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◇004/6隊における非日常の話
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しおりを挟む少し話は戻る。
「アイゼン、トラブル発生。食事が終わったら大通りの警邏班の所へ行って貰えるかな?事務仕事は僕とアオイで済ませるよ。それとも事務仕事の方が良い?」
「いや、喜んで現場に行かせて頂きます」
残ったラーメンを一気に食すと空容器を適切に処分し、上着とハンドガンを手にアイゼンは事務室を出て行った。
現場は大通り。現着してみれば道路に様々な物が散乱していた。状況を聞いてみれば突風が起きて周囲の物が飛び散ってしまったそうだ。被害的な話はアイゼンにはわからないが、とりあえずはここの撤去が最優先であろう。怪我人は既に搬送済みだった。幸い皆が皆、軽傷だった。
現場の交通規制や交通整理は専門の部隊に任せておけば良い。アイゼンは無線で他の箇所を警邏していた6隊員を召集し、効率的に撤去すべく慣れない指示を飛ばしていた。
ただ不思議ではあった。本日の天候は晴れ。風はずっと穏やか。今も穏やかな風がそよそよと吹いている。局地的な突風が起こる要素はなかった…と思われる。
自然現象でなければ何だ。人為的に起こすにはどうしたら良い?そして何の為に?わからない事だらけだった。
アイゼンは足下に舞って来た呪符を拾った。基本的な内容の呪符だとアイゼンでも読み取れた。どこから飛んで来た札だろうか。多分それはすぐ側の呪符を扱う店の札であろう。確認を兼ねて店舗に返しに行けば、店主が興味深い情報をくれた。
──『いやね、うっかり窓から数枚飛ばしちゃったんだよ。あ…と思って慌てて外を見たら綺麗な女の子が札を手にしてな、そしたらその女の子を中心に突風が起きたんだ。確かに飛ばしてしまった呪符の中に風の札があったんだ。だがそれはあんなにも強力な札ではない。寧ろ練習用の弱い札だ。あの女の子は所謂『例外』の子なんだろうね』
──『その女の子は?』
──『わからない。突風の中心に居た事は間違いないんだ。もしかしたら自分自身も巻き込まれて吹き飛ばされてしまったのかもしれない』
店舗には呪符の管理に関して厳重注意をしたものの、どうやら今回の件の要因は呪符を拾った『例外』の女の子の様だ。店主に覚えている限りの特徴を聞き、今後はこの女の子を担当部署が追う事になるだろう。全ての撤収が終わったあと、アイゼンは隊員と共に事務室へと戻ると、そう報告書に記す事にした。
アイゼンは今回初めて『例外』と言う言葉を耳にした。『例外』と言う以上、呪符の常識では計り知れない何かがあるのだろう。滅多に聞かないので、きっとレアケースなのだと悟った。
アイゼン達が戻ると事務室には既に誰も居なかった。定時を多少過ぎていたので、事務仕事のアオイは帰されたのかもしれない。ただリアンはどこへ?帰宅した形跡も何かしらで出掛けた形跡もない。きっと本部のどこかに居るのであろう。
報告書が上がるとアイゼンは部下である隊員達を帰した。ここからは副長である自分と隊長であるリアンの仕事。本日の仕事が終わったのなら、終わった人から帰れば良い。アイゼンはリアンのサインを貰うべく、自分の上司であり同僚を探しに出た。
─────────────────
ヒトハチサンマル。1人きりの資料室。アオイはもう帰した。アオイに任せられる事務仕事はアオイにやって貰い、リアンはリアンの事務仕事をこなした。本日分の事務仕事を終わらせたところで、ひとり資料室に籠る。この資料室は一般兵は入れない。リアンは『レッドライン』と言う権限を利用し入室している。いくつかのファイルを手にし、資料室のデスクに積み上げた。ぺらり、ぺらりとファイルに綴られた資料を捲る。
ピッ…と小さな音がする。資料室の電子ロックが開く。
「おー、居た。さっきの件の報告書だけど…。ん?何見てんの?」
アイゼンが書類を片手に入って来る。アイゼンは『レッドラインの隊長の補佐をする副長』としての権限を利用して入室した。リアンの後ろからファイルを覗き込む。
「これって3年前の事件か?資産家襲撃事件…だっけ?」
それは3年前、中央管轄区中央都市において起こった事件。リアンは当時西方管轄区に配属されていたから新聞で知り、衝撃を受けた事件だった。
「あれだろ?両親が殺害されて息子と娘が行方不明…だっけ?」
「そう。兄妹はいまだに見付かっていない」
「何で今更そんな事件の資料を見ているんだ?」
「…もしかしたら今後、必要になるかもしれない」
ぱたり…とリアンがファイルを閉じる。出してあったファイルを所定の場所へと戻した。
「…アイゼン、僕がこの事件のファイルを見ていた事は誰にも言わないで欲しい。…それこそ隊員達にも」
「面倒くさい『守秘義務』か?」
「…少し違うかな?…人を守る為…かな」
「お前、何でも抱え込むなよ?」
「大丈夫。直ぐにどうこうじゃないから。報告書を確認するから戻ろう」
資料室の照明を消し、2人で資料室を出る。ドアを閉じれば自動で電子ロックが掛かった。
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