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戦場

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かつて俺の家であった場所は神と戦うための戦場になった。

外壁には触れると怪我をするだろう、棘がびっしりと突き出ていた。
神を逃がさないために、密かにローベルト卿が作り上げていたものの一つだろう。

神なんだから触れずに壊せると思うけど、むしろ人間側が不利になっていないか?

ローベルト卿は神の仲間だから戦った事がない。
神が、その仲間がどんな攻撃をするのか分かっていない。
ローベルト卿が分かっているのは神に与えられた力を使う人間だけだ。

不思議な力を手にしても、人間である事は変わりない。

空を飛ぶわけでもなく、使いすぎると体が暴走する。

そんな人間と完璧な力を持つ神を一緒にするのはどうかと思う。

でも、これが俺達の…人間の限界でもある。

神に対抗するには同じ力が必要だが、力を貰ってもただの人間にそんな力はない。
せめて見た目だけで追い込めればいいのだろう。

神が人間から逃げるなんて有り得ないだろうな、むしろ人間の逃げ道を塞げて喜んでいるのかも…

バリケードを一生懸命運んでいる兵士達は、さっきはローベルト卿に賛同していたが今は不安そうな顔をしている。
中には薬を貰って力が使える者もいるんだろうが、死にたくないに決まってる。

人間は神には勝てない、だからローベルト卿は俺を切り札だと言ったんだ。
人間とは違う不思議な力を持っているから…

俺だって一人で神に戦える力なんてあるわけがない。
あったらカイウスを神に奪われるような事になってない。

俺が切り札になるような事はないだろう。

それに、ローベルト卿には協力する気はない。
俺は自分の目的だけをするつもりだ。

それに、もし神がローベルト卿の屋敷から出てしまったらこの国…いや、この世界は最悪な結末を迎える。

ここで止めなければ、カイウスに見せてあげられなくなる。

ユリウスとハイドレイは他の兵士と共に前線に立つ事になっている。
神が来るであろう城の中にある扉の前で待機している。
俺は戦争が始まる前まで屋敷を把握しろと言われているから、見て回っている。

後ろからジークが無言で付いて来る、今から戦いだから俺になにかするつもりはないみたいで良かった。
いや、状況的に全くよくはないんだよな。

俺とジークはダンスホールで待機する事になっている。
広くて戦いやすいからだとローベルト卿は言っていた。

最初から切り札に戦わせるつもりなのが分かる。
それって切り札と言うのか分からないが、期待されているのは切り札なのかな。

こんな時しか父は俺に期待しない、今に始まった事ではないけど…

ローベルト卿に言われなくても、俺は神を止める気でいる。
殺せなくても俺の最大限の力を使って止める。

でも俺はダンスホールから抜け出す事を考えている。

あそこにいたら、カイウスを助ける事が出来ない。
追い詰められて殺される未来しか見えない。

カイウスには時間がない、元のカイウスが消滅する前に助け出さないと…

でも、切り札の俺が変な行動をすればその場にいる誰もが怪しむ。
怪しまれない方法を探しながら、ダンスホールへと向かった。
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