもう慣れてるから悲しい奴でもいっか。慣れって凄い!
キーンコーンカーンコーン
すると、1時限目の開始のチャイムが鳴った。
…ガチャは後でだな。さてと、今日も一日がんばるぞい!
―――それから全ての授業が終わり、学校という魔の手から開放されたユウキは荷物を置きに行くため、制服から私服に着替えるために一旦家に戻ってきた。
玄関ドアの鍵を開け、いつもの様に「ただいまー」と言って家の中に入ったが、中からはなんの反応もなかった。
…あれ?誰も出ない?
家の中は静寂に包まれており、人の気配は微塵もなかった。
叔母さん、買い物にでも行ってるのかな?
いつもなら学校から帰って来る頃には叔母は家に居るのだが、何せ今日は午前授業だ。
出掛けていても不思議ではない。
それからユウキは自室に行き、荷物を置き、私服に着替え、金銭など持って行く物を準備していた。
人は、準備など何か作業していると無意識に色々なことを思い返す。
朝の事、登校中の事、学校での事、自分の事。その中でも、今ユウキは朝の事を思い返していた。
今思うとあんなに必死になって思い出そうとしてたなんて、恥ずかしくなってくるな…
朝は色々な事があった。
昨日までの記憶が一時的に飛んだり、叔父達やこの家や物を見て会いたかったと思ったり、今日初めて叔父達を見て涙を流した時、一瞬だがもう存在しないはずの人が存在していると思ったり本当に不思議な朝だった。
だが、今はもうそんなことはない。
記憶を思い出したからだ。
だからこそ思う。
その時はあれこれ必死になって思い出そうとしていたが、いざ思い出す事ができ、その時の事を思い返すと羞恥でしかない。
しかもガチャは大爆死だったし…
それから荷物を準備し終えたユウキは「よし」と一呼吸し荷物を持った。
財布にスマホに切符…これで大丈夫かな。よし!レッツおっ台場~♪
ユウキは階段を降り、靴を履き、ドアノブに手を掛けてドアを開けた。
そして一歩前に踏み出そうとした時―――
「君が来るのを向こうで待っているよ」
――――後ろから少年の声がした。
「誰?」
急な声にびくつき、瞬時に後ろを振り返って見てもそこには誰もいなかった。
テレビ?とも思ったがテレビはついておらず、つけた記憶もない。気のせいかとも思ったがそれは否定した。
はっきりと聞こえたからだ。耳元ではっきりと。
ユウキは背筋が凍るほどの怖気を覚え、勢いよくドアを閉め鍵をかけ、飛び出すように家を出た。
取り敢えずこの恐怖を間際らそうと近くのコンビニに駆け込んだのだが、コンビニに入っても恐怖をまぎわらす事は出来ず、逆に違和感を感じた。
中の光景を見てユウキは呆然とした。
誰もいなかったのだ。
このコンビニは普段客があまりいないので不思議ではないが、普段レジ付近にいるはずの店員の姿がなく、人の気配を全く感じさせなかった。
カウンターの奥の部屋にいるのかなと思ったユウキは取り敢えず飲み物と菓子を手に取り、レジで「すみません」と言った。
だが何の反応も返ってこず、ただ静寂に包まれている。
客が来ないからって職務放棄したのか…?
なんとも言えない違和感を感じつつ、商品を元の場所に戻し、ユウキはコンビニを出た。
それからバス停に向かうために道を歩いているのだが、違和感が消えることは無かった。原因は分かっている。
まだ昼前だよ?なのに人も車もいないなんて…いくら何でもおかしくない…?
ユウキが今歩いているのは、今の時間帯なら人もそれなりにいて、数多くの車が走っている大通りだ。
なのに人一人いず、車も一台も走っていない。
まるでこの世界から自分だけ取り残されてしまったかのように何もない。
流石にこれは異常だと思った。
さっきの声といい、言葉で表現出来ない不安と恐怖がユウキを襲った。
流石に墓参りや、お台場に行く所ではなくなり、ユウキは急いで今来た道を引き返し家に帰ることにした。
何なんだよ…!何なんだよ今日は…!
ユウキは無我夢中で走り続けた。右へ曲がり左へ曲がり前へ進み…段々と家に近づいてきている。
この道を曲がったら叔父さん達の家が…!
と安堵を覚え、曲がり角を曲がった。曲がった先に見えるのは叔父達の家…のはずだった。
…え?
