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最終章 最後に愛は勝つ!? 婚約破談の危機に害虫駆除!

絶倫皇女、結婚の許しを得る

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「全く……お前達は皇族なんだぞ。何故、下半身を露出した姿で中庭にいたのだ?」

 一人息子のグレンとその婚約者、イングリッドを自分の私室に呼び付けた。

 ハインツ騎士団長の報告を受けて少し呆れてはいたが、自分の息子と許嫁を見てもそんなに驚く事はなかった。

 敷地内とはいえ、本来なら隠さねばならぬ部位を露出していた事は一人の親として叱るべき案件だろう。
たが、自分の息子が一人の女性を一途に愛している姿は個人的にはとても良い傾向だと思っている。その件に関してはイングリッド姫に感謝しているくらいだ。

 やれやれ……まさかグレンの性欲についていける女人がいるとは。世界中を探せば同じ顔の人間が三人いるというが、イングリッド姫はまさにその類の珍しい女性だったというわけだ。

 目を細めながら姫の隣にいる一人息子のグレンを感慨深げに見つめた。

 この数年の間に様々な苦難があったが、幼い頃に皇后が病死してから、グレンに寂しい思いをさせてしまった事を私は酷く後悔していた。

 皇后以外の女人は考えられぬと再婚の申し出は頑なに拒否した。
たった一人の後継者であるグレンを誰の前に出しても恥ずかしくないように厳しく育てたつもりだったのだが……ここで問題が起きた。

 一人息子の反抗期にぶち当たったのだ。きっと今まで溜めていた不満が爆発したのだろう。

 グレンは目の前にある物を全て破壊し始めたのだ。

 城内の物を壊すくらいだったらまだ良かった。
深刻な問題が起こったのは、性教育後の女性に対しての振る舞い方だった。なんとグレンは城内にいる若い女中に無差別に手を出し始めたのだ。

 この件を重く見た私は一人の親として厳しく処罰し、女中達の安全を考えて息子がなるべく城にいないように騎士団と一緒に戦争へ参加するように促した。

 戦争は危険が伴う。
たった一人の後継者だ。本来であれば大切に守り、政治のノウハウを優先的に教えたい。

 これからどうしたものかと悩んだ時に当時、敵国であったサクリファイス帝国の姫君の噂を聞いた。

 絶世の美女と謳われるイングリッド姫。
各国から喉から手が出るほど欲しいと謳われる姫君であったが、最近素行が悪いと問題になっているのだと小耳に挟んだ。

 なんとイングリッド姫も自分の一人息子と同じように、自ら男の上に跨り、淫らに腰を振っているという噂が密かに出回っていたからとても驚いたのだ。

 それを聞いた私はイングリッド姫に賭けるか迷った。
その反面、そんな貞操観念もない痴女皇女などサンクチュアリ帝国の皇室に加えてなるものか!と思ったのも事実。

 なので、せいぜい側室くらいに据えておけば良いと考えていたのだが……実際に会うと、イングリッド姫はグレンと似た空気を纏っていると感じたのであった。

 結局、変態には変態をぶつけるのが一番だと思い、姫の父親と酒の席で停戦を条件に見合いの話を持ちかけたのだが……これが予想外にも当たりだった。

 陰で暴君皇子や絶倫皇子と言われたグレンがなんと、イングリッド姫に一目惚れしたのだ!

 私は二人の様子をそっと陰で見守った。
二人で話している時のグレンは頬が赤く染まったり、真剣な表情をしていたり、楽しそうな表情したりとコロコロと表情を変えて楽しそうに過ごしていた。

 そんな息子を見たのは何年ぶりだっただろう。
そんな表情をする息子を最後に見たのは7歳の誕生日? いや、もっと昔だったような気もする。

 思えば、自分は国王の責務を果たす為に躍起になり、父親としては全く駄目な人間だったと思う。

 今、昔の事を振り返ってみると、グレンは幼い頃からいつも女中と一緒にいた。
その様子から母のぬくもりを求めているのは一目瞭然なのに当時の私ときたら…………はぁ、やはり歳をとる精神的に弱気になってしまうな。

 私はふぅ……と一息吐いてから顔を上げた。

「……そろそろ、この二人の結婚を認めてやるべきかもしれないな」

 誰にも聞こえないくらいの声でそう呟いたのだった。

◇◇◇

 うぅ……さっきから凄い見つめられてる。もしかして、ものすんごぉ~~く叱られちゃう感じ……?

