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第六章 貴方と……合体したいッ!

絶倫皇女、グレンにバレる ♡

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 パチュッ、パチュッ、パチュッ、パチュッ……という肌と肌がぶつかり合う音だけがステージ上に鳴り響く。

 それ以外の音は一切しない異様な空気の中、私は悦に浸りながら「あっは、気持ち良い~~~~♡ 貴方の精力、もっと私に頂戴~~~~♡」と激しく腰を落としたり上げたりを繰り返している。

 どうやら、私はランデブーのVIP会員全員の精力を喰らい尽くしたようだ。

 ベッドの上に寝転がり、騎乗位のまま激しく私に腰を打ち付けられている男も例外なく、白目を剥きながらお亡くなりになっている。

 一心不乱に腰を打ち付けていた精力バキュームモード極みに入っている私も、ようやくその事実に気が付いたようだった。

「……貴方のおちんちん、私の中でどんどん小さくなってく。また、唐辛子サイズになったの!? 何度目!? どいつもこいつもとんだ粗チンね!! 皆、俺のはとってもデカいだの、何だの言ってた癖に大した事ないじゃない! 粗チン野郎! ゴミ屑! ファ●クよ、ファァァァァァ●ク!!」

 精力バキュームモード極みに入っている私は中指を突き立てながら死体に向かって唾を吐いたのを見て、私は思わず叫び声をあげた。

(やめろぉぉぉぉぉぉっ! 私はそんな汚い言葉、絶対に吐かないわよっ! 最後の単語なんて隠せてるようで、隠せてないじゃない! もぉぉぉぉぉぉ……やんなっちゃう! 誰か私を止めてよぉぉぉぉぉぉ!)

 本当の私がいくら喚いても魂だけの状態なので誰にも聞こえるはずもなく、ただただ時が過ぎるばかりだった。

 ベッドの周りに積まれた死体は全て会員達だ。
かつては立派だった一物が、唐辛子のようなおちんちんに生まれ変わっている。

 中には仮面をしていない者も含まれている事から、スタッフもこっそり興味本位で並んでいたのだろう。その者達も含め、幸せそうな顔をして死んでいたのだった。

(はぁ……どうすんのよ、これぇぇ……)

 まさに死屍累々という言葉が相応しかった。これだけの死体が出て生存者が私一人となると、言い逃れするのは難しいだろう。
となると、私は騎士団に捕まり一生監獄の中で生活しなければならない可能性も出てくるという訳だ。

 私は自分の肉体に駆け寄り(もう止めなよ、ね?)と必死に諭し続けていたのだが、鼻で笑われるだけで全く効果はなかった。

 結局、魂だけの状態の私は青い顔をしながら、ベッドの側でずっと自分の性行為を見守る事しか出来なかったのである。

(ちょっとぉぉぉぉ……もう隠蔽出来ないくらいの死体が転がってるじゃない! このままじゃ、本当にグレンの所に帰れないよぉぉ……)

 私は困り果てていた。
確かに発情の果てにセーフティが働いて自分の身体が大爆発しなくて良かったとは思う。

 だけど、こんな下品な私は見たくないし、見られたくない! 色んな男と乱交してる私の姿を見られたら、絶対にグレンは引く決まってるじゃないのぉぉぉぉ!

(あぁ、グレン。私、もう貴方の所に戻れないのかな?
そりゃそうだよね。これだけの死体を出したんだったら、もう犯罪者だもん。でも、最期は貴方の手で葬ってくれるんだったら……それはそれでもいいかもしれない)

 そう思った時だった。

 カツ、カツ、カツ……という聞き慣れた足音が聞こえてきたのだ。

(え…………)

 目の前を通り過ぎていった背の高い金髪の男性。
貴族のような黒い服装に仮面と帽子を被っていたので顔は見えなかったが、私は足音だけで誰なのか分かってしまった。

(ま、まさか……グレン、なの?)

 嘘だ。嘘であって欲しい。
やめて……こんな私は見ないで––––!!

 グレンと思われる男性はベッドの前で立ち止まり、男性器を挿入したままの私を見下ろしていた。

「貴方、だぁれ? 貴方も私に精力をくれるの?」

 精力バキュームモード極みの私はハァハァ……と息を切らしながら変態らしくニンマリと笑うと、グレンの震える声が聞こえてきた。

「イングリッド……私が誰か分からないのか?」

 愛しい人の声を聞いた私は胸が張り裂けそうになった。

(嘘……他人の精液塗れになってる私を見られる事になるなんて!
どうしよう、どうしようっ! 何て言い訳をすればいいのっ!? 今の私は私であって私じゃない! それに精力バキュームモード極み中の私は何を言い出すか分からないっ! どうにかして自分の身体に戻らないと!)

 私は血相を変えてベッドの上にいる自分の肉体に飛び付いたが、自分の肉体に戻ろうと試みるも身体がすり抜けてしまった。

(きゃうっ!)

 身体の痛みは全くないが、心がズキズキと痛む。
心優しくて、私を一番に愛してくれている彼の事だ。こんな私の姿を見たらショックに決まってる!

