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第四章 戻ってきた日常と甘い日々
第二十九話
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リヒトさんとの仲が進展してから一週間後――。
「まだかな……まだかな……」
私はリヒトさんの部屋でベッドに腰を掛け、枕を抱えながらソワソワしていた。今日は待ちに待ったベスがこの邸宅にやってくる日。この一週間、彼女に会えるのが待ち遠しくて仕方がなかったのだ。
「はぁ~、待ち遠しいなぁ。ベスに会ったらいろんな事を教えてもらわなきゃ!」
ベスは私と同じアストライア人だ。あの事件から一ヶ月以上経ってるし、気が強い彼女も少しは落ち着いているはずだ。
私は両手を上げ、大きく伸びをしてベッドへ倒れ込む。この一週間リヒトさんに毎日、「ベスを私の専属の使用人として働かせて欲しい!」と頼み込んだが、どうお願いしても答えはNOだった。
(まぁ、仕方ないわね。私を間違って刺しちゃったんだもの。リヒトさんは心配するよね……でも、私は諦めないんだから!!)
私はグッと手を握って一人で意気込む。ベスと話す時は必ず誰かと同席するという条件付きで、アストライア連合王国について聞かせてもらうつもりなのだ。主に言葉や文化、ベスの楽しかった思い出話に花を咲かせたいと思っている。外に出られない私は彼女と話せると考えただけでワクワクしていた。
私はサイドテーブルに置かれたピンク色のラッピング袋を微笑みながら見つめる。きっと、ベスは真っ先に私に謝罪してくると思い、仲直りの印として昨日の晩にキッチンを借りてガトーショコラとクッキーを作ったのだ。
(いっぱい悩んだけど結局、チョコレートをふんだんに使ったお菓子にしちゃった! クッキーにはチョコチップを入れて作ったし、喜んでくれると嬉しいなぁ~♡)
黙々とお菓子を頬張るベスを想像しながら「フーン、フフーン♡」と機嫌良く鼻歌を歌い、枕を抱えながら寝返りを打つ。
「早くベスに会いたいなぁ……」
自分でも何回言ったのか分からないが、もし私が犬だとしたら千切れんばかりに尻尾をブンブンと振っているに違いない。
はやる気持ちを抑えきれず、私はベッドから降りて窓から外を眺めてみる。ここからでは中庭しか見えないと頭ではそう分かっているのに、何度でも外の景色を見てしまう。
「それにしても暇だわ。今日はベスが来るまでこの部屋から出ちゃダメって言われてるから、余計にそう思うのかな……」
私は窓枠に頬杖を付きながら溜息を吐く。今朝、リヒトさんに言われた事を思い出していたのだ。
「今日は軍関係者が屋敷に来るから絶対に部屋から出ないように。トイレに行きたくなっても我慢してくれ……か。そう言われたら、トイレに行きたくなるのはどうしてなんだろう?」
朝、ドロテーアが用意してくれたモーニングティーを飲んだから? でも、量はそんなに飲んでないはず……それなのにどうしてなの?
身体がブルッと震える。そんな事を考えてしまったからか本当にトイレに行きたくなってきた。私は立ち止まり、内腿をピッタリとくっ付けたまま俯く。
「…………駄目よ。このままじゃ、またリヒトさんとの約束を破っちゃう」
私はカァァ……と顔が熱くなるのを感じた。
この一週間、リヒトさんに思う存分甘えさせてもらった。特にここ数日は彼と一緒に寝る度にイチャイチャしていたのだ。またお仕置きとなれば、いろんな意味で身体が保たない。
(私ったら、どうしていつもこうなの!? いつもならトイレは近くないはずなのに行きたくなるだなんて!! うあぁぁ~~、リヒトさんの部屋で漏らす事だけはしたくない!!)
私は考えた。ここで漏らすか、トイレに行くかを――。
「…………よし、決めたわ」
私はベッドに枕を置き、部屋の扉をそっと開けて覗き見る。まだ誰も来る気配はない。行くなら今のうちだ!
「こんな時に限ってドロテーアはベルタさんを迎えに本邸へ行ってるし、近くに使用人さんもいない……まぁ、いっか! トイレに行ってすぐに戻るだけだし! この屋敷の作りも覚えたからもう迷わないし! 早くトイレに行って、この部屋に戻って来よう!」
私は神様に願う時のように手を握り、心の中でリヒトさんに謝罪し始めた。
(リヒトさん、ごめんなさい。私は貴方の部屋で漏らしたくないんです。優しい貴方の事だから、きっと笑いながら許してくれるんでしょうけど! 十八才にもなって漏らしてしまったら恥ずかしすぎますし、貴方の顔を一生見れない気がするんです! だから、私はトイレに行きます!)