 先日の混浴事件も厳重注意を受けたばかりの私達だが、その後も毎日仲良くセックス三昧なのは周知の事実だ。

 確かに部屋の外までアンアン、パチュパチュと卑猥な音を響かせてしまっているのは申し訳なく思っている。
私に用がある女中達なんか、ずっと顔を赤らめて露骨に視線を逸らされるし……皆、気を遣わせてゴメンよ。

 上記の行為はまだ大目に見てもらえるが、今回は野外で下半身を露出し、花壇に向かって放尿までしたのだ。皇族とは思えない、品位のかけらもない行為である。

 はぁ……やっぱり怒られちゃうわよね。

 上記の件も含め、皇帝陛下は私達がとても仲が良いから……という事で今まではかなり大目に見てくださっていた。

 だが、今回は外で下半身丸出しのまま二人で抱き合っていたとハインツ騎士団長にチクられた為、皇帝陛下に呼び出されているというわけである。

 あぁーーーー、どう説明したら良いのよ!
一か八か私は神から与えられた使命を背負ってますと公言してみる? いや、駄目だ。怪しまれるだけで良い顔をされる気がしない!

 それに加え、この状況にこの重い空気……。
私は恥ずかしさのあまり逃げ出したくて堪らなくなっているが、隣にいるグレンは突っ立ったまま、悪びれもない表情で皇帝陛下と同じ赤い目をジッと見つめた。

「皇太子よ、お前は反省の色もなしか? ハァ……まぁ、良い。お前を叱るのは後回しだ。イングリッド姫、あの中庭に現れた大樹は一体なんなのだ?」
「あれはエロース教の主神・エロスから賜ったゴムの木でございます」
「しゅ、主神……? ごむの木?」

 皇帝陛下の頭の上に疑問符がいくつも浮かんでいるのが目に見えて分かった。

 うん、良い反応。
グレンの時は私への理解度が半端なかったからスムーズに事が進んだけど、あれが普通の反応よね。なんだか新鮮だわ。

「実は私は主神・エロスから愛された聖人なのです」
「な、なんと……姫は聖人と申すか」
「はい。簡単に言えば、私は神からこの世界の性の乱れを正すように遣わされた者なのです。そして、中庭に突如現れたゴムの木……即ち、避妊具の実がる木なのです」
「ひ、避妊具の実……?」

 皇帝陛下の声がうわずった。
目をパチパチとさせている皇帝陛下に実物をお見せしたい所だが、ゴムの木はこの世に爆誕したばかりで肝心の実がまだっていなかった。

 実際に実をつけた物を見てみないと分からないが、きっとあの薄ピンクのビニールに包まれた避妊具がたくさんあの木にるはずだ。

「残念ながら、実はまだ付けておりません。ですが、実がれば真っ先に皇帝陛下に献上させて頂きます」
「ふむ……分かった。では、ゴムの実がったら是非、見せて頂こう。それと、今回お前達に言いたい事がある」

 な、何よ……いきなり改まって。
まさか、こんな下品な婚約者はいりません、国へ帰れって命令されちゃうの!?

 うわーーーー、やだやだやだやだッ! そんな事を言われたら私、生きていけない!

 もし、そんな命令を下されたのなら、私は宗教法人・絶倫教を設立し、信徒に私を教祖として崇めてもらいながらサンクチュアリ帝国の男達を貪ってハーレムを作り上げてやるわ!

 さぁ、皇帝陛下……かかってきなさいっ!

「お前達の結婚を認めよう」

「………………え?」
「ほ、本当ですか……父上?」

 まさかの発言に私達は驚いてサリヴァント皇帝陛下を見つめると、陛下はコホン……と咳払いして「通常なら卒業してから婚姻を結ぶのが習わしだが、学生結婚を認めようと言ったのだ」と発言してくれたのだった。

「結婚……」
「……していいんですか?」

 私とグレンは瞬きを数回した後、見つめ合った。
そして、すぐに抱き合って皇帝陛下の前にも関わらず、夢中で長めのキスを交わしたのであった。

 私はグレンから一旦離れた後、サリヴァント皇帝陛下に向かって深々とお辞儀をした。

「ありがとうございます、サリヴァント皇帝陛下! この感謝は一生忘れません……!」
「私は構わない。だが、グレンは周りが見えなくなる傾向がある。そこはそなたが隣でフォローしてやってくれ。そして、この国と共に隣で支え合っていくようにな…………後、夜は色々と控えめにな」

 やんわりとグレンとの行為の注意がされたが、恥ずかしさより嬉しさが上回った私であった。

「私からは以上だ。後は姫君の両親から結婚の許しを得なくてはなるまい」
「はい♡ ですが、父上の事です。きっと私達の結婚を許してくれるはずですよ!」

 その時の私達は、サクリファイス帝国で私とグレンに関する、ある記事が世間に出回っている事にまだ気付いてはいなかった。
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