冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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裏の話5

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遡る事、数時間前。

ローベルト卿が話している中、少し離れたところで集まっていた。
ライム達は事前に決めていた作戦を確認し合っていて、一人だけ別の方を向いていた。

ステージに立ち、なにかを言っているのを眺めていた。

それに気付いたライムは話しかけてきた。

「どうかしたの?」

「……別に、何でもない」

この作戦が人生の全てになる、今は集中しないといけない。
作戦の確認が終わり、怪しまれないように皆離れてローベルト卿の話を聞いていた。

正直、作戦の事で頭がいっぱいで話なんて聞いていられなかった。

神殺しの作戦はすぐに決行されて、その他大勢と共に移動した。

兵士の半分以上は捨て駒として使われる。
ライムやローベルト卿の部下や家族以外は皆捨て駒だ。

しかし、ローベルト卿ではなくライムの作戦を決行するために捨て駒の群れから離れようとした。
一人だけ別の行動をしていると、目立つのは当然と言える。

兵士の一人は不審そうな顔をして、声を掛けてきた。

「どちらに?」

「トイレ」

そう一言だけ伝えると、群れから離れた。
ライムほどに警戒されていないから、止められる事はなかった。

トイレと伝えているから、トイレに入っても不自然ではない。
トイレに入る事も作戦の一つで、決めていた場所に入った。

扉を閉めたら、ライムが入れなくなるから開けていて自分は立って待つだけでいい。
知らない人が入ってきたら一気に怪しくなるが、今は神との戦いにピリピリしている。
トイレに行くなんて呑気な事をするのは自分達くらいだろう。

それでも、絶対にトイレに誰も入って来ないとは限らない。
早めにライムに来てもらいたい、時の流れが遅く感じてイラついていた。

怒りに任せて失敗したら全て台無しになる。
ゆっくりと深呼吸して、愛用している剣を握った。

どのくらい経ったのか、トイレの外が騒がしくなってきた。
やっと来たのか、とライムの到着を待った。

すぐに滑り込むようにしてライムが入ってきた。

作戦に顔を殴られるというものがあった。
だから、ライムの顔がボロボロなのは分かっている。
思ったよりやられているのには驚いたが…

それに両腕も拘束されていて、面倒な事になっていた。

ライムの身代わりにジークと一緒に行く事が目的だ。
そのためにライムは顔を殴らせて、顔を隠す理由を作った。

まずはライムの紐を解こうと力を入れた。
かなりキツく縛っていて、剣で切り落としたいほどイライラする。

ライムはずっと付けている耳飾りを外すように言って、その耳飾りを渡すと硬い縄になにかしようとしていた。

動きがもどかしくて、ライムから耳飾りを奪った。
注意として、中の糸は触らないでと言っていたから注意する。

縄に細い部分を差し込んでこじ開けると隙間が出来た。
細い耳飾りだけど、意外と頑丈なんだと感心した。

縄を外して、ローブを渡してきて自分の顔がローブで隠れる。
両手を出すとライムが縄でキツく縛り、格好を交換した。

遠くから見たらきっと分からないだろうが、身長が違うから近くで見られるとバレる。

騒ぎになれば紛れられるのにと、ギリギリまで待ってみた。

それはすぐに訪れて、床が大きく揺れた。
今しかないと、トイレから飛び出すとジークも早く戻らないとと焦ってか、縄を引っ張られた。

そのままトイレから離れて、目的の場所まで強制的に連れて行ってくれる。
身長には気付いていないらしい、ジークよりかは身長は低いから対して気にはしないんだろう。

もう一人兵士がいるのに驚いたが、すぐに自分の持ち場に戻ったから身長の違和感までは見てはいなかった。
それほどまでに、全体的にピリついているという事だ。

死ぬか生きるかだから、ライムに構っていられないのはその通りだ。
こちらとしても、その方がいろいろ好都合だ。

始まる前から終わったら、全てが無駄になる。

ダンスホールに戻ってきて、ジークはステージまで引っ張り縄を持った。

両手が塞がったままだと戦うのは難しい。
今から外してくれるんだと思ったが、ジークはピタリと手を止めた。

「お前、誰だ?」

「……」

「ライム・ローベルトじゃない」
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