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第一章 人生の転機と親友との別れ
第七話
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ついに別れの日がやってきた。
昨日の夜はヴェロニカと気が済むまで喋って一緒のベッドで寝た。朝なんて来なくて良いのにって何度願ったか分からない。気が付いた時には朝日は登っており、私達はいつの間にか眠ってしまっていた事に気が付いたのだった。
「ふー、ここまで切っちゃうと逆に清々しいわね」
手に持った鏡を見て感想を述べた後、首に巻いていた白いケープを外した。ヴェロニカはこの施設で一番慕っていたマリー先生に髪を切って欲しいとお願いしていたのだ。
ヴェロニカが髪を切っている間、私は部屋の外でジッと身を潜めていた。いい加減現実を見ないと……頭では理解できていても体が言う事を聞かなかった。
「マリー先生、似合う?」
「えぇ、とっても似合ってるわ」
そう聞こえたので、私はチラッと部屋の中を覗き込んでみる。すると、彼女の前髪は眉上に揃えられ、腰あたりまであった後ろ髪は頸が見える位にまで切られていた。
「軍に入隊してから切れば良かったんじゃないの?」
「ううん、マリー先生に切って欲しかったの! 私が入隊するのは陸軍の特別狙撃隊らしいから気合い入れて頑張らないとね!」
ヴェロニカはそう言って無邪気に笑う。すると、髪を切る様子を一部始終見ていた子供達は「凄い、別人みたーい!」と騒ぎ始めた。
一方の私は胸がギュッ締め付けられる思いだった。本当に軍隊へ行ってしまうんだ……そう思うだけで更に心が痛んでくる。部屋の外でずっと泣きそうな顔をしていると「シャリファ、こっち来て」という声が聞こえてきた。
「…………うん」
長い沈黙の末に返事をした。ヴェロニカの問いかけに応えるように私は茶系のトランクを持ちながら重い足取りでリビングの中に入った。私の服装はいつもと同じ様な格好だったが、胸元に大きな赤いリボンが付いている……これはこの施設を卒業する時に与えられる物だ。
それを見たヴェロニカもまた眉尻を下げながら「……とうとうこの日が来ちゃったね」と寂しそうな表情をしていた。
「……手紙ちゃんと書くから、絶対に返事してね」
私は涙が出てこないように心を落ち着かせてからそう言うと、ヴェロニカは笑いながら「分かってるよ」と答えてくれた。
「あーあ、次会えるのはいつだろうね?」
「戦争が終わってから……かな?」
「いつになるか分からないけど、私は絶対にシャリファと会えるって信じてるから! ほら、約束しよう?」
そう言って、ヴェロニカは小指を差し出すのを見た私は目を大きく見開いた。
これは私とヴェロニカが小さい頃に決めたおまじない。昔、たまたま見ていた本に小指で契った約束を破ると天罰が下ると書かれていたので、本当に大事な時だけに使ってきたのだ。
「……なんだか子供の頃に戻ったみたい」
「ね、いいでしょ? 指切りのおまじない。私達、指切りして破った事ないでしょ? だから、早く指切りしよ?」
私はそっと小指を絡めた。そして、熱心に神に祈る。
どうか大好きなヴェロニカが大きな怪我をする事なく、無事に生きて帰ってきますように––––すると、誰かがプッと吹き出す声が聞こえてきた。
「もうシャリファったら! お願い事を声に出して言う癖、治ってなかったんだね!」
「べ……別に良いじゃない! そういうヴェロニカはどうなの? ちゃんと神様にお祈りした?」
ヴェロニカは胸に手を当てながら「勿論! 沢山、お祈りしたわ!」と私に向かって人差し指を立てながら答えた。
「一つ目はシャリファが素敵な男性と巡り会えますようにってお祈りしたの! 二つ目は生きて貴方の元に帰って来るでしょ? 三つ目は––––」
「……三つ目は?」
私は首を傾げて待っていたが、いつまで経っても三つ目の願い事について答える事はなかった。
「どうしたの?」
結局、何も言わずに「んー……やっぱり、内緒♡」と言って椅子から立ち上がり、テーブルの上に置いてあった制帽を被った。
「えぇ~、勿体ぶらないでちゃんと教えてよ!」