曲がった瞬間…ふいに辺りが暗くなった。
誰かに目を隠された訳では無い。
視力が急に消えた訳では無い。
ただユウキの周りの景色が闇に覆われ、何も見えなくなってしまった。
ユウキは焦りながら、スマホのライト機能を使い、周りを照らしてみたが、まるで自分以外の物が全て消滅してしまったかのような闇が続いていた。
なになになに、何が起こった!?
急な出来事に恐怖でパニックになりかける。
どうにかして落ち着きを取り戻そうとしたが、次の瞬間、ユウキに急な目眩が襲い身体中が焼けるような感覚に襲われた。
ユウキは恐怖と焼けるような肌の感覚にたまらなくなり地面に手をついた。ただその場でもがくことしかできない。
ユウキは完全に冷静さを失っていた。息が荒くなり過呼吸になる。
「はぁ…はぁ…」
嫌だ…!嫌だ嫌だ嫌だ…!またあんな思い…したくない…!
過去ののトラウマと呼ぶべき記憶が蘇る。
それからどれくらい経ったのだろうか、恐怖で泣きそうになりながらその場で耐えていると、ふいに痛みが収まり視界も明るくなった。
下を俯きながら、落ち着きを取り戻すのを待つ。
深呼吸をし、ゆっくりと落ち着きを取り戻し、冷静さを取り戻したユウキはゆっくりと目を開けた。
まず目に入ったのは土の地面だった。
……土?
ユウキは環境の急な変化に戸惑いを隠せない。
何故ならユウキがいた場所は本来コンクリートで舗装された道であって、こんな土では無かったのだから。
ユウキは目の色覚が変になってるんじゃないのか?と思い、もう一回大きく深呼吸をし、目を強く瞑った。
そして落ち着きを十分に取り戻したユウキは、恐る恐るゆっくりと顔を上げた。
そこで目に入ってきた光景を見てユウキは愕然とした。
「何処だ…?ここ…」
ユウキがバス停に着いたのは、バスが来たのとほぼ同じだった。
バス停に向かってる道中、余裕を持って家を出たのだが、いつも通ってる道がある工事で通行止めになっていたので急いで遠回りしたのである。
ユウキは朝からついてないなと思いながらも取り敢えず間に合って良かったと安堵した。
しかも嬉しいことに一人席が空いている。
ユウキは一人席に座りながら思った。
…朝から走る事になるなんて…今日ついてないな…
高校では運動部ではなく、文化部に入っているユウキにとって朝から走らないといけないと言うのは冗談きつい事だった。
けどまぁいい…そのくらい大した事はない…なんたって今日は…短縮の3時間授業なのだから!
どこの高校も同じらしいが何故そうなのかは、聞いたような気がしたが覚えていなかった。
何故午前授業なのかは知らん!知らんでいい!ただ私は早く帰れればそれでいいのだから!それに…
するとバスのアナウンスが流れた。
『次は~~、~~終点です。お降りの際は―――』
…そろそろか…そして墓の場所もそこの近くなんだよな…
ユウキは墓に近づく度にいつも実感する。
両親と妹がこの世にいないことを、何故、自分だけ生き残ってしまったんだろうと。
ユウキの両親と妹は今から6年前、とある事件に巻き込まれて亡くなっていた。
その時の光景をよく思い出す。
当時、ユウキは家族全員で外出していたのだが…
………
ユウキは「助かってよかった」とは微塵も思えなかった。
地獄の日々の繰り返しだった。
家族がいない喪失感が襲い、当時の悲惨な光景がユウキにトラウマを植え付け、学校にも行けず引きこもりがちになり、毎日のように泣いてパニックだって起こした事だってある。
だが、今はもうそんなことは起きなくなった。
それは叔母と叔父の存在があったからだ。
叔母と叔父は、祖母も祖父もいなく、親族や親戚の人にも、音信不通や家庭の事情などが理由で引き取り手が見つからないユウキを快く受け入れてくれた。
余り面識はなかったのに、本当の家族のように優しく接してくれた。
だからあの時、身寄りのない自分を引き取ってくれた叔父達にはとても感謝している。
『終点~駅到着です。お忘れ物の―――』
気付くとバスの運転手の声が聞こえ、次々と乗客が降りていた。
いつの間にか終点に着いていたみたいだ。
よし、降りますか。
ユウキ以外の全員がバスを降り、最後の一人になった所で席を立った。
今日の事を考えると活力が溢れてくる。
ユウキはバスを降り、地下鉄のホームに行くと壁に貼ってある壁紙を見て拳を強く握った。
よしっ!学校終わったら早めに墓参りを済ませて、数量限定&イベント限定のプラモを手に入れるためにお台場に行くぞー!
