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真っ赤な世界
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カイウスから出た黒いなにかは俺を貫いて神によって吹き飛ばされた。
地面に叩きつけられて、口から血を吐き出した。
痛いという感情を通り越して、寒くなってきた。
目の前も霞んでいく。
カイウスの名を呼ぶ事も出来ず、口からはゴボゴボと血だけ吐き出される。
俺が行かなきゃいけないのに、体が動かない。
カイウスを見たいのに、目の前が眩しすぎて見えない。
目の前に足が見えるけど、足音も聞こえなかった。
しゃがんで顔を持ち上げられると神の顔が微かだが見えた。
かなり至近距離で顔を見ているから見えるだけだろう。
虚な姿を見て、鼻で笑っていた。
「さぁ、カイウスに力を渡してもらおうか」
「ぐぁっ!!」
刺された傷口に指をねじ込まれて激痛に悲鳴を上げた。
体が二つに裂けてしまいそうな恐怖に支配される。
神は内側から殺そうとしているのか、傷口が温かくなり…だんだんと熱くなる。
「さようなら」と神が言ったような気がして、俺の視界は真っ白に消えた。
不思議な感覚だった、まるでカイウスに包まれているようだ。
俺の意識と共に、カイウスの気配が消えた。
体が浮いている感じがした、揺れている気もした。
運ばれているような、そんな不思議な感じ。
地面に体が転がされて痛かったが、さっきのと比べると平気だった。
俺は、死んだのか?嫌だ、カイウスを置いて死にたくない。
まだ、カイウスとやり残した事がいっぱいあるのに…
「ちょっと乱暴じゃ…」
「仕方ねぇだろ、この状況じゃ」
話し声が聞こえる、聞き覚えがある声だ。
行かなきゃ、カイウスのところに…
目を開けると、俺の顔を覗く二人の顔があった。
状況が理解出来ずに固まった。
すぐ近くでマシンガンの派手な音が聞こえて、木が倒れていた。
俺が寝ているところも、木が多くあり俺達の姿を隠していた。
俺を見ていた一人であるリーズナは舌打ちしていた。
リーズナとハイドレイは俺を抱えて、移動していた。
近くに神がいるのか?カイウス、カイウスを助けなきゃ…
二人から離れて、音のした方に行こうとしたらリーズナに肩を掴まれて止められた。
「何やってんだ!」
「カイウスを助けにいかないと、あそこにカイウスが…」
「はぁ?カイはあそこにはいねぇよ!」
「…え?」
「あそこにいるのは神の化身の二人だ」
リーズナの言葉に、行こうとしていた足を止めた。
カイウスがいない?でも…じゃあカイウスは?
リーズナとハイドレイの姿を見て、今まで戦ってきた事が分かる。
ハイドレイは上着を腰にキツく巻いているが、上着から血が滲み出ている。
俺のように腹から血を出していて、止血しているんだろう。
応急措置をしているが、あまり長くは立っていられないほどに足元がフラフラしている。
リーズナも人の姿をしているが、肩が真っ赤に汚れていて、髪もボサボサで息が荒くなっている。
「二人共、早く手当てしないと」
「手当てって、一番ヤバいのはライムの方だろ」
ハイドレイに言われて、言っている意味が分からず自分の姿を見た。
服の半分以上が血で真っ赤に染まっていた。
でも、不思議と痛みはない。
シャツを捲ると、そこには傷一つとしてなかった。
貫かれた筈で、血だって吐き出した。
夢ではないのは服の血の染みを見れば分かる。
自分の事だけど、なにが起きているのか分からない。
そもそも、神とカイウスのところにいたのにここは俺がいたところと真逆の場所だ。
生きている事さえも奇跡なのに、状況が理解出来ない。
「俺、なんでここにいるの?」
「それはこっちのセリフだ、いきなり俺達の目の前に魔法陣が現れてお前がいたんだよ……神がなんか仕掛けてきたかと思ってビビったんだからな!」
「…ご、ごめん」
リーズナは俺を軽く睨んだが、安堵したため息を吐いた。
魔法陣が、俺を助けてくれたのか…魔法…
ハイドレイの傷口もリーズナの傷口も安静にしていれば大丈夫だと言っていた。
