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第二章 政略結婚。身体の相性はやっぱり大事!

絶倫皇女、一目惚れする

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「サンクチュアリ帝国へようこそ。帝国を代表して歓迎するぞ、イングリッド・マルセイユ・グラン・サクリファイス第一皇女よ」
「ありがとうございます、サリヴァント皇帝陛下」

 私はドレスを指先で摘みながら丁寧にお辞儀をすると、ここで初めて城内にいる人達から歓迎の拍手が上がった。

 良かった。表向きは私の事を歓迎してくれているようだ…………ただ一人を除いて。

 拍手をしていない者の名はグレン・シャルル・ブラッド・サンクチュアリ皇太子殿下であった。彼は皇帝陛下の隣で頬杖をつきながら足を組み、視線は私ではなくどこか別の方へ向いていた。

 何あれ? 気取っちゃって……ムカつく男ねぇ。

 私の右足が奴の股間を蹴り上げたくて疼き出した。久しぶりにロメオ以来のムカつく異性に出会ったのだ。ずっとそのままの態度で近付いて来たら、股に付いている二つの玉を蹴り上げてやるから覚悟しておくのよ! 

「……皇太子。お前もイングリッド姫に挨拶を」

 そう促されたグレン皇太子は気怠そうにこちらに視線を合わせた後「宜しく頼む」と一言述べてからまた視線を逸らし、そっぽを向いてしまった。

「…………」

 城内が痛いくらいに静まり返り、国王陛下がゴホンと申し訳なさそうに咳払いをした。

「あぁ、失礼。すまない、姫よ……」

 陛下が私を気遣って何かを言いかけたが、目を見開いたまま皇太子を凝視している姿に何と声をかけたら良いか迷っているようでもあった。

 一方の私は全くショックを受けておらず、皇太子を正面から見て震えていた。

 な、何あのイケメンはっ!? 日本の某事務所以上の逸材っ! こんなイケメンが私の夫となるかもしれないなんて……なんたる幸運っ!

 猫神様、ありがとう!  イングリッド・マルセイユ・グラン・サクリファイスはグレン皇太子殿下と結婚して幸せになります!と心の中で念じると『都合の良い時だけ、崇拝するにゃ!』と聞こえてくる様な気がした。

 皇太子殿下はというと、隣に座る皇帝陛下に何か言われたのか視線を私に向けた後、フンッとそっぽを向いて足を組み替えた。

 私は身体が震えた。蔑むような冷たい視線。切長でルビーのように赤い目に映える黒い髪。日光で少し焼けた白い肌。加えてあの長い脚……最高じゃない! インジー、絶対に貴方のお嫁さんになるっ!

 私は既にグレン・シャルル・ブラッド・サンクチュアリ皇太子殿下の虜になっていた。あの冷たい視線を向けられてから、私の脳内で妄想が加速していく。

 いやーーーーん、正面を向いてくれたーーーー♡ 何あれ!? イケメンって本当に何もしても許されるわよねーー♡

 なんならもっと私を蔑んで虐めてほしいっ! 早く話してみたいっ! 早く、早く私を彼と二人きりに! そしてぇぇぇぇ、メインイベントゥゥゥゥ……! 彼と毎日セックス三昧だぁぁぁぁ!!

「グヘヘヘヘ♡…………ハッ!」

 下品な思考に思わず固まる、私。

 ダメよ、ダメダメ! さすがに皇太子の精気を吸い取って絶命させてしまったら、戦争どころではない。サクリファイス帝国が跡形もなく焼け野原になってしまう! 最新の注意を払いながらセックスを楽しまないと!

 ロメオと猫神様の件で学んだじゃない……と言いたいが、兵士達の件はセックスの快感に夢中になりすぎてたよ。アレは反省。うん、私が悪かった。でもぉ……悪い事をしていた人達が殆どだったし、許して欲しいな⭐︎

 ゴホン!ともう一度、少し大きめの咳払いが聞こえたので、私はすぐに正気に戻った。

「イングリッド姫よ。長旅で疲れたであろう? 今日の所はゆっくりと休まれるといい」
「お気遣いありがとうございます、陛下」

 こうして私はサンクチュアリ帝国に暫く滞在する事となったのである。

◇◇◇

「はぁ……つまんない」

 あれから毎日部屋にいる……というか、出してくれない。人質の気分だったが、食事だけは豪華だった。新鮮な野菜にお肉。特に魚介は海が近いのもあってパエリアやカルパッチョは特にほっぺが落ちそうなくらい絶品だった。

 私はベッドの上に寝転がり、足をパタパタとさせながら退屈そうに欠伸をした。発情はまだきていない。でも、このタイミングで発情がきたらアンリが犠牲になる可能性が大だ。

 そんなアンリは私の側に控えながら窓から外の景色を眺めている。どうやら、敵に狙われていないかどうか警戒しているようだった。

「アンリ、外の状況はどう?」
「目立った動きはないですね。城内では姫様の歓迎パーティーの準備が行われてるようですよ」

 へぇ、パーティーか。ま、これも表向きなんでしょうけど。あぁ……それにしてもやる事がない。部屋から一歩も出れないから愛しの殿下にも会いにいけないだなんてぇ……。

 とりあえず、当面の私の目標は彼と正式に婚約する事である。彼と婚約し、南北間で長年続いている戦争を止める事で平和への大きな一歩を踏み出せるという訳だ。

「……殿下とセックスしたい。彼のアソコの大きさが気になる。でも、彼が死なない様に加減しないとなぁ」

 神よ、改めて問う。何故、私とセックスしたら死ぬような身体の設計にしたのだと。それに加えて、定期的に器エネルギーを発散させないと身体が爆散して死ぬというような残念な身体にしたのだ!

「あ~~~~んっ! これじゃあ、気軽に誰ともセックスできないよぉぉぉぉ~~~~!」

 また姫様の癇癪が始まったとアンリは諦めの溜息を吐いた。
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