今日何よりも大事な事。それは、ユウキの大好きなとあるロボアニメの聖地、お台場で発売される限定プラモを買うことだった。
んじゃあ!余裕もって学校行って、イベントの内容でもじっくりーーー
ーーー見よう!…そう、思っていたのだが…
「はぁ…はぁ…」
それからというもの、ユウキは今必死に走っていた。
何故走っているかと言うと、それは今から少し前に遡る。
ユウキはバスから降りた後、いつものように地下鉄に乗って、スマホを恋しく思いながら小説を読んでいたわけなのだが…
ユウキは苦虫を噛み潰したような苦渋の顔をした。
何で何で何で何で何で何で…何でだよー!?
まさか降りる駅手前で地下鉄が急に止まるとは思わなかった。
普段よっぽどの事がない限り止まる事のないあの地下鉄がだ。
何かあったのかと思ったが、車内アナウンスによると…地下鉄の急停車の原因は、大まかに言うとドアの開閉のトラブルだったらしい…それから降りる駅に到着したのは予定遅刻より20分もオーバーしていた。
遅延証明書を貰おうとは思ったが、案の定窓口は混んでいたし、そもそも並ぶ時間が惜しかった。
クッ…!本来なら早めに学校に行って、イベの内容閲覧とソシャゲの期間限定ログボをゲットするはずだったのに…!!
手元にスマホがあれば、遅延証明書を貰ってゆっくり歩けたかもしれない。だがユウキのスマホは、昨日学校に置き忘れてしまい、今は机の中にある。しかもそのログインボーナスを受け取れるのが、あと20分しか残ってない。
ああもうちゃんと整備しとけよ整備班ー!おかげでこっちは遅刻しそうで、SURの確定ガチャチケ取り逃がしそうなんですけど!?
この日のために、毎日毎日欠かさずログインしてきた。無課金勢にとって、ログインしてるだけで最高レアリティの確定ガチャが引けるなんて、こんなチャンス絶対に逃す訳にはいかない。
そんな事を思いながら走っていると何処からか鐘の音が聞こえてきた。
どこの鐘の音かは分かっている。その音にドキッとし、慌てて腕時計を見た。
やばっ!これ予備チャイムじゃん!急がなきゃ!
予備チャイムがなったと言う事、すなわち遅刻・ログインボーナスゲットまでのタイムリミットがすぐそばにまで迫ってきていると言う事だった。
ユウキは真面目に危機感を覚え、「やっぱ昨日戻ればよかった…!!」と後悔しつつ、 体力の限界が近づいていたが一心不乱に走り続けた。
「はぁ…はぁ…着いた…5分前…」
何とか遅刻ギリギリに着くことが出来た。
走った事による多大な疲労で校門前で手を膝に乗せていたが、そんな時間もなかったので一息付くと、すぐ手を離して教室に向けて歩みを進めた。
それから靴を履き替え、今度は憂鬱な気分で廊下を歩いていた。
やっぱ冷静になると、学校めんどくせぇな…
幾ら午前授業だと言っても勉強をしないわけじゃない。
いつも通り授業をするし、部活だってある。
ただ時限が減っただけで基本は何も変わらない。
それにユウキは学校という場所が好きではなかった。
その理由は小学校からの学校生活とユウキの性格にもある。
ユウキがどんな性格か、どんな学校生活を送っているかと言うと…すると、ちょうど前に歩いている同じクラスの人が教室に入って行った。
すると中からは
「~君おはよう」「~おせーぞ、早く昨日の続きやろーぜ」
「~さんおはよう」「お、今日はぜってー負けねぇぞ」
と如何にも高校生活を謳歌しているような声が聞こえてくる。
一方、ユウキはワンテンポ遅れて教室に入ったが、教室に入ってもさっきの人とは違ってなんの反応もなく、何人かがちらと見てくるぐらいである。
…まぁ、見慣れた光景だな。おはようございますっと…
ユウキは別にいつもの事だと思いながら自分の席に座った。そして机の横に荷物を置き、机の中からスマホを取りだして急いでアプリを起動する。
ふぅ…何とか間に合ったー…
時間ギリッギリのところでログインボーナスをゲットして、一息ついたユウキはスマホをポケットにしまうと、ふと後ろの話し声に気付いた。
「そういやさ、さっき『幻影の雨』の確定ガチャ引いたんだけどこれ強いの?」
「あー?お、The・GOMI☆」
「…は!?まじかよ!今までどれだけこのゲームにつぎ込んできたと…!」
「ゲームの優劣は課金額では無いと言うことだよワトソン君」
「ねぇねぇ、もしかしてツッキー達もこのゲームやってんの?」
「ん?そうだけど…あれ、美香もやってんの?」
「そうそう!ユーザー歴3ヶ月ぐらいかなー。因みについ先日このゲームに3000円溶かしました…」