「秘密ったら秘密! それにほら、口に出してお願いを言ったら駄目って本に書いてあったでしょー?」
「あ、そうだった! ま、待って……もう一度! もう一度、やらせて!」
「私も、もう一度やるわ。お願い事、声に出して言っちゃったし」
私達は笑い合って、また小指を絡めた。そのままの状態で互いの額に持っていき、今度は願いを口に出さずに熱心に祈りを捧げる。
神様……どうか大好きな親友のヴェロニカが無事に帰って来ますように。大きな怪我をする事なく、彼女と再会できますように。戦争が終わって今度こそ平和が訪れますように。
先程のヴェロニカに倣って私も三つ祈りを捧げた。
「シャリファ、長すぎよ」
「……いいじゃない。友達の無事を願う事は悪い事じゃないもの」
私は祈り終わった後、ヴェロニカと抱擁を交わした。すると、リビングに置いてある大きな古時計がボーン……ボーン……と鳴る。
「時間だね」
「……うん」
ヴェロニカが無言で手を差し出すが、私は一瞬手を取るのを躊躇った。だが、どうにもならないとすぐに諦め、彼女の手を取り施設の玄関まで歩き出す。すると、リビングにいた子供達が私達の後をわらわらと着いてきた。
「ねぇ、ヴェロニカお姉ちゃんはどこへ行くの?」
「私は軍人になって、この国の為に働くんだよ!」
階段を降りながら簡単に説明すると、子供達は声を揃えて「いいなぁー!」と羨ましがった。皆、外の世界に興味津々のお年頃。特に男の子達は外へ行きたくて仕方がない様子だった。
「シャリファお姉ちゃんもお国の為に働くの?」
「そうだよ。私も国の為に働くの」
私も国の為にここを出るのだ。ヴェロニカとは違う道に進むけど、私が子供を産み育てる事でいずれ国の為に繋がると信じて……いや、少し違う。そう信じていないと心が保ちそうになかった。
「皆が大人になるまでには、戦争はきっと終わってるわ」
「本当? じゃあ、アルベルトとずっと一緒にいられる?」
不安そうな表情をしているリンダを見た。彼女の小さな手の先にはアルベルトの手がしっかりと握られており、アルベルトもリンダの手をギュッと握りしめていた。
玄関まで辿り着いた私はリンダの前で屈み、リンダとアルベルトの頭をそっと撫でてやった。
「大丈夫。リンダとアルベルトが笑って過ごせる未来がきっと来るわ」
私がそう言うと、リンダとアルベルトは顔を見合わせて笑った。この小さな恋がどうなっていくのか側で見守れないのは残念だが、私が行く先は幸いにもこの国で知らない人は一人もいない名家・シェーンベルク家だ。私にできる事はなんでもやろう……そう心に誓った。
「シャリファ、もうお迎えが来てるよ」
そう言われて私は振り向くと、門の前に昨日見た黒塗りの高級車が停車していた。運転しているのは昨日とは違う人だったけど、ベルタが車の前でにこやかに手を振ってくれている。
そのすぐ前方には軍用トラックが停車しており、既に何人もの新兵達が乗り込んでいた。
「……っ」
あの門扉を通ったらヴェロニカとは暫く会えない。でも、ベルタさんも待ってるし、もう行かなくちゃ――そう思うのだけど、中々その一歩が踏み出せなかった。
「ヴェロニカお姉ちゃん、シャリファお姉ちゃん! 行ってらっしゃい!」
何も知らない純粋なリンダとアルベルトが両手を上げて私達に手を振り始めた。それに習って他の子供達も満面の笑みで手を振る。
それを見た私はクスッと笑って「……それじゃあ、行ってきます!」と元気よく返事をして施設に背を向けた。
「ヴェロニカお姉ちゃん、頑張ってね!」
「また皆でご飯食べようね!」
「シャリファお姉ちゃん、風邪ひいちゃ駄目だよー!」
「また帰ってきてねー!」
背後から子供達のエールが聞こえてくる。
私もヴェロニカも後ろは振り返らなかった。振り向けば、きっといつまで経っても離れられないと思ったからだ。
「……シャリファ」
「うん」
「絶対……絶対にまた会おうね!」
「うん、嘘ついちゃ嫌だからね!」
門に向かいながら人目を憚らず一頻り泣いた。門扉を開け、私達は施設の外へ出た。
私は持っていたハンカチでポロポロと流れる涙を拭った。そして、ヴェロニカは制帽を被り直して敬礼をしてきたので、私は自分の胸に手を当てて彼女の黄色い大きな目を見つめる。
「……どうかお元気で」