眉間に皺を寄せながら祈り終えた後、私はこっそり部屋から出た。右を見て、左を見て、もう一度右を見る。
「よし、誰もいないわね……さぁ、行くわよ!」
私はミント色の長いシフォンスカートの裾を踏まないように手で摘み、少し屈みながらトイレに向かって進み始めた。
◇◇◇
「…………はぁ、スッキリ♡」
無事、用を足してトイレから出た。ここは男女兼用のレストルーム。使用人達がちゃんと掃除をしてくれているお陰で目の前の大きな鏡はピカピカに輝いているし、芳香剤の良い香りがほのかに漂っていた。
私は鏡に映る自分を見つめながら、誇らし気にニコニコと笑った。
「前回みたいに迷わなかったし、このまま部屋まで帰れば問題ないわね! よし、リヒトさんの部屋に戻ろうっと!」
ハンカチで手を拭いた後、廊下に出ようとドアノブに手を掛けようとしたが、まだ手を掛けていないのに扉が勝手に開いたので、私は驚いて反射的に顔を上げる。すると、見知らぬ金髪赤目の男性が扉の前に立っていた。
「…………は? アストライア人?」
聞き慣れない声に私は固まってしまった。扉の先にいたのはリヒトさんと同じ軍服を着た少し髪の長い金髪の男性だった。切長の目はルビーのように赤くて、身長はリヒトさんよりも少し高いような気がする。
「あ……」
ドクッ……と心臓が強く脈打った途端、全身から血の気が引いた。金髪の男性も同様に驚いた顔をしていたが、私がアストライア人だと認識すると腰に携帯していたホルスターに手を伸ばそうとしていた。
(に、逃げなきゃ――!)
私は慌てて個室トイレに逃げ込んで鍵を閉めた。蓋を閉めて便座の上に膝を抱えて座り、身体を縮こませる。
(どうしよう! 私、軍に連れていかれちゃうかもしれない! もしそうなったら、リヒトさんに迷惑がかかってしまう! 彼の言う通り、トイレにも行かなければ良かった!)
こんな事になるなら、部屋で漏らす方が百万倍マシだったと心底後悔していると、扉の外から落ち着き払った男性の声が聞こえてきた。
「あー、怯えさせて悪かった。なぁ、なんで君が親友の家にいるのか教えてくれないか?」
「し、親友? リヒトさんの?」
恐る恐る聞く。すると、すぐに返事が返ってきた。
「あぁ、アイツとは腐れ縁なんだ。ったく……リヒトの奴、親友の俺に隠し事してやがったな。これは高い口止め料を貰わないと」
金髪の男性が扉の外でブツブツと小言を言い始めたのを聞いて、私はフゥ……と息を吐く。
(これはお仕置き確定ね。この前、ベルタさんに腰を診てもらったから、もう少し状態が良くなってからにしてもらおう……ってそんな事を考えてる場合じゃないわ。まだ助かったってわけではないもの)
そんな事を考えていると強めに三回ノックしてきたので、肩がビクッと跳ねた。
「とりあえず、ここから出てきてくれないか?」
「い……痛くしないですか?」
比較的優しい声で話しかけられた。だが、私は警戒を緩めずに扉を睨み付ける。実は嘘で扉の向こう側で銃を構えられているのでは? と想像したのだ。
だが、向こうも私が警戒しているのを察知したのか、安心させるように更にゆっくりとしたペースで話しかけてきた。
「大丈夫、ここは親友の家だから物騒な事はしない。俺の名前はヴィルヘルム。ヴィルヘルム・ベルガーだ。君の名前は?」
「シャ……シャリファです」
「シャリファか。君はどうして親友の家にいるんだ?」
「え? え、えっと――」
その問いかけにどう返事をしようか迷った。私は孤児でウィルフリードさん夫婦に引き取られましたと言えば、今度はそっちに迷惑がかかるかもしれないと思ったのだ。
(ど、どうしよう! どう答えるのが一番良いのかしら!?)
