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裏の話9
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この男はカイウスの中に余計なものは入れたくないのだろう。
神が求めているのは自ら生み出した力だけだ。
ライムは死んだような事を神は言っていた。
確かにライムが神を足止めしていた筈なのに、神は今ここにいる。
神を見逃すとは思えない、神がカイウスのところに行くのは目に見えている。
ライムが神に敗れたのか、それとも別の何かがあったのか。
カイウスのためにも、ライムの無事を確認したいとリーズナはカイウス達からだんだんと離れていく。
神とカイウスが合流したのなら、リーズナの作戦は失敗に終わった。
この場にいて、無理矢理カイウスを説得しても神に邪魔されてリーズナは今度こそ消滅してしまう。
怪我をしている状態で、満足に戦えるとも思えない。
それよりも、ライムに伝えなくてはいけない事がある。
リーズナが後ろに下がるのを神は気付いた
「逃げるのか?」
「……」
「逃してくれるんじゃないのか?」
「逃すとは言っていない、お前がいたら目障りな事もある…カイウスの手を煩わせるものじゃないって事だ」
神は手から黒い力を出して、リーズナに向かって投げた。
カイウスほどではない軽い力だが、それでも殺傷力はある。
大きな爆発音と地響きが周りを包み込んでいた。
大量の砂埃が舞い、視界が一気に遮られた。
それと同時に別のところでも爆発音がして、屋敷から煙が出ている。
あちこちで神の化身達が暴れているのだと分かる。
偽物の力で強くなったと勘違いしている人間なんかに負ける筈がない。
もし、いたとしたらそれはもう神の化身ではない。
生きていたとしても、神がそれを許さず消滅させる。
ライムに負けた神の化身も許せなかったが、この戦いのために人数がほしくて今まで生かしてきた。
成果を上げなくては、生かした意味がなくなる。
それなりに期待はしている、守られてばかりいたあの男を殺す事なんて、カイウスの手を煩わせる事もない。
カイウスには力を温存してもらわないといけない、この世を壊滅させるために…
「カイウス、行くぞ…早くお前の完全なる力を見てみたい」
「……」
神とカイウスはそのまま背を向けて歩いていった。
神達にとってもあまり時間がないのだろう。
体のあちこちが負傷していた猫は、あの攻撃を避ける力すらも残されていないだろう。
奇跡的に生きていたとしても虫の息で、放っておいても死ぬ。
これ以上時間を取られるわけにはいかないと判断した。
二人が向かうのはローズとライムが戦っているであろう場所だ。
神の力を与えて、神に近い存在となったローズだ。
薬という間接的なものではなく、直接与えた力だ…それにライムへの憎悪でさらに強くなっている。
負ける要素など何処にもない。
神とカイウスがいなくなって、しばらくしたら二人の影が現れた。
影の一人は周りを見渡していて、首を傾げていた。
「あれ?ここに逃げたと思ったんだけどな」
「……メシアの気配」
「あ?マジ?じゃあもう殺しちゃったかぁ」
殺伐とした空気に似つかわしくない明るい声が聞こえる。
残念そうな声を出しているが、その場から離れようとしない。
本当に死んだか確認するまでは、行く事は出来ない。
まだ神が放った力で砂埃が舞っていて気付かれてはいなかった。
それでも、あまり時間は残されていない。
風により砂埃がだんだんと薄れていった。
リーズナは自分の体の上にいる男に声を掛けた。
大人の男に乗られるのは、傷もあるからかなり重いし痛い。
「…重い」
「わ、悪い…逃げてて」
「おかげで助かったからいいけどな」
リーズナは突然誰かに横に引っ張られてバランスを崩して倒れた。
神の化身から逃げてきたハイドレイが、たまたまリーズナを見つけて助けた。
神の攻撃は避ける事が出来たが、二人共この先の事は考えていなかった。
砂埃がなくなり、木の影に隠れながら様子を伺う。
あの二人は神の化身、力のある者ならすぐに気付かれただろうが、今の空っぽのリーズナには気付かなかった。
神より先にライムのところに行きたいが、神の化身を避けて行くとライムのところに大勢連れて行く事になる。
一番の安全は、神の化身を倒してから行く事だ。
人間と人間に近い存在の二人でどう勝てるかは分からないが、やらないといけない。
ふと視界が暗くなり、上を見上げると鷹が空を舞っていた。
リーズナはハイドレイを力いっぱい引っ張り、木の影から離れた。
間一髪で、木が粉砕されて跡形もなくなっていた。
まだあそこにいたら確実に死んでいただろう。
「鬼ごっこは終わりにしようぜ」
神の化身達が武器を構えていて、ハイドレイは剣を構えていた。
リーズナは魔力が使えない手を見つめて、握りしめた。
魔力がなくなっても元の姿に変わる事は出来る。
リーズナの周りに光が集まってきて、人の姿から獅子の姿に変わった。
そして、神の化身達に向かって爪を振り下ろした。
リオはマシンガンをリーズナに向かって放った。
全体重を足に掛けて、リオに向かって飛びかかった。
鷹が飛んできて、リーズナの体にくちばしを刺したがリーズナの攻撃はリオに届いた。
