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1章

本当の理由........

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 「〝堕天使〟の本当の存在理由だけ、みんなに話しておくね。」
 アトゥールは、さっきまでの子どもぽさが嘘だったかのようにキリッとして、最後の話をはじめた.........

 
 「堕天使がいる理由、それは、力を失った神に裏からこの世界を見守って欲しかったかららしいんだ。
 だって、ほら、僕らだけだと対応出来ないこともあるでしょ?
 そういう案件を我々より経験のある元神達が裏方として対応してくれてるんだよ。

 ちなみに、みんなの前代の神だった者達も多く堕天使になっているよ。


 〝堕天使〟の中にも階級があってね.....
 コアトリクエ様がよかれと思って堕天を勧めたけど、それがまた仇となったんだよ。

 父上は、元主神だったから相当地位が高くなるはずだったんだけど.........他の世界の神がコアトリクエ様の強靭な監視網をくぐり抜けて介入してきちゃったらしくもう手が付けられないんだって。
 それでコアトリクエ様から現在の主神の僕に課された課題が『父上であるアザゼルを消滅させること』なんだ.........。」

 「な、なぜ兄さんが、父上を消滅させなければならないんだよ!!!」
 アガウスは、再び顔を怒りに染めた。
 でも、何となくうっすらと気がついているのだろう。

 「そ、そうですよ。いくらなんでも貴方様のお父上である前主神を消滅だなんて.....」
 アルテスも思わず本音を口に出した。

 他の神達も、衝撃のことを言う主神を悲しそうに見ている。
 
 「コアトリクエ様によればねもう無理、なんだって。父上を抑えつけることが.....

 私だって!救えることなら父上を救いたかったよ!!
 自分の命をかけたとしても救いたかった.....
 でももう無理なんだって、身体は父上でも魂が違うものに書き換えられてしまったらしく、母上のこともすっかり忘れてる。
 私も父上の変わり果てた姿を見た.....とても酷かった、私のこともアガウスのことも神界のことも何もかも全て覚えていないんだよ.....

 今の父上の頭の中、どんなこと考えてると思う??
 明日は、誰殺そうかな?誰を生贄にしようかな?誰を喰らおうかな?
 そんな、バカなことしか頭になくなっちゃったんだよ。
 これ以上、あんな姿を見たくないって、辛いって叔父上の2人ともが言うんだ。もちろん母上もね.........

 コアトリクエ様も協力はしてくれるってさ。
 父上は一度母上と契を結んでいるし、僕らとも繋がっているから、もう一度〝いつか〟逢えると思う.........可能性だけどね。」
 アトゥールは、そう言うと空を仰ぎみた。
 その瞳には、いくつもの涙がこぼれ落ちそうに溜まっている。
それでも決してアトゥールは、涙を流そうとはしなかった。
 その姿にその場の者達は、余計に胸を締めつけられた。

 「兄さん、父上はもう無理なんだね.........
 会えないんだね.........」
 アガウスもまた、泣きそうになっていた。
 
 優しい兄弟がなぜこんな運命を辿らなければいけないのだろうか.....
 これから先、もしかしたら2人が無理矢理笑みを作り、笑う時が来るのかもしれない。
 そう思ってしまえば、他の神達も居た堪れない気持ちが膨らんでしまう。
 それでも、手伝うことが出来てもその時自分達は手を差しのべることが出来ないことに皆悔しく思っていた。

 帝国の皇帝も同じ思いだった。
 自分の息子と同じように若い見た目の主神に人間の自分達が、何も出来ることがないことに激しい悔しさを抱き手を握りしめていた。

 「あぁ。アガウス.....1度だけ父上の姿を見ておくかい?明日が期限なんだ。コアトリクエ様に時がくるまで延ばして貰ってたけど、もうそろそろ主神として、これ以上父上に醜態を晒させないようにしなければならない。
 辛いけど分かってくれるか?」

 「.........うん、わかったよ。
 でも、その消滅させる時僕も一緒にいさせてね。最後くらい見送りたいから。」
 アガウスも、泣きながら笑った……
 いや、兄の気持ちを知り無理に笑って見せたのだ。

 「「「アトゥール様、私達もご一緒願えないでしょうか?」」」
  今まで黙って話を聞いていた他の神達も、自分達の思いを思わず口に出した。
 神達の中には、アトゥールよりも神として生きている者も多くいる。だから、息子のように感じている主神にもう、これ以上一人で抱え込んで欲しくなかった。

 「.........っ!!!もちろん、いいよ。」
 軽く笑みを浮かんだ後、皆の想いが伝わったのか、アトゥールは堪えきれずに涙を流した.........
 美しい瞳から、ポロポロとキラキラと輝く宝石のような雫がこぼれ落ちていた。
 すかさず、アガウスは兄を抱きしめ頭を撫でて、『大丈夫、大丈夫』と称し囁いていた。



 アトゥールが落ち着き、ライラット王国にて話をしていると部屋の扉がノックされた。
 
 「皇帝様、ソフィア様.......失礼しました。皇太子妃殿下がお目覚めになられたので、皇太子殿下とともにお連れしました。
 入室してよろしいですか?」

 すると、皇帝はアトゥールの方を向き許可を得ると入室の許可を出した。





_________



 更新が、遅くなりすみませんでした。
 本日はもう一話投稿しようと思います。
 いよいよ、いや、やっと主人公達のお話に戻ります。楽しみしていた皆様、遅くなってすみません(。>﹏<。)💦


ファンタジーですが、恋愛要素もある作品を最近新しく書かせていただきました。
「追放された私が、本当の聖女ですがなにか??」という作品です。

 まだ展開が決まっていなく進みが遅いかと思いますが、そちらの方も読んでいただけると嬉しいです。
 また、アドバイス等の感想もお待ちしております(*ơᴗơ)
 

 最後に。落ち着いては来ましたが、まだ皆様大変な時期かと思いますので、体調に気をつけてお過ごしください。(❁ᴗ͈ˬᴗ͈))


                                                                天音 翔
 
 
 
 

 
 
 
 
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