冷や汗をかきながら困り果てていると、ふと頭に浮かんだのはベルタさんの『貴方に義弟の子供を産んでほしいの』という言葉だった。私は慌てていた事もあり、気が付けば「わ、私はリヒトさんの子供を産む為にここに来ました!」と口早に発していた。
狭い空間だからか声が反響して聞こえた。扉のすぐ向こうにいるヴィルヘルムは理解が追いつかないのか、返事をしないままその場に立ち尽くし、黙り込んでいるようだった。
リヒトさんとの仲が進展してから一週間後――。
「まだかな……まだかな……」
私はリヒトさんの部屋でベッドに腰を掛け、枕を抱えながらソワソワしていた。今日は待ちに待ったベスがこの邸宅にやってくる日。この一週間、彼女に会えるのが待ち遠しくて仕方がなかったのだ。
「はぁ~、待ち遠しいなぁ。ベスに会ったらいろんな事を教えてもらわなきゃ!」
ベスは私と同じアストライア人だ。あの事件から一ヶ月以上経ってるし、気が強い彼女も少しは落ち着いているはずだ。
私は両手を上げ、大きく伸びをしてベッドへ倒れ込む。この一週間リヒトさんに毎日、「ベスを私の専属の使用人として働かせて欲しい!」と頼み込んだが、どうお願いしても答えはNOだった。
(まぁ、仕方ないわね。私を間違って刺しちゃったんだもの。リヒトさんは心配するよね……でも、私は諦めないんだから!!)
私はグッと手を握って一人で意気込む。ベスと話す時は必ず誰かと同席するという条件付きで、アストライア連合王国について聞かせてもらうつもりなのだ。主に言葉や文化、ベスの楽しかった思い出話に花を咲かせたいと思っている。外に出られない私は彼女と話せると考えただけでワクワクしていた。
私はサイドテーブルに置かれたピンク色のラッピング袋を微笑みながら見つめる。きっと、ベスは真っ先に私に謝罪してくると思い、仲直りの印として昨日の晩にキッチンを借りてガトーショコラとクッキーを作ったのだ。
(いっぱい悩んだけど結局、チョコレートをふんだんに使ったお菓子にしちゃった! クッキーにはチョコチップを入れて作ったし、喜んでくれると嬉しいなぁ~♡)
黙々とお菓子を頬張るベスを想像しながら「フーン、フフーン♡」と機嫌良く鼻歌を歌い、枕を抱えながら寝返りを打つ。
「早くベスに会いたいなぁ……」
自分でも何回言ったのか分からないが、もし私が犬だとしたら千切れんばかりに尻尾をブンブンと振っているに違いない。
はやる気持ちを抑えきれず、私はベッドから降りて窓から外を眺めてみる。ここからでは中庭しか見えないと頭ではそう分かっているのに、何度でも外の景色を見てしまう。
「それにしても暇だわ。今日はベスが来るまでこの部屋から出ちゃダメって言われてるから、余計にそう思うのかな……」
私は窓枠に頬杖を付きながら溜息を吐く。今朝、リヒトさんに言われた事を思い出していたのだ。
「今日は軍関係者が屋敷に来るから絶対に部屋から出ないように。トイレに行きたくなっても我慢してくれ……か。そう言われたら、トイレに行きたくなるのはどうしてなんだろう?」
朝、ドロテーアが用意してくれたモーニングティーを飲んだから? でも、量はそんなに飲んでないはず……それなのにどうしてなの?
身体がブルッと震える。そんな事を考えてしまったからか本当にトイレに行きたくなってきた。私は立ち止まり、内腿をピッタリとくっ付けたまま俯く。
「…………駄目よ。このままじゃ、またリヒトさんとの約束を破っちゃう」
私はカァァ……と顔が熱くなるのを感じた。
この一週間、リヒトさんに思う存分甘えさせてもらった。特にここ数日は彼と一緒に寝る度にイチャイチャしていたのだ。またお仕置きとなれば、いろんな意味で身体が保たない。
(私ったら、どうしていつもこうなの!? いつもならトイレは近くないはずなのに行きたくなるだなんて!! うあぁぁ~~、リヒトさんの部屋で漏らす事だけはしたくない!!)
私は考えた。ここで漏らすか、トイレに行くかを――。
「…………よし、決めたわ」
私はベッドに枕を置き、部屋の扉をそっと開けて覗き見る。まだ誰も来る気配はない。行くなら今のうちだ!
「こんな時に限ってドロテーアはベルタさんを迎えに本邸へ行ってるし、近くに使用人さんもいない……まぁ、いっか! トイレに行ってすぐに戻るだけだし! この屋敷の作りも覚えたからもう迷わないし! 早くトイレに行って、この部屋に戻って来よう!」
私は神様に願う時のように手を握り、心の中でリヒトさんに謝罪し始めた。
(リヒトさん、ごめんなさい。私は貴方の部屋で漏らしたくないんです。優しい貴方の事だから、きっと笑いながら許してくれるんでしょうけど! 十八才にもなって漏らしてしまったら恥ずかしすぎますし、貴方の顔を一生見れない気がするんです! だから、私はトイレに行きます!)