ハーネルはリーズナに気を取られていて、その隙に一気にハイドレイに詰められた。
槍と剣がぶつかる金属音がその場に響いた。
神が求めているのは自ら生み出した力だけだ。
ライムは死んだような事を神は言っていた。
確かにライムが神を足止めしていた筈なのに、神は今ここにいる。
神を見逃すとは思えない、神がカイウスのところに行くのは目に見えている。
ライムが神に敗れたのか、それとも別の何かがあったのか。
カイウスのためにも、ライムの無事を確認したいとリーズナはカイウス達からだんだんと離れていく。
神とカイウスが合流したのなら、リーズナの作戦は失敗に終わった。
この場にいて、無理矢理カイウスを説得しても神に邪魔されてリーズナは今度こそ消滅してしまう。
怪我をしている状態で、満足に戦えるとも思えない。
それよりも、ライムに伝えなくてはいけない事がある。
リーズナが後ろに下がるのを神は気付いた
「逃げるのか?」
「……」
「逃してくれるんじゃないのか?」
「逃すとは言っていない、お前がいたら目障りな事もある…カイウスの手を煩わせるものじゃないって事だ」
神は手から黒い力を出して、リーズナに向かって投げた。
カイウスほどではない軽い力だが、それでも殺傷力はある。
大きな爆発音と地響きが周りを包み込んでいた。
大量の砂埃が舞い、視界が一気に遮られた。
それと同時に別のところでも爆発音がして、屋敷から煙が出ている。
あちこちで神の化身達が暴れているのだと分かる。
偽物の力で強くなったと勘違いしている人間なんかに負ける筈がない。
もし、いたとしたらそれはもう神の化身ではない。
生きていたとしても、神がそれを許さず消滅させる。
ライムに負けた神の化身も許せなかったが、この戦いのために人数がほしくて今まで生かしてきた。
成果を上げなくては、生かした意味がなくなる。
それなりに期待はしている、守られてばかりいたあの男を殺す事なんて、カイウスの手を煩わせる事もない。
カイウスには力を温存してもらわないといけない、この世を壊滅させるために…
「カイウス、行くぞ…早くお前の完全なる力を見てみたい」
「……」
神とカイウスはそのまま背を向けて歩いていった。
神達にとってもあまり時間がないのだろう。
体のあちこちが負傷していた猫は、あの攻撃を避ける力すらも残されていないだろう。
奇跡的に生きていたとしても虫の息で、放っておいても死ぬ。
これ以上時間を取られるわけにはいかないと判断した。
二人が向かうのはローズとライムが戦っているであろう場所だ。
神の力を与えて、神に近い存在となったローズだ。
薬という間接的なものではなく、直接与えた力だ…それにライムへの憎悪でさらに強くなっている。
負ける要素など何処にもない。
神とカイウスがいなくなって、しばらくしたら二人の影が現れた。
影の一人は周りを見渡していて、首を傾げていた。
「あれ?ここに逃げたと思ったんだけどな」
「……メシアの気配」
「あ?マジ?じゃあもう殺しちゃったかぁ」
殺伐とした空気に似つかわしくない明るい声が聞こえる。
残念そうな声を出しているが、その場から離れようとしない。
本当に死んだか確認するまでは、行く事は出来ない。
まだ神が放った力で砂埃が舞っていて気付かれてはいなかった。
それでも、あまり時間は残されていない。
風により砂埃がだんだんと薄れていった。
リーズナは自分の体の上にいる男に声を掛けた。
大人の男に乗られるのは、傷もあるからかなり重いし痛い。
「…重い」
「わ、悪い…逃げてて」
「おかげで助かったからいいけどな」
リーズナは突然誰かに横に引っ張られてバランスを崩して倒れた。
神の化身から逃げてきたハイドレイが、たまたまリーズナを見つけて助けた。
神の攻撃は避ける事が出来たが、二人共この先の事は考えていなかった。
砂埃がなくなり、木の影に隠れながら様子を伺う。
あの二人は神の化身、力のある者ならすぐに気付かれただろうが、今の空っぽのリーズナには気付かなかった。
神より先にライムのところに行きたいが、神の化身を避けて行くとライムのところに大勢連れて行く事になる。
一番の安全は、神の化身を倒してから行く事だ。
人間と人間に近い存在の二人でどう勝てるかは分からないが、やらないといけない。
ふと視界が暗くなり、上を見上げると鷹が空を舞っていた。
リーズナはハイドレイを力いっぱい引っ張り、木の影から離れた。
間一髪で、木が粉砕されて跡形もなくなっていた。
まだあそこにいたら確実に死んでいただろう。
「鬼ごっこは終わりにしようぜ」
神の化身達が武器を構えていて、ハイドレイは剣を構えていた。
リーズナは魔力が使えない手を見つめて、握りしめた。
魔力がなくなっても元の姿に変わる事は出来る。
リーズナの周りに光が集まってきて、人の姿から獅子の姿に変わった。
そして、神の化身達に向かって爪を振り下ろした。
リオはマシンガンをリーズナに向かって放った。
全体重を足に掛けて、リオに向かって飛びかかった。
鷹が飛んできて、リーズナの体にくちばしを刺したがリーズナの攻撃はリオに届いた。
ハーネルはリーズナに気を取られていて、その隙に一気にハイドレイに詰められた。
槍と剣がぶつかる金属音がその場に響いた。
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