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第六章 貴方と……合体したいッ!

絶倫皇女、セックス恐怖症になる

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「うぅ~~、どうしよう……」

 私は先週から客を取らずに休暇をとっている。
ガブリエル達には嘘をついて性病に罹ったと押し通し、一人で部屋に閉じこもっているのだ。

 まずい……非常にまずい事になった。
まさかこんな事になるなんて……グレンと毎日セックスして精力も満たされてたからすっかり自分の身体のデメリットを忘れてた! うわぁぁ……私の馬鹿馬鹿馬鹿~~~~!!

「はぁ……どうしたら良いのぉぉぉぉ……」

 私は高級娼婦の中でもNo. 1にしか与えられない豪勢な部屋でただ一人、枕に顔を埋めながら唸り声を上げていた。

 先日、ヒューゴとリベリオと念願の3Pを果たしたが、リベリオの精力を吸い取るというチン事件ならぬ、珍事件を引き起こしてしまった私。

 リベリオに強制飲尿をさせたから、なんとか元の息子の大きさに戻ってくれたけど。お客さんで自分の口内に向かって放尿されたい人なんて、少数派しかいないわよねぇぇぇぇ……。

「これからって時に私の体のデメリット部分が露見するだなんてぇぇ……! 私、この業界で生き残れないじゃないのぉぉぉぉ……!」

 思わず頭を抱えてしまった。

 ここに来てまさかの精力不足ならぬグレンロス! どうするかなぁ、これ。ここの受付のアース、キン、チョウから精力を吸い上げる? いやいや、さすがにそれは駄目よね。

 この前、彼等のプレイを覗き見たけど全員股間がポークピッツみたいだったもの!
(※全員普通のサイズ。イングリッドの目がおかしくなっております)

 そんな彼等と私がセックスなんてしたら、精力を吸い上げ過ぎて彼等の大事なブツがカタツムリの目のようになってしまう……どうしたら––––。

「……こうなったらお城に戻る?」

 でも、素直に帰してくれるのかな? ほら、こういうのって難癖つけて帰してくれなかったりするじゃない? 言ってみないと分からないのは確かだけど、ガブリエルが私の事を密かにVIP客に何かを推してたみたいだし……。

 あぁっ、もう! どうして私はいつもこうなのよ! 思い付きでどうにかなると甘い考えでいた私をぶん殴ってやりたい!

「流石にグレンは……こんな所に迎えになんて来てくれないわよね」

 高級娼館と言えど、私と婚約している皇太子がこんな所を出入りする所を見られたら大問題になる。ないとは思うけど、お父様の耳に入れば、グレンに対して婚約破棄を叩きつけるかもしれない。

「うぅ……やだやだやだやだ、それはやだ! ゴムの木を育てる為にこの一週間で五十人とセックスしたけど、これは浮気じゃないもの! 世界平和の為なのっ! 私が愛する人はグレン、この世でただ一人よ!」

 誰か……この絶倫で淫乱、ヤリマン皇女であるイングリッド・マルセイユ・グラン・サクリファイスにどうか救いの手をぉぉぉぉ!

◇◇◇

「はぁ……」

 ヒューゴはスプーンを持ったまま溜息を吐いた。

 今、親友であるアランとグレン、そして同じ医学部のフィリップの四人でミラージュ大学内の食堂でランチを楽しんでいたのだが、かれこれ座ってから十分もの間、ヒューゴはずーーっと悩ましい気に溜息をばかり吐いているのだ。

「はぁぁぁ……」

 リベリオとはあれから別れてしまった。
別れた理由としてはイング嬢とのセックスが脳裏に焼き付いて離れないというのと、自分が愛すべきなのはイングリッド姫=女性だという事に気が付いてしまったのが一番の原因だと思う。

 どうしよう。イングリッド姫はグレンの婚約者だけど、こんなにも好きになっちゃうなんて……! リベリオはイング嬢と姫様は別人だって言ってたけど、僕はイング嬢はイングリッド姫様ご本人だと思うんだよな。

 あぁ……こんな事になるんだったら、イングリッド姫の写真を色んな角度から沢山撮っておけば良かった。姫様の後を着けて常に監視しておけば良かったかなぁ……いや、ストーカーまがいな事をしてバレたらグレンの怒りに触れてしまうし。

「うぅ、どうしようかなぁ……」

 なのでさっきからイング嬢とイングリッド姫様は別人だと暗示をかけるように頭の中でこう繰り返しているのだ。

 イング嬢はイング嬢。イングリッド姫様はイングリッド姫様……イングリッド姫様はイング嬢……イング嬢はイングリッド姫様……イングリッド姫様は……うあぁぁぁぁ、訳分かんなくなってきたぁぁぁぁ!!

 この数日間、頭の中で延々とこれを繰り返している。
もう頭がイング嬢とイングリッド姫の事で一杯になっていた。側から見れば、相当危険な奴だと思う。それでも、ヒューゴは暗示をかけられずにはいられなかった。

「おい、どうしたんだ? ヒューゴの奴……」
「さぁな、朝からああなんだよ。でも、大丈夫かと聞きたい奴がもう一人いるぞ」

 チラッとフィリップとアランが横目に見たのは、目が真っ赤に充血しているグレンだった。

「イングリッド……貴方は……今、どこに。イングリッド……イングリッド……イングリッド……」

 ひぇっ……まるで、薬キメた麻薬中毒者じゃないか!

 何故、グレンがこうなっているのかは十中八九、イングリッド姫様がここにいないのが原因だ。突如、姫様は城内から姿を消してしまったらしいが……学内に流れている噂はどれも酷いもので信憑性が全くない。

 姫様は敵国に攫われただの、姫様の美貌に嫉妬した悪役令嬢に監禁されているだの、姫様自ら色んな男に奉仕しに行ってるだの……フン、馬鹿らしい! 皆、国賊として訴えられたらいいのにな!

 あー、やだやだ!と言わんばかりに鼻を鳴らしたフィリップは念の為、隣にいるアランにイングリッド姫の安否ついて聞いておく事にした。

「おい、アラン……姫様は大丈夫なのか?」
「シー、シーシーッ! この話は一応、非公式なんだぞ! 騎士団も血眼になって国中駆け回ってるんだ……あんまりデカい声で言うと騎士団に首を落とされ––––」

 ガンッッッッ!!!!

 アランの声の方がデカいとフィリップが突っ込みを入れる前にグレンが両拳をテーブルに思いっきり叩きつけたせいで、いつも賑わいを見せている食堂内がシン……と静まり返ってしまった。

 グレンは力無く揺らりと立ち上がり「イングリッドは……きっと生きてる。姫は私の全て……私が、必ず……見つ出して、みせ……る……」と発言した後、度重なる疲労と眩暈で、グレンは白目を剥いて後ろ向きにバターーンッと倒れてしまった。

「で、殿下!!」
「殿下、しっかりして下さい! 殿下!」

 あっという間に人集ひとだかりができてしまった。グレンはすぐに担架に乗せられ、医務室へと運び込まれてしまったのだった。
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