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◇012/深層を知ろうとする者
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しおりを挟む軍人生活2年目の1月、アイゼンは有給を使い実家へと帰省していた。あと2ヶ月でシュタールとの約束の2年となる。その件でアイゼンは呼ばれた。
自宅に戻れば菫は勿論の事、その場に榛原も同席した。
「兄貴、これ例の資料。この2人は是非欲しい」
「シュタール、こっちは黒曜の資料。アイゼンにだったら異動許可をあげる」
アイゼンと榛原、それぞれが資料をシュタールに押し付けた。アイゼンはかつての同期2人のを、榛原は自分の部下から1人を。
「アイゼン、これは俺が用意した資料だ。誰か気になる人材は居るか?」
今度は逆にシュタールから資料を押し付けられた。アイゼンはそれをひとつひとつ見て行く。
「兄貴、この経歴空白の彼。絶対に何か隠している気がする。あとは正直わからない。丁度良い選定を兄貴達に任せても良いだろうか?」
資料を束ねると、1人分を除きそのままシュタールへと返した。
「アイゼン、お前の利き手の件は覚えているか?」
「子供の頃、兄貴が言っていたよな。切り札になる、と。確かにそうだ。みんな俺の利き手が右だと思っているから」
「これから編成される部隊もそう。これが『壁』となり得る事を隠せ。時期が来るまで覚られるな。ここはお前にとっても彼等にとっても『切り札』となる。たとえそれが親友でも黙っていろ」
「…了解」
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軍人2年目の4月、アイゼンは偶然にも親友と再会した。シュタールの親切心なのか偶然なのかはわからないが、軍学同期のリアンと再編成において同隊となった。
1年目を西方管轄区国境警備隊と言う常にぴりぴりとした部隊に所属したリアンだったが、アイゼンと再会した時には以前と変わらない笑顔を見せた。…変わってしまったのはアイゼンの方だった。裏を知り、闇を知り、もう無邪気ではいられなかった。
それから9ヶ月。結局何もかも隠したまま、まるで気持ちを裏切るかの様にリアンと一緒に過ごして来た。そしてこれからも自分を偽り隠したまま。
アイゼンはシュタールに憧れた。いや、シュタールと榛原の関係に憧れたと言う方が正しいのか。お互いの立ち位置をきちんと理解し、信頼し、背中を任せ合える関係に。
選定推薦査定も、アイゼン自ら退いた。自分にはそんなものは必要ない、と。『影』である自分にはそんな物は要らない。寧ろ『壁』の方にこそ、その地位を固める勲章が必要だとアイゼンは考えている。
4月の再編を待たないと、アイゼンには自分を取り巻く環境がわからない。仮にリアンが『壁』となったら、すぐには難しいかもしれないが、いずれ全てを包み隠さず言える関係になりたいとアイゼンは切に願った。
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2020/05/27/012
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