絶倫皇女〜この世の女性の敵である男の精を絞り尽くし、世界一と謳われる美貌と豊満な肉体を使って世界平和を目指します!〜

麦星れな

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第二章 政略結婚。身体の相性はやっぱり大事!

絶倫皇女、サンクチュアリ帝国へ向かう

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 南下するにつれ、風が徐々に冷たくなってきた。それもそうだろう。私の故郷は今の季節は夏だが、これから向かう南に位置するサンクチュアリ帝国の季節は冬なのだから。

 暇だなぁ……ドラマや漫画が恋しい。

 今、私は馬車に揺られながらサンクチュアリ帝国へ向かっている最中だ。サクリファイス帝国からサンクチュアリ帝国まで馬車で一ヶ月程かかる。こんな峠道を馬車で一ヶ月も走るだなんて思ってもみなかった。休憩しながら安全運転で向かっているものの4頭の馬もかなり大変な思いをしているに違いない。

「はぁ……なんで顔も知らない人と結婚するんだろう」

 見紛う事なき見事な政略結婚だったなぁ……。私の気持ちなんてそっちのけで勝手に親同士で決めるだなんて。そりゃ、前世で婚約破棄系の物語やざまぁ系のスカッとする小説が流行るわ。

 ふん、いいもん! なんだったら私の身体をふんだんに使って、現皇帝陛下と皇太子殿下の精力を吸い上げて国を乗っ取ってやろうかしら!?

「いいもん……どうせ私は国の為に存在してるんだから」

 私は既に悲劇のヒロインぶって不貞腐れていた。

 いや、実際そうなんだからそうなるのも仕方ない。なんてったってお相手は皇太子自ら戦争の前線に立って指揮を取り、襲いかかってくる敵は全員打首にする赤血の皇太子と言われている殿方なのだ。

 つい一週間前に父親と見合いについて話したのだが、勿論拒否権なんてなく、南北戦争の停戦条件は北のサクリファイス帝国の第一皇女の私と南のサンクチュアリ帝国の皇子との婚約が条件なのだ。

 長年の戦争を止めるチャンスだ!と陛下が後先考えずに愛娘である私を差し出したってわけ。

 ……ったく、本当にムカつく親父よね!? しかも聞いて! よくよく話を聞けば、相手の王様と口約束だったのよ!? 信じらんないわよね!? 普通、考えたら分かるでしょう!? こんな国と国が関わる事なら第三者を交えて文書でやり取りするのが基本ってもんでしょ!? こんなの普通の人でも分かるっていうのに……これじゃあまるで人質よ、人質!!

「やってらんないわよぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!」

 ヒヒィィィンッ!! ガタガタガタガタ……ガンッ!!

「きゃっ……!」

 馬が私の声に驚いて進路が少し逸れ、車輪が大きな小石に乗り上げたようだった。そのせいで馬車が上下に大きく揺れ、私はお尻を強打する事となった。

「い、いったぁぁ……もう行く前から最悪っ!!」
 
 耳につけていた大きな青い宝石がついた大ぶりのピアスがシャランと揺れる。もうすぐサンクチュアリ帝国に到着するので、普段よりも気合を入れて着飾っているのだが、全身が重くて仕方がない。もう、今すぐにでも全裸になりたかった。

「はぁ……座りっぱなしでお尻も痛いし、辛いなぁ」

 シクシクと泣きたい気分である。この馬車も四人乗りではあるが、日本の自動車に比べるとやはり狭いし、揺れが凄くて不快だった。

 今は専属メイドのアンリと二人きりなのでダラダラと文句は言わないが、彼はシャンと背筋を伸ばして涼しい顔をしたまま「イングリッド様、落ち着いて下さい」と諭してきた。

「後、もう少しの辛抱です。この一ヶ月、キツかったのは姫様だけではありません。僕も一緒です。僕なんて水浴びが一番キツかったんですから」

 僕の場合、人の目もありますし……とコソッと耳打ちをされる。

 あぁ、確かにそうだ。アンリは表向き女中として働いているが、本当は男の子なのだ。

「そうね、アンリ。騒いでごめんなさい」
「いえ。ですが、発狂したくなる気持ちも分かります。南の国は今は凍える様に寒い季節ですし」

 確かにそうだ。馬車の外を見れば分かるが既に一面雪景色。寒暖の差が激しすぎて体調を崩しかけたので、何回か休憩を挟んでもらった……というのは言い訳で、本当は道中で発情しかけていたのだ。

 アンリは私の体質を知っている為、コソッと捨て駒(悪党)を用意してくれた。そして、その男から精気を吸い上げ、どうにか無事にサンクチュアリ帝国に辿り着こうとしている。

 はぁぁぁ……アンリが有能すぎてヤバい。彼がいなかったら私はここにはいない。いや、本当にマジで。

「本当にありがとう、アンリ。貴方がいてくれなかったら、きっとサンクチュアリ帝国には辿り着けていないわ」
「勿体ないお言葉です」

 アンリは幼い顔付きで笑ってくれた。

 その笑顔にズギュウゥゥゥゥンッ!!と私は心を撃ち抜かれてしまった。

 はぁぁぁぁぁぁん、アンリ可愛いぃぃぃぃ♡ いつか、絶対に私が貴方の童貞を奪って差し上げますからねぇぇぇぇ♡

 今すぐにでも襲いかかって「アンリちゅわぁぁぁぁん♡」と空を泳いで、チュバッとその白いほっぺたに吸い付きたくなったが、めっちゃ耐えた。本当に自分でもよく頑張ったなと思う。

「……?」

 ゾワッとした寒気を感じたアンリだったがソレが何だったのか知る由もなかった。
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