上 下
15 / 19

15 前友 祝ハーレムパーティー!キメラなんて楽勝 !?

しおりを挟む
  
 リョーマが追い出されたSランクパーティー、ラビアンローズは古参のメンバー四人に準新入りのポトスとブルックリン。更に新入りの美女5人が加わった。

 今まさに、男はたった一人で残りの10人は全員が美女という、ボルト念願のスーパーハーレムパーティーが完成したのだ。

 やはり先日と同じように、街の人々が歓声を送る中をキメラの討伐に出掛けたのだった。

 この前は失敗したけれど、悪い噂よりもスゴい美女集団の噂が上回ったのか、お見送りの観衆は増えていた。
 
 そうなると、やっぱりボルトは気持ち良かった。
 応援されチヤホヤされて、誇らしいきもちと、満足感で最高だった。


 さて、討伐依頼がどうなったかというと、結果だけを言えば新入りの活躍 ? もあってキメラは簡単に倒すことができた。

 しかしながら、彼女たちはキレイな花があれば摘みに行き、可愛いウサギが現れれば追いかけて、泥道は決して通ることは無く、薮にも繁みにも入らずだったのだ。

 行きも帰りも美女たちは、言いたい放題のやりたい放題だった。
 パーティーNo.1の問題児はポトスで間違いない。
 ところが、それとほとんど同等のナンバー2が、5人増えてしまったのだ。

 ぶっ飛びママの店に、ぶっ飛びチーママが5人やって来たようなものだ。
 ダイキの街のカブッキ町なら大人気かも知れないが……

 そもそも何でキレイなヒールのある靴を履いている奴がいるのに、誰も気付きもしなかったんだ ? 

 それも二人もだ ! 二人もっ !!
 デートじゃないんだからさあ。

 別段、ボルトも他のメンバーも、服装や持ち物を説明したり、指示したりということは無かったので、討伐に慣れていない女子だったら、これが普通なのだろうか ?

 反対に新入りからアレコレ言われたり頼まれたりは物凄くたくさんあったのだ。

 キメラ一匹倒すのに、ボルトは今まで感じたことが無いくらいに、疲れてヘトヘトだった。
 結局ヒールの女の一人は途中で歩けなくなって、ボルトがおぶって帰ったのだ。
 他の古参のメンバーだって同様に疲れ果てたのだった。

 今回は本当に簡単な依頼だったから良かったようなものを、無事に帰れたのが不思議なほどだったのだ。
 
 彼らは日の出ているうちに何とか帰った。ボルト一人なら、走ればすぐのところなのにだ……

 「ハア、ハア、ハア、やっと帰ったぜーーーー !!もうダメだーー !!」

 「私もよーー ! もうまいったわ !」

 「はあああっ !」

 ボルトとエメリア、そしてカエラは苦悩の声をあげた。他のメンバーも疲労の声と文句がこぼれた。

 「ふえ~~、もう歩けない !」

 「もう、討伐ってマジ無いわっ !!!」

 更に、空腹を訴える者が多かったので夕食を食べに行ったのだ。
 少しだけ反省会のような話もあったが……

 「もうさあ、あんなにたくさん歩くなんて信じられないわよね。アタシこういうの向いてないわ~ !」

 「そうそう、キツイよね !」

 「だけどさあ、キメラなんて楽勝だったね !」

 「そうだよね。ボルト一人で十分な感じだったわよね~ !」

 そう言ったエメリアの言葉に、ボルトは雷にうたれたような衝撃を感じたのだった。

 ⚡はうっっっっっっっっっっ !!!!!!! 
 確かに !! 
 あんな魔物は俺が一人で楽に倒せるな……
 な、な、ななな何てことだーーー !! 
 コイツらを連れて往復した、あの苦労の行軍はまったくの無意味だったというのか~~ !!!! 
 くはあああ !

 ただでさえ疲れていたボルトに、更なる後悔の疲れが襲ったのだった。

 夕食は酒代込みで約5万ギル(日本円で約5万円)だった。

 それから新入りの服が破れたり汚れたから、買ってくれと頼まれた。
 結局、二人にだけに買う訳にもいかず、アレコレ買わされて約13万ギル払った。

 散々無駄な苦労をしたうえに、ここまでの分だけでも10万ギル以上の赤字だ。しかも、これには宿泊費も宴会費も入っていない。

 彼らの宿は高級な宿。もちろん宴会も最高級だ。ざっと計算しても100万ギル以上の赤字だった。

 そもそも新しいメンバーになってから収支がプラスになったことが無いのだけど、彼らはまるっきり気付いてなかった。資金はどんどん減っていた。

 それなのに、彼女たちは当然のように、今から更に二次会へ行こうと誘ってきたのだ。

 やはりボルトもお金のことなどさほど気にせずに、普通に二次会へ行くことにした。ボルトのこういうところはリョーマよりも腹が据わっていた。

 彼は10万や20万の金であたふたしたりはしなかった。この仕事は一発当てれば千や2千は軽く稼げる稼業なのだから……
 
 
 この日も当然、ボルトによる夜の冒険は上へ下への大活躍だった。

 新人に振り回されて、あんなにヘトヘトになっていたのに、夜は夜で人であらざる者のように暴れまくるのだ ! ボルトの底無し絶倫の体力には本当に驚かされた。

 すると次第に大人数の美女たちの方が、慣れない討伐の疲れも重なって次々とダウンしていったのだ。

 
 
 翌日
 眠い目をこすりながらギルドに行くと、集まったのはエメリア、カエラ、ルイ、ポトス、ブルックリンだけだったのだ。

 新メンバーは慣れない荒れた道を歩かされて疲れただけでなく、傷や怪我、特に靴ズレに悩まされた。見た目重視の可愛い靴なのだから当然、そんなことにもなるだろう。

 それにも増して、森の中では蚊やクモの巣やヘビが多くて耐えられなかったのだ。そんな討伐に出掛けるのはこりごりのようだった。

 「くうううっ 何てことだ !!」

 ボルトは後悔しているようだ。

 「しょうがないよ ! か弱そうな娘ばっかりだったものね !」

 ポトスが慰めていた。
 ~キミが言うのもどうかと思うが……

 「くそーーーー !! こんなことなら家も聞いとくんだった !!」
 
 「えええーーー ! そこなのーー !?」

 エメリアがすかさず突っこみを入れた。やはりボルトにはエメリア達がしっくりくるようだ。

 そしてボルトたちは再び慣れない討伐依頼の選択からスタートするけれど、何が良くて何が悪いのかも分からない、正直に言っておバカな彼らが好転することは無いだろう。

 どうしても明るい未来は想像できなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

罪人として生まれた私が女侯爵となる日

迷い人
ファンタジー
守護の民と呼ばれる一族に私は生まれた。 母は、浄化の聖女と呼ばれ、魔物と戦う屈強な戦士達を癒していた。 魔物からとれる魔石は莫大な富を生む、それでも守護の民は人々のために戦い旅をする。 私達の心は、王族よりも気高い。 そう生まれ育った私は罪人の子だった。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...