眉間に皺を寄せながら祈り終えた後、私はこっそり部屋から出た。右を見て、左を見て、もう一度右を見る。
「よし、誰もいないわね……さぁ、行くわよ!」
私はミント色の長いシフォンスカートの裾を踏まないように手で摘み、少し屈みながらトイレに向かって進み始めた。
◇◇◇
「…………はぁ、スッキリ♡」
無事、用を足してトイレから出た。ここは男女兼用のレストルーム。使用人達がちゃんと掃除をしてくれているお陰で目の前の大きな鏡はピカピカに輝いているし、芳香剤の良い香りがほのかに漂っていた。
私は鏡に映る自分を見つめながら、誇らし気にニコニコと笑った。
「前回みたいに迷わなかったし、このまま部屋まで帰れば問題ないわね! よし、リヒトさんの部屋に戻ろうっと!」
ハンカチで手を拭いた後、廊下に出ようとドアノブに手を掛けようとしたが、まだ手を掛けていないのに扉が勝手に開いたので、私は驚いて反射的に顔を上げる。すると、見知らぬ金髪赤目の男性が扉の前に立っていた。
「…………は? アストライア人?」
聞き慣れない声に私は固まってしまった。扉の先にいたのはリヒトさんと同じ軍服を着た少し髪の長い金髪の男性だった。切長の目はルビーのように赤くて、身長はリヒトさんよりも少し高いような気がする。
「あ……」
ドクッ……と心臓が強く脈打った途端、全身から血の気が引いた。金髪の男性も同様に驚いた顔をしていたが、私がアストライア人だと認識すると腰に携帯していたホルスターに手を伸ばそうとしていた。
(に、逃げなきゃ――!)
私は慌てて個室トイレに逃げ込んで鍵を閉めた。蓋を閉めて便座の上に膝を抱えて座り、身体を縮こませる。
(どうしよう! 私、軍に連れていかれちゃうかもしれない! もしそうなったら、リヒトさんに迷惑がかかってしまう! 彼の言う通り、トイレにも行かなければ良かった!)
こんな事になるなら、部屋で漏らす方が百万倍マシだったと心底後悔していると、扉の外から落ち着き払った男性の声が聞こえてきた。
「あー、怯えさせて悪かった。なぁ、なんで君が親友の家にいるのか教えてくれないか?」
「し、親友? リヒトさんの?」
恐る恐る聞く。すると、すぐに返事が返ってきた。
「あぁ、アイツとは腐れ縁なんだ。ったく……リヒトの奴、親友の俺に隠し事してやがったな。これは高い口止め料を貰わないと」
金髪の男性が扉の外でブツブツと小言を言い始めたのを聞いて、私はフゥ……と息を吐く。
(これはお仕置き確定ね。この前、ベルタさんに腰を診てもらったから、もう少し状態が良くなってからにしてもらおう……ってそんな事を考えてる場合じゃないわ。まだ助かったってわけではないもの)
そんな事を考えていると強めに三回ノックしてきたので、肩がビクッと跳ねた。
「とりあえず、ここから出てきてくれないか?」
「い……痛くしないですか?」
比較的優しい声で話しかけられた。だが、私は警戒を緩めずに扉を睨み付ける。実は嘘で扉の向こう側で銃を構えられているのでは? と想像したのだ。
だが、向こうも私が警戒しているのを察知したのか、安心させるように更にゆっくりとしたペースで話しかけてきた。
「大丈夫、ここは親友の家だから物騒な事はしない。俺の名前はヴィルヘルム。ヴィルヘルム・ベルガーだ。君の名前は?」
「シャ……シャリファです」
「シャリファか。君はどうして親友の家にいるんだ?」
「え? え、えっと――」
その問いかけにどう返事をしようか迷った。私は孤児でウィルフリードさん夫婦に引き取られましたと言えば、今度はそっちに迷惑がかかるかもしれないと思ったのだ。
(ど、どうしよう! どう答えるのが一番良いのかしら!?)
冷や汗をかきながら困り果てていると、ふと頭に浮かんだのはベルタさんの『貴方に義弟の子供を産んでほしいの』という言葉だった。私は慌てていた事もあり、気が付けば「わ、私はリヒトさんの子供を産む為にここに来ました!」と口早に発していた。
狭い空間だからか声が反響して聞こえた。扉のすぐ向こうにいるヴィルヘルムは理解が追いつかないのか、返事をしないままその場に立ち尽くし、黙り込んでいるようだった。
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