(あぁ……グレンッ、グレンッ! これには訳があるの! ちゃんとした理由があるの! あぁ、なんで自分の身体なのに元に戻れないのよ! こんな酷い姿っ……見られたくなかったのに! もう駄目。消えて無くなりたい)

 気が付けば、身体もないのにボロボロと涙が溢れていた。
魂だけの私の声なんてグレンに届くはずもなく、彼は私の頬に手を伸ばしている。

「イングリッド……やっぱり、私のインジーだ。あぁ、可哀想に。男達に犯されたショックで私の記憶も飛んでしまっているのですか?」
「…………」

 何も答えない私を見たグレンは着けていた仮面を外し、他人の精液塗れになっている私を拒絶する事もなくギュッと抱きしめてくれた。

 彼の表情は今にも泣きそうな顔をしている。
それに目の下の隈も酷い。そういえば、私と出会う前は酷い不眠症だったって言ってた。

 私は後悔した。
高級娼婦として働いている間、必死で彼は私の事を探してくれていたのだ。

 私はなんて馬鹿な女なんだろう。
ゴムの木の為に色んな男とセックスをしよう!と楽観的に考えていた自分を恥じたのであった。

(あぁ……猫神様の願いを叶える為とはいえ、拉致された事を良い事に自分の欲望のまま動いていたわ。私はなんて愚か者なのかしら)

 グレンに抱き締められている肉体の私はというと、目を潤ませながら「ねぇ……キスして?」とお願いしていた。
対して彼は「喜んで」と優しく微笑みながら目を瞑り、唇をチュッと重ねてくれた。

 柔らかくて薄い唇。それにとてもあったかい。じんわりと身体に熱が広がっていく感覚……それがとても心地良くて堪らない。

 グレンとのキスもなんだか久しぶりだなぁ。
………………ん? あれ、身体が元に戻ってる? さっき、まだ精力が足りないとか言ってませんでしたっけ? 

 私が疑問に思っていると、頭の中でまた色んな声が聞こえてきた。

『イングリッド姫の精力が急激に回復!』
『す、凄いッ! 1000人とセックスしても精力が満たされていなかったのに、この男一人のキスで100万人分の精力を補ったぞ!』
『た、助かりました……これ以上、死人が出たらどうしようかと!』

 頭の中でワァワァと喜び合う声が聞こえてくる。
何はともあれ、先程の精力バキュームモード極みとやらは終了したらしい。私はグレンにキスをされながら、酷く安堵した。

 と、とりあえず助かった……あんな下品な姿、これ以上見られたくないもの。でも、それより今はグレンの事が先決だ。こんなにも心配かけてしまったんだから、彼の心のケアを優先しなくては!

 ん?…………な、何? この固くてゴリゴリしたモノは?

 この位置、この固さ。間違いない、グレンのペニスだ。

 おや、彼の様子がおかしいぞ? 私の唇を離した途端、耳元でハァハァ……という彼の小さく喘ぐような吐息が聞こえてきたのだから。

 グレンはさっき私の事とても心配していたはずよね? どうしてココが固くなってるのかな? それに私、他人のペニスが挿入されたままなんだけど? 他人の精液塗れの私のどこに興奮する要素があるのぉぉ? 

 私の心配を他所にどうやら彼は性的に興奮しているらしい。よく分からないが、とりあえず流れに身を任せてみようか?

 いや、待て。ここは記憶を取り戻した手でいってみよう! 

 愛しい人のキスで記憶を取り戻す……名付けて愛の力は素晴らしい作戦だ! よし、これでいくぞぉぉぉぉぉぉ!

「グ、グレン……ここ、何処……?」
「インジー、正気に戻ったのですか!?」

 グレンが目を見開きながら私の目を見つめてきた。

 ふふふ……掴みは良いわね、掴みは! この調子でいくぞぉぉぉぉっ!

「キャッ! 私ったら、何をして––––!」

 我に返ったような演技をした私は、グレンに抱き付く為に慌てて立ち上ろうとしたが、身体に上手く力が入らず、バランスを崩しそうになった所を抱きとめてくれた。

「インジー、大丈夫ですか!?」
「グ……グレン。私、本当に何をしていたの?」

 よくやった、私! 絶妙なタイミングでバランスを崩したぞ! ここで涙をじんわりと浮かべれば、完璧だ!

「あぁ、可哀想に。心身喪失していたんですね。でも、もう大丈夫です。安心して下さい」
「こ、この死体の山は何? 私、すっごく怖い!」

 我ながら良い演技だわ。
果たしてグレンの反応はいかに––––!?

 戸惑うフリをしている私を見たグレンは瞼にそっとキスを落とし「貴方は気にしなくても大丈夫です。後は私に全てお任せ下さい。それより、早く城に戻って身体を綺麗にしないと……」と私を気遣ってくれたのだった。

「グ、グレン……♡」

 オッケェェェェェェェェェイ!!!!
どうにかこのシビアな状況から脱せそうだぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 もしかして、女優目指せたりしちゃう!? 女優って言ってもAV女優かもしれないけど!!

 ふふふっ♡ でも、これで娼婦の世界はおさらばよ! アデュー♡ ガブリエルにアース、キン、チョウ!

 貴方達は私を拉致監禁して娼婦に仕立て上げた挙句、皇女である私を売り飛ばそうとしたんだもの……これから地獄を見せてあ・げ・る♡
(※彼女は一部、自分の都合の良いように脳内変換を行なっています)

 私はウフフフフッ♡と心の中でほくそ笑んだ。

「キャッ……」
「城に着くまでの間、暫くこれで我慢して下さいね」

 ベッドのシーツに包まれた私は心の中でガッツポーズをし、会場を後にしたのであった。
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