それなら良かった、でももう無茶はしてほしくない。
その間にも、木はどんどん倒されていき、時間は残されていなかった。
地面に叩きつけられて、口から血を吐き出した。
痛いという感情を通り越して、寒くなってきた。
目の前も霞んでいく。
カイウスの名を呼ぶ事も出来ず、口からはゴボゴボと血だけ吐き出される。
俺が行かなきゃいけないのに、体が動かない。
カイウスを見たいのに、目の前が眩しすぎて見えない。
目の前に足が見えるけど、足音も聞こえなかった。
しゃがんで顔を持ち上げられると神の顔が微かだが見えた。
かなり至近距離で顔を見ているから見えるだけだろう。
虚な姿を見て、鼻で笑っていた。
「さぁ、カイウスに力を渡してもらおうか」
「ぐぁっ!!」
刺された傷口に指をねじ込まれて激痛に悲鳴を上げた。
体が二つに裂けてしまいそうな恐怖に支配される。
神は内側から殺そうとしているのか、傷口が温かくなり…だんだんと熱くなる。
「さようなら」と神が言ったような気がして、俺の視界は真っ白に消えた。
不思議な感覚だった、まるでカイウスに包まれているようだ。
俺の意識と共に、カイウスの気配が消えた。
体が浮いている感じがした、揺れている気もした。
運ばれているような、そんな不思議な感じ。
地面に体が転がされて痛かったが、さっきのと比べると平気だった。
俺は、死んだのか?嫌だ、カイウスを置いて死にたくない。
まだ、カイウスとやり残した事がいっぱいあるのに…
「ちょっと乱暴じゃ…」
「仕方ねぇだろ、この状況じゃ」
話し声が聞こえる、聞き覚えがある声だ。
行かなきゃ、カイウスのところに…
目を開けると、俺の顔を覗く二人の顔があった。
状況が理解出来ずに固まった。
すぐ近くでマシンガンの派手な音が聞こえて、木が倒れていた。
俺が寝ているところも、木が多くあり俺達の姿を隠していた。
俺を見ていた一人であるリーズナは舌打ちしていた。
リーズナとハイドレイは俺を抱えて、移動していた。
近くに神がいるのか?カイウス、カイウスを助けなきゃ…
二人から離れて、音のした方に行こうとしたらリーズナに肩を掴まれて止められた。
「何やってんだ!」
「カイウスを助けにいかないと、あそこにカイウスが…」
「はぁ?カイはあそこにはいねぇよ!」
「…え?」
「あそこにいるのは神の化身の二人だ」
リーズナの言葉に、行こうとしていた足を止めた。
カイウスがいない?でも…じゃあカイウスは?
リーズナとハイドレイの姿を見て、今まで戦ってきた事が分かる。
ハイドレイは上着を腰にキツく巻いているが、上着から血が滲み出ている。
俺のように腹から血を出していて、止血しているんだろう。
応急措置をしているが、あまり長くは立っていられないほどに足元がフラフラしている。
リーズナも人の姿をしているが、肩が真っ赤に汚れていて、髪もボサボサで息が荒くなっている。
「二人共、早く手当てしないと」
「手当てって、一番ヤバいのはライムの方だろ」
ハイドレイに言われて、言っている意味が分からず自分の姿を見た。
服の半分以上が血で真っ赤に染まっていた。
でも、不思議と痛みはない。
シャツを捲ると、そこには傷一つとしてなかった。
貫かれた筈で、血だって吐き出した。
夢ではないのは服の血の染みを見れば分かる。
自分の事だけど、なにが起きているのか分からない。
そもそも、神とカイウスのところにいたのにここは俺がいたところと真逆の場所だ。
生きている事さえも奇跡なのに、状況が理解出来ない。
「俺、なんでここにいるの?」
「それはこっちのセリフだ、いきなり俺達の目の前に魔法陣が現れてお前がいたんだよ……神がなんか仕掛けてきたかと思ってビビったんだからな!」
「…ご、ごめん」
リーズナは俺を軽く睨んだが、安堵したため息を吐いた。
魔法陣が、俺を助けてくれたのか…魔法…
ハイドレイの傷口もリーズナの傷口も安静にしていれば大丈夫だと言っていた。
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