絶倫皇女〜この世の女性の敵である男の精を絞り尽くし、世界一と謳われる美貌と豊満な肉体を使って世界平和を目指します!〜

麦星れな

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第二章 政略結婚。身体の相性はやっぱり大事!

絶倫皇女、告白される

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「本当にすまなかった、イングリッド姫!」
「……本当に申し訳ありませんでした」

 私に頭を下げているのはサンクチュアリ帝国の現皇帝陛下と皇太子殿下である。国のトップ1、2に頭を下げられる人間はそうそういないだろう。しかも頭を下げている相手は敵国の皇女、本来なら頭を下げたくないだろうに。

 私は慌てて「私は大丈夫ですから! 頭を上げてくださいませ!」と声をかけても、二人は頑なに頭を上げようとはしなかった。

「いいや、恥ずかしくて頭を上げられない! まさかあのような醜態を晒し、イングリッド姫様まで襲うなど言語道断! こやつはサンクチュアリ帝国の恥晒しだ!」

 皇帝陛下は皇太子がしでかした事を本当に恥じているようだったが、当の本人は所々しか覚えていないのか、二日酔いで青い顔をしているだけで、何が起こったのか断片的にしか分からないといった表情をしている。それに加えて時々、股間が痛むのか顔を顰めて下腹部辺りも無意識に手で抑えていた。

 おいおいおい……18歳にもなって親と一緒に頭を下げてくる奴を初めて見たぞ。

 ははーん、なるほど。グレン・シャルル・ブラッド・サンクチュアリ……貴様もロメオと同類なのか。だったら金●キックしてて正解だったわ。むしろ、最初から蹴り入れようとしてたし。

 ……とはいえ、ずっとこのままの状況は気まずい。さっさと形式だけでも婚約を結んで国に帰ろう。それで成婚するかどうかはまたお父様と決めたら良いだけの話だ。

「私は気にしておりませんから、本当に気にしないで下さい」
「むぅぅ……それだけでは私の気が済まん。なら、これを機に不可侵条約を結ぶのはどうかな?」

 不可侵条約! まさかの嬉しい展開だ! 

 不可侵条約を結ぶなら婚約なんて面倒な事をしなくても良いし、お互いの国同士疲弊してるからこの条約を結んで帰国すれば万々歳だろう。

 よし。そうと決まれば、気が変わらない内に条約を結ばねば……。

「嬉しいです。ではすぐに––––」
「皇帝陛下、お待ち下さい!」

 皇太子殿下の大きな声のせいで話を遮られる事となった。
丁度、私の発言している最中だったものだから皇帝陛下は呆れたように怒りを露わにした。

「なんなんだ、いきなり! 姫の話を遮るとは失礼だぞ!」
「失礼は承知の上です、父上」

 皇太子殿下は頬を少し赤くさせ、唇を恥ずかしそうにギュッと結んだ後、何かの覚悟を決めたのか続けてこう発言したのだ。

「私はイングリッド姫に失礼な事をいたしました。これは私の人生をかけて償わなければいけないと思っております」

 じ、人生をかけて……? 何を言ってるんだこのお坊ちゃんは。これじゃあ、まるで愛の告白ではないか!

「グ、グレン皇太子殿下……?」

 驚いた顔でグレンを見つめていると、彼は私の手を取り、チュッとキスを落とした。そして、私の目の前で片膝を着いたのである。

「本当に失礼な事をして申し訳ありません、イングリッド姫。姫様の寛大なお心遣いに感謝しております。ですが、一度だけ……一度だけ私にチャンスを頂けないでしょうか?」
「チャ、チャンス……ですか?」

 ヤバイ……ドキドキしてきたッ! この展開はもしかして、もしかしたりする⁉︎

「私の事を知って頂く機会を作って頂けませんか?」
「それはつまり……?」
「正式に婚約を結ぶ前にお互いの事を知りたいのです」

 真っ直ぐ私の目を見つめられて、もう私はドキドキが止まらなくなった。

 日本で見た恋愛漫画を思い出す……これが憧れていた恋愛というものなのか! これでもし、皇太子の事が好きになって婚約し、結婚ってなったら夢にまでみた自分の家族を作れる!

 そうなったら…………あ、駄目だ。そうだった。私、モブキャラとの間に子供は作れないんだった。

 ここで私は冷静になって考えた。この世界のモブの精子では妊娠しないように出来てるんだけど、グレン皇太子殿下はどうなんだろう?  皇太子だからきっとモブではない……よね?

 でも、後継者問題の前にまだ最大の問題は私とセックスをしたら相手の精力を吸い上げ、相手は死に至る事だ!

 それなら、私と一緒にならない方が彼は長生き出来る気がするのだ。失礼な事をされたとはいえ、彼が私のせいで死ぬ事になったら……きっと私は後悔するだろう。そう考え出したら到底YESとは返事が出来なかった。

「…………申し訳ありません。お断りします」

 声が少し震えてしまった。昨日の事があるからこの状況でお断りしても文句は言われないだろう。彼の気持ちは有り難いが、これは彼の為でもあるのだ。

「姫様……」

 そんな私を見たグレンは負けじと私の手を更にギュッと握り締めてきた。

「お願いです、イングリッド姫。貴方を初めて見た時、あまりの美しさに恥ずかしくて目を合わせられない、酒の力に頼るような器の小さい男でした。ですが、今は違います! どうか貴方の隣に立つチャンスを私に与えて下さい!」

 彼の目は真剣だった。どうやら、完全に昨日の事を思い出したらしい。

 どうしよう……断れない、かも。

 自分の気持ちに揺らぎが出てきた。こんな体質でなければ、普通に恋愛を楽しめたのになぁ……。

 迷っている私を見てグレンは何か迷った後「貴方の願いを何でも叶えて差し上げます! このグレン、一生貴方だけを愛して生きていきます!」と皇帝陛下の前でそう宣言したのだ。

 私は何故か反射的に「……一回だけなら、良いですよ」と答えていた。

 その返事を聞いたグレンはパァッと赤い目をキラキラと輝かせ「ありがとうございます、イングリッド姫!」とお礼を述べてきたのだった。

 なんて可愛い人なの、この人……。

 ドキン……といつもとは違う心臓の跳ね方に私はこれが恋なのだと自覚した瞬間だった。私は昨日の事はすっかり忘れて「これからよろしくお願いしますね、グレン様」と微笑んでいた。
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