「貴方のご武運をお祈りします」
施設から出た瞬間、私達の身分は軍人と平民になった。そして、お互い振り返る事なく、それぞれの道へ歩き出した。
ついに別れの日がやってきた。
昨日の夜はヴェロニカと気が済むまで喋って一緒のベッドで寝た。朝なんて来なくて良いのにって何度願ったか分からない。気が付いた時には朝日は登っており、私達はいつの間にか眠ってしまっていた事に気が付いたのだった。
「ふー、ここまで切っちゃうと逆に清々しいわね」
手に持った鏡を見て感想を述べた後、首に巻いていた白いケープを外した。ヴェロニカはこの施設で一番慕っていたマリー先生に髪を切って欲しいとお願いしていたのだ。
ヴェロニカが髪を切っている間、私は部屋の外でジッと身を潜めていた。いい加減現実を見ないと……頭では理解できていても体が言う事を聞かなかった。
「マリー先生、似合う?」
「えぇ、とっても似合ってるわ」
そう聞こえたので、私はチラッと部屋の中を覗き込んでみる。すると、彼女の前髪は眉上に揃えられ、腰あたりまであった後ろ髪は頸が見える位にまで切られていた。
「軍に入隊してから切れば良かったんじゃないの?」
「ううん、マリー先生に切って欲しかったの! 私が入隊するのは陸軍の特別狙撃隊らしいから気合い入れて頑張らないとね!」
ヴェロニカはそう言って無邪気に笑う。すると、髪を切る様子を一部始終見ていた子供達は「凄い、別人みたーい!」と騒ぎ始めた。
一方の私は胸がギュッ締め付けられる思いだった。本当に軍隊へ行ってしまうんだ……そう思うだけで更に心が痛んでくる。部屋の外でずっと泣きそうな顔をしていると「シャリファ、こっち来て」という声が聞こえてきた。
「…………うん」
長い沈黙の末に返事をした。ヴェロニカの問いかけに応えるように私は茶系のトランクを持ちながら重い足取りでリビングの中に入った。私の服装はいつもと同じ様な格好だったが、胸元に大きな赤いリボンが付いている……これはこの施設を卒業する時に与えられる物だ。
それを見たヴェロニカもまた眉尻を下げながら「……とうとうこの日が来ちゃったね」と寂しそうな表情をしていた。
「……手紙ちゃんと書くから、絶対に返事してね」
私は涙が出てこないように心を落ち着かせてからそう言うと、ヴェロニカは笑いながら「分かってるよ」と答えてくれた。
「あーあ、次会えるのはいつだろうね?」
「戦争が終わってから……かな?」
「いつになるか分からないけど、私は絶対にシャリファと会えるって信じてるから! ほら、約束しよう?」
そう言って、ヴェロニカは小指を差し出すのを見た私は目を大きく見開いた。
これは私とヴェロニカが小さい頃に決めたおまじない。昔、たまたま見ていた本に小指で契った約束を破ると天罰が下ると書かれていたので、本当に大事な時だけに使ってきたのだ。
「……なんだか子供の頃に戻ったみたい」
「ね、いいでしょ? 指切りのおまじない。私達、指切りして破った事ないでしょ? だから、早く指切りしよ?」
私はそっと小指を絡めた。そして、熱心に神に祈る。
どうか大好きなヴェロニカが大きな怪我をする事なく、無事に生きて帰ってきますように––––すると、誰かがプッと吹き出す声が聞こえてきた。
「もうシャリファったら! お願い事を声に出して言う癖、治ってなかったんだね!」
「べ……別に良いじゃない! そういうヴェロニカはどうなの? ちゃんと神様にお祈りした?」
ヴェロニカは胸に手を当てながら「勿論! 沢山、お祈りしたわ!」と私に向かって人差し指を立てながら答えた。
「一つ目はシャリファが素敵な男性と巡り会えますようにってお祈りしたの! 二つ目は生きて貴方の元に帰って来るでしょ? 三つ目は––––」
「……三つ目は?」
私は首を傾げて待っていたが、いつまで経っても三つ目の願い事について答える事はなかった。
「どうしたの?」
結局、何も言わずに「んー……やっぱり、内緒♡」と言って椅子から立ち上がり、テーブルの上に置いてあった制帽を被った。
「えぇ~、勿体ぶらないでちゃんと教えてよ!」
「秘密ったら秘密! それにほら、口に出してお願いを言ったら駄目って本に書いてあったでしょー?」
「あ、そうだった! ま、待って……もう一度! もう一度、やらせて!」