「ぷっ、それは―――」
後ろから、凄い楽しそうな声が聞こえてくる。
青春、謳歌してそうだよなー…てか俺の真後ろで喋るなよ…
ユウキの真後ろでしかも同じゲーム。だんだん「お前と違って俺らは充実している」というのを、見せつけてるんじゃないかと思えてきてしまう。
はぁ…この陰気な性格、何とかしたいな…
ユウキは極度とは言わないが幼い頃から人見知りのコミュ障で、人と話す自信が無ければ、友達の作り方も分からず、小学校でも中学校でも存在感のない影の薄い存在だった。
因みに小中高一と休み時間などは本を読んだり、スマホをいじったりなどこのように過ごしてきている。
いわゆるボッチ。
他の人に話しかけられることもあるが、それは大抵問題の答えの事だったり、宿題の範囲の事だけである。
こんなんじゃダメだと思い、自分を変えたいと思っているが…まぁ人ってそう簡単に変われないんだよね。簡単に変われたら苦労しないんだよね。と自分はヤケクソ気味で内心そう思ってしまっている…と言うよりかは半ば諦めてしまっている。
ついさっきも下で靴を履き替えている時、先程前を歩いてた心の広い人に「おはよう」と挨拶をされたのだが、挨拶をされた瞬間に頭が回らなくなり「あ、お、おはよう…」とぎこちない挨拶をしてしまった。
でもまぁ…自分は今のままでいのかな。無理に変わろうとして周りの人から変な目で見られるのも困るし…別にもう慣れてるから悲しい奴でもいっか。慣れって凄い!
キーンコーンカーンコーン
すると、1時限目の開始のチャイムが鳴った。
…ガチャは後でだな。さてと、今日も一日がんばるぞい!
―――それから全ての授業が終わり、学校という魔の手から開放されたユウキは荷物を置きに行くため、制服から私服に着替えるために一旦家に戻ってきた。
玄関ドアの鍵を開け、いつもの様に「ただいまー」と言って家の中に入ったが、中からはなんの反応もなかった。
…あれ?誰も出ない?
家の中は静寂に包まれており、人の気配は微塵もなかった。
叔母さん、買い物にでも行ってるのかな?
いつもなら学校から帰って来る頃には叔母は家に居るのだが、何せ今日は午前授業だ。
出掛けていても不思議ではない。
それからユウキは自室に行き、荷物を置き、私服に着替え、金銭など持って行く物を準備していた。
人は、準備など何か作業していると無意識に色々なことを思い返す。
朝の事、登校中の事、学校での事、自分の事。その中でも、今ユウキは朝の事を思い返していた。
今思うとあんなに必死になって思い出そうとしてたなんて、恥ずかしくなってくるな…
朝は色々な事があった。
昨日までの記憶が一時的に飛んだり、叔父達やこの家や物を見て会いたかったと思ったり、今日初めて叔父達を見て涙を流した時、一瞬だがもう存在しないはずの人が存在していると思ったり本当に不思議な朝だった。
だが、今はもうそんなことはない。
記憶を思い出したからだ。
だからこそ思う。
その時はあれこれ必死になって思い出そうとしていたが、いざ思い出す事ができ、その時の事を思い返すと羞恥でしかない。
しかもガチャは大爆死だったし…
それから荷物を準備し終えたユウキは「よし」と一呼吸し荷物を持った。
財布にスマホに切符…これで大丈夫かな。よし!レッツおっ台場~♪
ユウキは階段を降り、靴を履き、ドアノブに手を掛けてドアを開けた。
そして一歩前に踏み出そうとした時―――
「君が来るのを向こうで待っているよ」
――――後ろから少年の声がした。
「誰?」
急な声にびくつき、瞬時に後ろを振り返って見てもそこには誰もいなかった。
テレビ?とも思ったがテレビはついておらず、つけた記憶もない。気のせいかとも思ったがそれは否定した。
はっきりと聞こえたからだ。耳元ではっきりと。
ユウキは背筋が凍るほどの怖気を覚え、勢いよくドアを閉め鍵をかけ、飛び出すように家を出た。
取り敢えずこの恐怖を間際らそうと近くのコンビニに駆け込んだのだが、コンビニに入っても恐怖をまぎわらす事は出来ず、逆に違和感を感じた。
中の光景を見てユウキは呆然とした。
誰もいなかったのだ。
このコンビニは普段客があまりいないので不思議ではないが、普段レジ付近にいるはずの店員の姿がなく、人の気配を全く感じさせなかった。
カウンターの奥の部屋にいるのかなと思ったユウキは取り敢えず飲み物と菓子を手に取り、レジで「すみません」と言った。
だが何の反応も返ってこず、ただ静寂に包まれている。
客が来ないからって職務放棄したのか…?
