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第一章 転生。そして、絶倫皇女の噂
絶倫皇女と失禁神様
しおりを挟む『実は……その身体には大きな欠陥があるにぇ』
「お、大きな欠陥……?」
ドクンと心臓が大きく脈打った。
そ、そんな! せっかく新しい人生を……健康的で明るく楽しい人生を送れると思ってたのに!
一瞬、足元が崩れるような感じがしたが、そうなるにはまだ早いと自身を奮い立たせた。まだ、猫神様の口から話を聞いていない。絶望するにはまだ早いのだ。
大丈夫……私は5歳で死ぬと言われていたのよ。それが18歳まで生きる事ができたんだから、癌以上に怖いものなんてないわ!
私はゆっくり深呼吸した後、覚悟を決めた。手に汗が滲むが、勇気を出して恐る恐る猫神様に私の身体の大きな欠陥とやらを聞いてみたのである。
「お、大きな欠陥ってなんですか?」
『その身体は元々、霊長類最強の女が入る予定だったと言ったにゃりね?』
「は、はい……」
どうしよう……身体が震えるっ。続きを聞くのが怖くなってきた! 日本にいるお父さん、お母さん! どうか私に勇気を下さい!
『霊長類最強の女の魂が他の人間に比べてとてつもなく大きいのは最初からわかっていたにゃり。ただ、予想以上に大きかったのは誤算だったにゃりが……実はマンモス級の魂に合わせて器も同じレベルで作ったんにぇ』
「つ、つまりどういう事になるんでしょう……?」
心臓の鼓動がまた早くなった。不安で手の平が汗で滲み初めている。
ま、まさか私……また死んじゃうの?
死に対する恐怖が湧き上がってきた。死ぬのは怖い。前世はあれだけしんどい思いをしたのだから、今世くらい普通に暮らして、恋人を作って、子供を産んで、家族皆で幸せな家庭を築きたい! 贅沢な生活なんて一切望まないから、長生きさせて下さい!
「は、早く……早く教えて下さいっ!」
『…………にぇ』
「き、聞こえないですっ! もっと聞こえる、ボ、ボリュームで、おね、おね……お願いします……!」
どうしよう、上手く喋れない。声まで震え出してきた。涙で視界までぼやけてくる。私の心は不安な気持ちで一杯になってしまった。早く、早く私を安心させる言葉を言って欲しい。
『…………』
そんな私の心の内を察したのか、猫神様は視線を落とし、くるりと私に背を向けた。その姿が前世で医者が私と家族に末期癌だと宣告する雰囲気にあまりにも似ていた為、私は更にパニックになってしまった。
待って。そ、そんなに深刻なの……私の身体? 嘘だぁぁぁぁ! 神様、嘘だって言ってよぉぉぉぉ! もう顔が不細工だの、おデブって思わないからぁぁぁぁ!
勝手にそう解釈した私は気が付けば猫神様に向かって勢いよく土下座をしていた。頭を床に擦り付けるように低くし、縋るように懇願する。
「ね、猫神様っ……どうかご慈悲を!」
『ブフッ……ハッ!』
…………………は? 笑った? 今、コイツ笑ったのか?
しかも最後……ハッ!ていったよな? ハッ!て。
その瞬間、私は猫神様の頭をギリギリと掴みかかっていた。手入れされた長い爪を頭皮に食い込ませ、冷たい目で神様とあろうお方を見下す。
「おいコラ。てめぇ、今笑っただろ?」
『にゃ、にゃんの事にゃりか? 笑ってにゃい……』
猫神様は振り向いた瞬間、全身の毛という毛が刈り取られるような感じた事のない感覚が身体中に走った。
殺気だ……神である自分に殺気を向けられている!
殺気だけで全身の毛という毛をむしられる感覚。こんな殺気を向けてくる生き物は今まで存在しなかった。
(にゃ、にゃんなりか……この赤黒いオーラは⁉︎)
鬼神だ。目の前には美しい鬼神がいた。
おかしい、さっきまで弱々しかった転生人だったはず。魂も青白くて病的に弱々しかったのに、今は赤黒い鬼神のような魂に変質してるなんて。こんなっ……こんなの聞いてにゃいにゃり‼︎
『お、落ち着くんにゃ……話せば分かる!』
気付けば神である自分が尻餅をついていた。このままでは……この娘に殺やられる‼︎
一方、私はゆっくりと距離を詰めて、自分の足を抱え込みながら目の前でしゃがみ込んだ。眼前には猫神様の金色の目がある。その距離、僅か5ミリ。誰かの鼻息がこんなにも近くに感じるのは初めての経験だった。
「は? なぁに、犬養ぶってんですか。神様ならドラちゃんみたいに秘密道具でも出して助けて下さいよ」
『や、やめるにゃり……ワシは神にゃりよ⁉︎』
「神だったら出来んだろ? いや、できるよな?」
私は爪を立てたまま猫神様の頭から顔面にかけて力一杯、バリィ‼︎と引っ掻くと、猫神様の不細工な顔面に綺麗な10本の赤い爪痕が出来上がった。
『にゃ……にゃりぃぃぃぃぃ‼︎‼︎‼︎‼︎』
猫神様の断末魔が上がり、金色の目から涙が溢れ出る寸前––––股から別の涙が漏れ出してきたのだった。
シィィィィ……ジョババババ……。
これは……尿? あぁ、尿だ。どうやら猫神様は私に恐れをなし、失禁してしまったらしい。
「はぁ……もうどうすんのよ、これ」
もう怒りなんてどこかへ飛んでいってしまった。私は目の前で腰を抜かす猫神様を呆れたように見つめる事しか出来なかった。
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