Lythrum

赤井 てる

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〜Machinery city〜

第二話「転移」part1

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 ピピピッ ピピピッ ピピピッ

  目覚まし時計の甲高いアラームが、ユウキの深い眠りを無理やり覚醒させる。

 ピピピッ ピピピッ ピピピッ

「うるさい…」 

  ユウキは毛布にくるまった状態で手だけを出し、手探りで目覚まし時計を探した。

  ピピピッ ピピピッ ピピピッ

  目覚まし時計による耳障りなアラーム音が続いている。

  目覚ましどこだよ…

  手探りで数秒の間探した後ーーー

  ピピピッ ピピ…ピ!

  ーーー目覚まし時計をやっとの思いで止めることが出来た。

「はぁー…」

  ユウキは深いため息をつき、手を目覚まし時計に乗せたまましばらくの間力尽きる。

  …今何時?

  ユウキは毛布の中から顔を出し時計を見たが、眠りから覚めたばかりの視界はぼやけと目の悪さから時計の長針と短針に目の焦点が合わない。 
 ユウキは時計を目の近くまで持って来て凝視した。

  6時24分か…起きなきゃ… 

  ユウキは起床するべく、布団から出ようとするが…

  外寒い~起きたくねぇ~… 

  今もそうだが、ひんやりとした空気が顔と片方の手に伝わってきており、ユウキはこの寒さから逃れるべく再び毛布の中に潜り込んだ。

…何か凄い悪い夢見たような気がするんだけど…

目が覚めてからというもの、心臓が高鳴り、緊張状態になっていた。

どんな夢だったけ…

だがすぐに「まぁいいや」と思うと、大きく背伸びをした。

どっちにしろ目は覚めたんだし、覚えてないならそれでいいや。

  それにしても毛布の中はとても心地が良い。特に今日みたいな寒い日にはとても最高だ。
毛布にくるまっていると、布団から良い匂いが鼻に伝わってきた。

  何でだろう…この匂いとても懐かしく感じる…

  その匂いはユウキに安らぎを与え、そして何故か匂いだった。
 そんな匂いに包まれていると、再びユウキに眠気が襲った。
 起きなきゃいけないと思っているのに、眠りの誘惑には逆らえず体を動かすことすらできない。

  ユウキの意識が深い底の中に沈みかけたその時、急に耳元から大音量の音楽が聞こえてきた。 
 その音量の大きさにびっくりしてユウキは慌てて飛び起きた。

  うわっ!何々!どこから―――って…

  飛び上がった衝撃で耳から何かが外れ、その瞬間に音楽が聞こえなくなる。布団のすぐ横に置いてある眼鏡をかけ、視線を下に落とすと、そこにはイヤホンが落ちていた。

ああ…

 ユウキはイヤホンの線を引っ張ると、毛布の中にある枕の下から音楽プレーヤーを取り出した。そして画面を見てみると、アニメの壁紙と一緒に『6時30分 アラーム停止』と表示されている。今の時刻を見ると、同じく6時30分だった。

 やっぱアラームか…心臓止まるかと思った…
  
  ユウキは停止を押し、布団の上に置こうとした。だが置く前に手が止まり、一度じっと音楽プレーヤーを見つめる。それはある事を思ったからだ。
  ユウキは一旦音楽プレーヤーから目を離し、部屋の周りを見渡した。

  何だろう…部屋の中もこれも、何だかとても感じる…別に昨日は…

  何も感じなかったはずだと、ユウキは昨日までの事を思い出そうとした。だが…

  …え?あれ?何で?昨日の事を何も思い出せない…

  それだけではない。
 ユウキは昨日までの記憶を何も思い出せなかった。
 だが、ここが何処なのか、誰の家なのか、自分は誰なのか、今いる場所は自室と言う事、手に持っている音楽プレーヤーが自分の物ということは、はっきりと分かる。
 だが昨日までのエピソード記憶が無い。

  ユウキは最初、寝ぼけてるんじゃないかと思った。
 だが今のアラームで完全に目は覚めて意識もはっきりしている。だがユウキは大して気にしなかった。

  まぁ別に大丈夫か…な?取り敢えず今は…

 そろそろ下に行かないと―――が待ってる。今はド忘れしているだけで、その内思い出すだろうと思ったユウキは、自室を後にした。
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