なんとも言えない違和感を感じつつ、商品を元の場所に戻し、ユウキはコンビニを出た。
それからバス停に向かうために道を歩いているのだが、違和感が消えることは無かった。原因は分かっている。
まだ昼前だよ?なのに人も車もいないなんて…いくら何でもおかしくない…?
ユウキが今歩いているのは、今の時間帯なら人もそれなりにいて、数多くの車が走っている大通りだ。
なのに人一人いず、車も一台も走っていない。
まるでこの世界から自分だけ取り残されてしまったかのように何もない。
流石にこれは異常だと思った。
さっきの声といい、言葉で表現出来ない不安と恐怖がユウキを襲った。
流石に墓参りや、お台場に行く所ではなくなり、ユウキは急いで今来た道を引き返し家に帰ることにした。
何なんだよ…!何なんだよ今日は…!
ユウキは無我夢中で走り続けた。右へ曲がり左へ曲がり前へ進み…段々と家に近づいてきている。
この道を曲がったら叔父さん達の家が…!
と安堵を覚え、曲がり角を曲がった。曲がった先に見えるのは叔父達の家…のはずだった。
…え?
曲がった瞬間…ふいに辺りが暗くなった。
誰かに目を隠された訳では無い。
視力が急に消えた訳では無い。
ただユウキの周りの景色が闇に覆われ、何も見えなくなってしまった。
ユウキは焦りながら、スマホのライト機能を使い、周りを照らしてみたが、まるで自分以外の物が全て消滅してしまったかのような闇が続いていた。
なになになに、何が起こった!?
急な出来事に恐怖でパニックになりかける。
どうにかして落ち着きを取り戻そうとしたが、次の瞬間、ユウキに急な目眩が襲い身体中が焼けるような感覚に襲われた。
ユウキは恐怖と焼けるような肌の感覚にたまらなくなり地面に手をついた。ただその場でもがくことしかできない。
ユウキは完全に冷静さを失っていた。息が荒くなり過呼吸になる。
「はぁ…はぁ…」
嫌だ…!嫌だ嫌だ嫌だ…!またあんな思い…したくない…!
過去ののトラウマと呼ぶべき記憶が蘇る。
それからどれくらい経ったのだろうか、恐怖で泣きそうになりながらその場で耐えていると、ふいに痛みが収まり視界も明るくなった。
下を俯きながら、落ち着きを取り戻すのを待つ。
深呼吸をし、ゆっくりと落ち着きを取り戻し、冷静さを取り戻したユウキはゆっくりと目を開けた。
まず目に入ったのは土の地面だった。
……土?
ユウキは環境の急な変化に戸惑いを隠せない。
何故ならユウキがいた場所は本来コンクリートで舗装された道であって、こんな土では無かったのだから。
ユウキは目の色覚が変になってるんじゃないのか?と思い、もう一回大きく深呼吸をし、目を強く瞑った。
そして落ち着きを十分に取り戻したユウキは、恐る恐るゆっくりと顔を上げた。
そこで目に入ってきた光景を見てユウキは愕然とした。
「何処だ…?ここ…」
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2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
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ママと中学生の僕
キムラエス
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「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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