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最終章 最後に愛は勝つ!? 婚約破談の危機に害虫駆除!

絶倫皇女、処刑内容を決める

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「ほ、本当にこの処刑内容で良いのか……イングリッドよ?」

 私の父・ハンス皇帝陛下は私とグレンで話し合って決めた処刑内容の書類と私達を交互に見つめて戸惑っていたが、私は大きく頷き「はい、お父様。サクリファイス帝国で処刑を行うのはネリス・ウォーラルの一人きりでお願いします。ガブリエル・ウォーラルに関してはサンクチュアリ帝国に護送し、中央広場にて処刑致します」と清々しい笑顔で発言した。

 私の返答を聞いて暫く考え込む皇帝陛下だった。
腕を組みながらひたすら考え込むも、どうしてサンクチュアリ帝国へ罪人一人だけを護送する理由が見出せなくて結局、私に質問を投げかけてきた。

「娘よ、この親子はサクリファイス帝国内で捕らえたというのに何故、サンクチュアリ帝国に輸送する必要があるのかな?」
「そうする事で処刑人が精神的苦痛を受ける事になるからですわ♡」

 私はフフフッ♡とにこやかに即答すると、悪寒を感じたお父様は腕を摩りながら少し青い顔をしていた。

「グ、グレン皇太子……そなたもこの内容で異論はないか?」
「はい、その内容で構いません。こちら側で捕らえてる者達も含め、責任持って処刑致します」

 グレンの真っ直ぐな目を見たお父様は何故だか「ハァ……そうか」と溜息混じりに悲しそうな顔をしていた。

 その溜息の意味が分からず、私とグレンはチラッと顔を見合わせていたのだが、暫くしてお父様の形の良い太眉がハの字に変わり、大きな緑色の目から滝のような涙を流し始めた。

「うおおぉぉぉぉんっ、私の可愛いイングリッドが……イングリッドがサンクチュアリ帝国にお嫁に行ってしまうぅぅぅぅーーーー!!!!」

 いきなりテーブルに額を擦り付け、喚き散らし始めた皇帝陛下を見た臣下達はギョッとした表情で驚く。

 それを見た私は、嫁がせるのを決めたのはそっちじゃん……と呆れた視線で父親を見る事しか出来なかった。

「もう、あなたったら。臣下達が驚いているでしょう? いい大人が泣くんじゃありませんよ」
「うぅ……マルグリッドよ。お前は寂しくないのか!? あの天使のように可愛い我等の愛の結晶が、こんなに早くお嫁に行ってしまうなんて考えられるか!?」

 母・マルグリッドが白いハンカチを手にしながら、お父様の目元を押さえて涙を拭う。

「私はグレン皇太子殿下となら娘との相性が良いと思って後押ししましたけど、最終的に判断したのは貴方ですよ? 自分の決断に責任を持って下さい」
「ぐぅぅ……それを言われると何も言い返せんな」

 私の両親を見たグレンは「インジーの両親はとても仲良いですね♡」とコソッと声をかけてきたが、私は恥ずかしくて堪らなかった。

「そういえば、ルマンド宰相の姿がみえないようですが……」
「彼は殿下に失礼を働いた責任を取って、宰相の地位は剥奪して出家するように命じたのです。勿論、宰相と娘の婚約の話は無くなったから安心してね♡」

「「しゅ……出家?」」

 グレンと私の声が同時に重なった。
宰相の任を解くと言うのは私とお母様で話し合ったから事前に分かっていたが、まさか出家まで命令を出されるとは……さすがお母様、やる事が早い。

「ありがとうございます、お母様♡」
「いいのよ。せっかくの貴方達の結婚式を邪魔されたら嫌じゃない。それに、私の娘の胸をいやらしい目で見るだなんて、欲に塗れた証拠よ! 清く真面目に心を入れ替えるまで、サンクチュアリ帝国に入国するのを禁じたわ♡」

 まさかの入国禁止ーー!?
や、やる事が極端すぎませんか、お母様。報復されない? それって大丈夫なの?

 私の心配そうな顔を見たお母様は綺麗に微笑みながら「全財産返上してもらって、睾丸をギュッて握って脅したから大丈夫よ♡ 心を入れ替えた基準は私が決めるから、特別な理由がない限りはこの国に足を踏み入れる事はないわ♡」と衝撃的な発言をしたのだった。

 それを聞いた男性陣は股間を押さえて縮み上がっていた。

「う……想像するだけで痛いですね」
「そ、そんなに?」
「痛いですよ。暫くの間、動けずに悶絶します。インジーは忘れてるかもしれませんが、貴方にココを蹴られた時は気を失っちゃいましたけどね」
「あ……そうでしたね」

 あちゃー、そうだったわ。
初めて会った頃にグレンの股間を蹴り上げちゃったんだ。

 大丈夫よ、グレン。もう二度と貴方の股間を蹴り上げる事はないから! これからは、よしよしして可愛がってあげなくちゃね♡

 空気を締める為、お父様は一度大きく咳払いをした。

「ゴホン! さて、話はこれくらいで良いだろう。先にガブリエル・ウォーラルをサンクチュアリ帝国に輸送し、後日ネリス・ウォーラルを処刑するという事で決まりだ」
「分かりました。私達はネリス・ウォーラルが処刑されてから、殿下と共にサンクチュアリ帝国へ帰ろうと思います」
「うむ……其方らの結婚式、楽しみに……うっうぅぅぅぅ、イングリッドォォ~~~~!!」

 お父様がまた泣き始めたので「もう……歳のせいか、涙腺が緩いんですから。後は私がどうにかするから、貴方達は行っていいわ」とお母様がフォローしてくれたのだった。

◇◇◇

 時刻は正午になる頃。
サンクチュアリ城はいつも通り、和やかな空気が漂っている。

 とりあえず、やるべき事は済ませた。
そして、隣にいるグレンは私の両親から正式に結婚の承諾を得る事が出来て、とても嬉しそうだった。

「インジーのご両親は仲が良いですね」
「仲良いけど、毎回アレをされると周りに気を遣っちゃうわ……」

 私達は自室に戻りながらそう話していると、グレンはクスッと笑った。

「仲が悪いよりは良いです。それより、インジー。サンクチュアリ帝国に帰った後の害虫達の処刑内容なんですが……本当にこれで良いのですか?」
「えぇ♡ これこそ、彼らにピッタリな処刑方法だと思わない?」

 くるりと振り返りながら私が妖艶に笑うのを見て「サンクチュアリ帝国の印象が悪くならないと良いんですけどね」とグレンは苦笑いする事しか出来なかった。
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