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第五章 性癖は芸術であり個性である。

絶倫皇女、友人の性癖に驚愕する

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 これはまずい事になったぞ! まさかこんな所でグレンの親友であるヒューゴと学年一のイケメンと噂されるリベリオが、この店に客として来店するだなんて!

「…………ジュルッ、ハッ!」

 ダメだダメだダメだダメだっ! 涎を垂らしている場合じゃない! ここで身バレする訳にはいかないんだっ!

 私にはコンドームを作ると言う使命を課せられているんだぞ? 神様からコンドームの種を貰ったんだぞ? それを途中で放棄? そんな事できるか!

 あ…………けっ、決して色んな人とセックスがしたいからだとか、そういうけしからん理由じゃないんだからねッ!?

 コ、コホン! うぅ~~、どうしよう。軽くパニックだわ! 私の正体はバレちゃいけない。なんとか姫ではないと誤魔化すしかないわね!

 でも、相手はアホのアランじゃないからなぁ……仕方ない! ここは一つ、芝居を打とうではないか!

 私は「お願いしま~す♡」とアースに向かってウィンクをすると、すぐに「……かしこまりました、イング嬢」という返事が聞こえて来た。

 アースは普段ふざけてはいるが、こういう仕事の場ではとても力になってくれる頼りになる男だ。一言多いのと私を城から攫わなければ、もっと彼の株は上がっていたはずだがな!

 とりあえず、アースが内線で「業務連絡でーす」と係の者と連絡を取り始めたのを聞いて、私は気を引き締め直した。

 先ずはこれで良し! 次はヒューゴを欺かなくてはっ!

 私はキリッとした表情で姿勢を正し、ヒューゴの綺麗なアイスブルーの目をしっかりと見据えた。

「お客様、人違いで御座います。私はイングと申しまして、お客様からもよく姫様に間違えられるのです」
「こ、こんなにそっくりなのに……? 髪色はともかく、声も身長もイングリッド姫そのまんまじゃないですか」

 くっ……同じ学部だから私の事、よく見てるわね。やはりアホのアランとは違う! でも、私はこの世界に避妊具を爆誕させなきゃいけないんだから! それにここで私がイングリッドだと認めたら、風俗皇女と罵られて自国にもグレンの顔にも泥を塗る事になる。

 ……負けられない。いいえ、絶対に負けないんだからっ!

 グッと拳を握ってヒューゴに立ち向かっていった。

「この世には同じ顔の人間が三人いると聞きます。私は姫様ではございません。実はその事で私は非常に困っているのですよ。姫様に似ているせいか、就く仕事全てにおいて女性達の嫌がらせが止まないのです」

 だから、この職に就くしかありませんでした……と私がわざと目を伏せて落ち込んだように見せると、ヒューゴも「う……」とたじたじになっていた。

「それくらいにしとけよ、ヒューゴ。この人の言う通り、姫様に似てる人間なんて一人や二人いるだろ?」

 おお! グッジョブ、リベリオ! もっとヒューゴに言ってやってくれ!

「そうかもしれないけどさ……」

 ヒューゴが気に掛かるといったような視線を私に向けてくる。

 どうやら疑いは晴れていないらしいが、リベリオのお陰でこの場から立ち去るチャンスが出来た。だが、立ち位置的に私がお客様にどういうプレイがしたいのか聞かなければならなかった。

「ところで……お客様はこの店に来るのは初めてですよね? 本日どういったプレイをご希望ですか?」
「あぁ。実は俺達がセックスしてる所を見て欲しいんだ」

 …………はい? リベリオは今、なんて言った? 俺達がセックスしてる所を見て欲しいと言ったのかしら?

 え。も、もしかして……ヒューゴってゲイなのぉぉ? 確かに彼は可愛らしい顔はしてるけども! 本当に本当……?

「つ、つまり……女の子は見てるだけで良いと?」
「あぁ、そうだ」

 真顔で頷くリベリオを見たにも関わらず、顔色を変えずに対応している私をどうか褒めてほしい。本当は「いやーーーーーーん、最高っ!!!!」と叫び倒したい所だったのだから。

 いや、まさか……あの真面目なヒューゴが男性と付き合ってるなんて思いもしなかった! これは凄い秘密を知ってしまったぞ!

「俺は彼と付き合ってるんだけど、彼は見られるのが好きらしくてね♡」
「見られたいだなんて思ってない! 見られたいと思ってるのは、リベリオだろ? 本当にお前は変態だな!」
「えー? この前、大学の空き教室でこっそりセックスしてたら、人が通りかかっただけですぐに達したのは誰だったかなぁ?」
「あ……それは、その」

 もごもごと言いづらそうな表情をしているヒューゴを見たリベリオはクスクスと笑った後、予告もなくヒューゴの唇にキスを落としていた。

 それを見た私は心の中で歓喜した。

 うぉぉぉぉっ! まるで、小説の世界だっ! まさか私の推しの友人が、学年一イケメンと称されるリベリオと付き合っているだなんて……!

 興奮するじゃないのぉぉぉぉぉぉ!! BL最高ぉぉぉぉぉぉっ!! いやっふぅぅぅぅぅぅ!!

 あ、でも……これ以上、彼等に関わったら本当に身バレしちゃうかも。彼等のセックスを見れないのは、とっっっっても残念だけど、ここらで失礼しなきゃね。

「じゃあ、この後は楽しん……」
「イング嬢、この二人の接客たのんますぅ~~」

 はい? なんだと……接客だって?

 私はすかさずアースに振り向いた。何を言い出すんだ!という様な目で睨み付けると、アースは両手を合わせてごめんねのポーズをとった。

訳:今、空いてる嬢がイング嬢、貴方しかおらへんのやーー。けど、あんさんなら大丈夫! どんなプレイでも対応できますやろ!

 白い歯を見せながらアースはニカッと笑ったが、私はすかさずアースを殺意を込めて睨み付けた。

訳:いや、待て待て! 見るだけだったら新人を寄越せば良いだけの話でしょ!? 私はセックスをしたいの! 分かる? セックスがしーーたーーいーーのぉぉぉぉ!!

 それを見たアースは親指を立てながら、こちらにグッジョブのサインを出してきた。

訳:健闘を祈りまっせ、イング嬢!

「は……キン!? チョウ!?」
「イング嬢、こちらの鍵になります♡」
「なります♡」

 アースはキンとチョウを使って私に201と書かれている鍵を渡してきた。

「部屋は2階になりまーす♡ ごゆっくりどーぞー♡」

 アースは受付で笑いながら螺旋階段を指さしたのだが、私に向けてくる目だけは笑ってはいなかった。むしろ馬鹿にしているかのような笑みを浮かべている。

「ほな、お客様♡ 今回はこのイング嬢にプレイをお任せしますので、たっぷりお楽しみ下さいな」

訳:たまには身体を休めて下さいね、このビ●チ。

 こんのぉぉぉぉ……アースゥゥゥゥ! 私を●ッチと罵りやがったな!?
(私の勝手な解釈。でも、大体合ってる)

 私にセックス休暇なんか要らないんじゃ、ボケッ! 覚えてろよ! いつかお前の股間に付いているブツも喰らってやるからなぁぁぁぁ!

 そういう意味を込めてアースを思いっきり睨んだ私は「では、参りましょう♡」とにこやかにヒューゴとリベリオに声をかけ、螺旋階段に足をかけた。
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