「私も、もう一度やるわ。お願い事、声に出して言っちゃったし」
私達は笑い合って、また小指を絡めた。そのままの状態で互いの額に持っていき、今度は願いを口に出さずに熱心に祈りを捧げる。
神様……どうか大好きな親友のヴェロニカが無事に帰って来ますように。大きな怪我をする事なく、彼女と再会できますように。戦争が終わって今度こそ平和が訪れますように。
先程のヴェロニカに倣って私も三つ祈りを捧げた。
「シャリファ、長すぎよ」
「……いいじゃない。友達の無事を願う事は悪い事じゃないもの」
私は祈り終わった後、ヴェロニカと抱擁を交わした。すると、リビングに置いてある大きな古時計がボーン……ボーン……と鳴る。
「時間だね」
「……うん」
ヴェロニカが無言で手を差し出すが、私は一瞬手を取るのを躊躇った。だが、どうにもならないとすぐに諦め、彼女の手を取り施設の玄関まで歩き出す。すると、リビングにいた子供達が私達の後をわらわらと着いてきた。
「ねぇ、ヴェロニカお姉ちゃんはどこへ行くの?」
「私は軍人になって、この国の為に働くんだよ!」
階段を降りながら簡単に説明すると、子供達は声を揃えて「いいなぁー!」と羨ましがった。皆、外の世界に興味津々のお年頃。特に男の子達は外へ行きたくて仕方がない様子だった。
「シャリファお姉ちゃんもお国の為に働くの?」
「そうだよ。私も国の為に働くの」
私も国の為にここを出るのだ。ヴェロニカとは違う道に進むけど、私が子供を産み育てる事でいずれ国の為に繋がると信じて……いや、少し違う。そう信じていないと心が保ちそうになかった。
「皆が大人になるまでには、戦争はきっと終わってるわ」
「本当? じゃあ、アルベルトとずっと一緒にいられる?」
不安そうな表情をしているリンダを見た。彼女の小さな手の先にはアルベルトの手がしっかりと握られており、アルベルトもリンダの手をギュッと握りしめていた。
玄関まで辿り着いた私はリンダの前で屈み、リンダとアルベルトの頭をそっと撫でてやった。
「大丈夫。リンダとアルベルトが笑って過ごせる未来がきっと来るわ」
私がそう言うと、リンダとアルベルトは顔を見合わせて笑った。この小さな恋がどうなっていくのか側で見守れないのは残念だが、私が行く先は幸いにもこの国で知らない人は一人もいない名家・シェーンベルク家だ。私にできる事はなんでもやろう……そう心に誓った。
「シャリファ、もうお迎えが来てるよ」
そう言われて私は振り向くと、門の前に昨日見た黒塗りの高級車が停車していた。運転しているのは昨日とは違う人だったけど、ベルタが車の前でにこやかに手を振ってくれている。
そのすぐ前方には軍用トラックが停車しており、既に何人もの新兵達が乗り込んでいた。
「……っ」
あの門扉を通ったらヴェロニカとは暫く会えない。でも、ベルタさんも待ってるし、もう行かなくちゃ――そう思うのだけど、中々その一歩が踏み出せなかった。
「ヴェロニカお姉ちゃん、シャリファお姉ちゃん! 行ってらっしゃい!」
何も知らない純粋なリンダとアルベルトが両手を上げて私達に手を振り始めた。それに習って他の子供達も満面の笑みで手を振る。
それを見た私はクスッと笑って「……それじゃあ、行ってきます!」と元気よく返事をして施設に背を向けた。
「ヴェロニカお姉ちゃん、頑張ってね!」
「また皆でご飯食べようね!」
「シャリファお姉ちゃん、風邪ひいちゃ駄目だよー!」
「また帰ってきてねー!」
背後から子供達のエールが聞こえてくる。
私もヴェロニカも後ろは振り返らなかった。振り向けば、きっといつまで経っても離れられないと思ったからだ。
「……シャリファ」
「うん」
「絶対……絶対にまた会おうね!」
「うん、嘘ついちゃ嫌だからね!」
門に向かいながら人目を憚らず一頻り泣いた。門扉を開け、私達は施設の外へ出た。
私は持っていたハンカチでポロポロと流れる涙を拭った。そして、ヴェロニカは制帽を被り直して敬礼をしてきたので、私は自分の胸に手を当てて彼女の黄色い大きな目を見つめる。
「……どうかお元気で」
「貴方のご武運をお祈りします」
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