冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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リーズナの限界

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「おい、いくら俺達よりも力があっても一人は無謀だ!」

「一人じゃない、カイウスが俺の傍にいる」

「何言って…」

リーズナは言葉を止めて、なにか考えていた。
その間にも神の化身である二人は攻撃を仕掛けてきていた。

俺はリーズナとハイドレイを抱えて、後ろに下がった。
まさか身長が俺よりも高い自分が抱えられると思っていなかったのか、ハイドレイは呆然としていた。
これは俺が力持ちとかではなくて、カイウスの力なんだけどね。

俺は地面を思いっきり殴りつけて、地面が揺れた。
俺も戦おうと二人のところに行こうとしたら、リーズナに肩を掴まれた。
リーズナは険しい顔をして、静かに言った。

「俺も戦う」

「ダメだよ!二人は酷い怪我なんだから、戦える俺が行かないと」

「その力はカイなんだろ、だったら俺もお前の中に入れるかもしれない」

「時間はない」と言ったリーズナは俺の手を掴んだ。

一度聞いた事があったが、リーズナにダメだと言われた。
俺はカイウスじゃないから、カイウスのようにリーズナと一緒に戦う事は出来ない。

でも、今なら俺の中にカイウスがいる…リーズナの力を借りる事が出来るかもしれない。
魔力を渡す事が出来なかったリーズナの限界を俺に託そうとしてくれている。

リーズナの手を握って頷くと、小さく笑っていた。
その顔は俺に向けているというより、カイウスに向けているようだった。

「俺の手に集中して、力を抜け」

「うん…」

「お前の中にいるカイウスを前に出すイメージをしろ」

俺の中にいるカイウスに俺の全てを託すようなイメージ。
大きく吸って、吐いてリーズナを受け入れた。

ハイドレイが「来た!」と俺達に伝えていた。

俺の目の前にはリーズナがいなくなっていて、体が温かくなっているような気がした。

温かくて、背中に羽根が生えたように身軽だ。
マシンガンが俺達に迫っていて、指で大きな輪を描いた。

輪の中心が発行してマシンガンを防いだ。
カイウスが俺を守ってくれた力が使えた。
これでハイドレイは守れる筈だ。

「また訳の分からない力を使いやがって!!」

赤髪の男は俺達に向かって槍を振り回してきた。
その後ろからマシンガンを連射してきて、赤髪の男は弾を避けながらこちらに向かってくる。

全速力で俺も二人に向かって走って、足に力を入れて蹴り上げた。
普通のジャンプよりも高く上がり、まるで猫のようだった。
赤髪の男を通り過ぎて、包帯の男に向かって攻撃を仕掛ける。

まさか後ろにいる方を先に攻撃するとは思ってなかったのか、包帯の男は驚いたがすぐにマシンガンを上に向かって構える。
今の俺は速さが並外れていて、その一瞬の油断も隙だらけに見える。

マシンガンに向けて拳を叩きつけると、バラバラに粉砕して爆発した。
俺と包帯の男は爆発に巻き込まれたが、俺はカイウスの力のおかげで助かった。

包帯の男は、全身血だらけで倒れていても立ち上がろうとしていた。
もう戦う気力もないのに、なんでそこまでして戦おうとするんだ?
……神の化身だからなのか?俺には分からない。

後ろから物凄い殺気を感じて、横に体をずらすと赤髪の男が槍を振り下ろしていた。

「お前は俺が殺す、ライム・ローベルト!!」

赤髪の男は立ち上がろうとしている包帯の男を見ていた。
小さな声で「鷹の力を吸収して生き延びたのに、やっぱりダメか」と言っていた。

そういえば、あの鷹が何処にも見当たらない。
もしかしてリーズナのように戦っていたのか?

見ていないからどうだったか分からないが、赤髪の男は包帯の男と違って物理的なダメージは見た感じなさそうだ。
それに、俺への殺意は半端なものではない。

赤髪の男に向かって殴り掛かるが、槍を振り下ろしてきて拳とぶつかる。

片手で槍を持っていて、もう片方の手は動いていた。
もう片方の手で別の攻撃をするんじゃないかと思って、槍を弾いて距離を取った。

グッと手に力を込めていたが、赤髪の男の動いていた手は俺に向けられる事はなかった。
その手は包帯の男に向けられていた。

「もう戦えないお前は、いらないよ」

「まっ…」

包帯の男がなにか言う前に、その姿は光に満ちていて消えた。
代わりに赤髪の男の体が光り輝いていた。

不気味な笑みを向けていて、その光は槍までも届いた。

それは一瞬の事で、すぐに異変に気付いた。
頭を抱えて苦しそうにもがいていて、その異常さに自然と後ろに下がる。

頭からは大きなツノが二本生えていて、背中には鷹のような羽根が生えていた。

肌も緑色に変色していて、その顔は鋭い牙を何本も生やした醜い怪物に変わっていた。

ローズの時のような化け物の姿。
けど、ローズと明らかに違うところがある。

この怪物は元々の力が神のもの、それが二つ合わさったらローズの倍は強くなる。
聞き取れないほどの声を上げて、大きな羽根を動かして上に飛んだ。

怪物は、さっき俺がしたように俺に向かって一直線に向かってきた。
急いで輪を描き、結界を張り受け止めた。

結界が悲鳴を上げるように、ミシミシと音が聞こえる。
これ以上は長く持たない、結界に頼らない方がいい。
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