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満ちた時
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翌朝、俺の部屋にジークがノックもなしにやって来た。
なにか言おうとしたら、その前にジークが口を開いた。
その言葉に驚いて、口では言ってはいないが行きたくなさそうな顔をしたらジークが動いた。
無理矢理にでも俺を連れて行くつもりらしい。
ジークに引きずられるくらいなら自分で動く。
ジークの横を通り過ぎて、部屋を出ようとした。
しかし、すぐにジークに腕を掴まれた。
「行くから離せよ!」
「……」
「…っ!?」
腕を掴む手に力を込められた。
もしかしてローベルト卿を裏切る作戦を気付かれたのか?
ジークは何も言わず、壁に俺を押さえつけていた。
早く行かなければいけないんじゃないのか?こんな事してる暇はない。
それなのにジークは離そうとしない。
手に力を込めると、指輪が俺に力を貸してくれる。
俺の腕を掴むジークの手首を掴んだ。
力を込めているのに離す気はない。
普段なら痛みがあり、俺から手を離す筈だ。
もしかしてまた痛みを感じない体になっているのか?
その時は必ず薬を飲んでいる時だ。
それは、今日薬を飲むような事をするという事だ。
呼び出しと無関係だとは思えないが、まさか……今日…
「こんなところで何してるんだ?」
「……」
「…ユリウスさま」
「ローベルト卿が呼んでるんだろ、行くぞ」
ユリウスがそう言うと、ローベルト卿の事を思い出したのか俺から離れた。
ジークは早く来いと目で訴えていて、俺がちゃんと来るように近くで待っていた。
ユリウスと一緒に歩き出すと、後ろからジークが付いてきた。
ユリウスも何の用か分からないが、ローベルト卿が皆を集めているとローベルト家にいる騎士に言われたそうだ。
全員を集める事は今までなかった事だ。
考えられるとしたら、やっぱり神との戦争を始めるためなんだろうな。
「全然準備してないけど、どうする?」
「俺は作戦を始める準備は出来てるよ、そのまま神を誘き寄せる」
「…俺もローベルト卿と戦う準備なら出来てる、まぁ…変わらないか」
ユリウスと小声でそう言っていたら、大きな扉の前で足を止めた。
ここはローベルト卿の部屋ではない。
幼少期の頃から何年も屋敷にいたが、一度も使っているのを見たことがない。
俺がいないところで使われていたんだろうけど、俺とは無縁だと思っていたダンスホールへの扉だ。
確かにここならローベルト家の人達を全員呼んでも余るだろう。
扉を開くと、大勢の人間が既に集まっていた。
その中にハイドレイがいて、俺を見つけるなり手を振っていた。
隣にいるユリウスを見て、すぐに手を引っ込めてしまったがハイドレイに近付く。
「ライム、大丈夫なのか?あの二人…」
「え?あー、ユリウス様は大丈夫だよ」
「そ、そうか?」
ハイドレイはユリウスをチラッと見つめて、ユリウスに睨まれてすぐに目を逸らしていた。
その時、広いダンスホールに大きな歓声が響いた。
そちらを見ると、ダンスホールの奥にあるステージに誰かが立っていた。
遠くからでも分かる、ローベルト卿と横には守るように兵士が立っていた。
ジークもステージの方に向かった。
ローベルト卿は挨拶もしないで、すぐに本題を話し出した。
「時は来た、我らローベルト家が栄光を掴む輝かしい日となる…我らに勝利を!!」
周りがローベルト卿に向かって歓声を上げていた。
俺達三人だけ何も声を上げていないから、浮いていた。
ローベルト卿は周りを見渡していた。
神への反逆の説明をしていた。
重要な人物だけに役割があり、後の人達は鉄砲玉にするつもりらしい。
人の命を軽く見ているローベルト卿に腹が立つが、それを変なものだと思っていないローベルト家の人達が異常に思えた。
「我らの切り札はライム、お前だ」
突然名前を言われて、驚いた。
周りの人達も後ろを振り返り、俺の方を見ていた。
ローベルト卿は指輪の力を求めているのは分かっていた。
でも、俺の敵は神だけどローベルト卿の野望に手を貸すつもりはない。
ジークは俺を守る役割を任せていた。
これで、俺は切り札だから前線に行く事はなくなった。
それと同時に、自由も奪われた。
ユリウスとハイドレイは当然のように鉄砲玉として俺とは離れる事になる。
「大丈夫なのか?ライム」
「俺は何とかするよ、俺より二人の方が危ないところに行くんだ…気を付けて」
「お前に心配される事はねぇよ」
心配そうにするハイドレイと対照的にユリウスの顔は笑っていた。
顔は笑っているのに、ローベルト卿を見る目は怒りに満ちていた。
なにか言おうとしたら、その前にジークが口を開いた。
その言葉に驚いて、口では言ってはいないが行きたくなさそうな顔をしたらジークが動いた。
無理矢理にでも俺を連れて行くつもりらしい。
ジークに引きずられるくらいなら自分で動く。
ジークの横を通り過ぎて、部屋を出ようとした。
しかし、すぐにジークに腕を掴まれた。
「行くから離せよ!」
「……」
「…っ!?」
腕を掴む手に力を込められた。
もしかしてローベルト卿を裏切る作戦を気付かれたのか?
ジークは何も言わず、壁に俺を押さえつけていた。
早く行かなければいけないんじゃないのか?こんな事してる暇はない。
それなのにジークは離そうとしない。
手に力を込めると、指輪が俺に力を貸してくれる。
俺の腕を掴むジークの手首を掴んだ。
力を込めているのに離す気はない。
普段なら痛みがあり、俺から手を離す筈だ。
もしかしてまた痛みを感じない体になっているのか?
その時は必ず薬を飲んでいる時だ。
それは、今日薬を飲むような事をするという事だ。
呼び出しと無関係だとは思えないが、まさか……今日…
「こんなところで何してるんだ?」
「……」
「…ユリウスさま」
「ローベルト卿が呼んでるんだろ、行くぞ」
ユリウスがそう言うと、ローベルト卿の事を思い出したのか俺から離れた。
ジークは早く来いと目で訴えていて、俺がちゃんと来るように近くで待っていた。
ユリウスと一緒に歩き出すと、後ろからジークが付いてきた。
ユリウスも何の用か分からないが、ローベルト卿が皆を集めているとローベルト家にいる騎士に言われたそうだ。
全員を集める事は今までなかった事だ。
考えられるとしたら、やっぱり神との戦争を始めるためなんだろうな。
「全然準備してないけど、どうする?」
「俺は作戦を始める準備は出来てるよ、そのまま神を誘き寄せる」
「…俺もローベルト卿と戦う準備なら出来てる、まぁ…変わらないか」
ユリウスと小声でそう言っていたら、大きな扉の前で足を止めた。
ここはローベルト卿の部屋ではない。
幼少期の頃から何年も屋敷にいたが、一度も使っているのを見たことがない。
俺がいないところで使われていたんだろうけど、俺とは無縁だと思っていたダンスホールへの扉だ。
確かにここならローベルト家の人達を全員呼んでも余るだろう。
扉を開くと、大勢の人間が既に集まっていた。
その中にハイドレイがいて、俺を見つけるなり手を振っていた。
隣にいるユリウスを見て、すぐに手を引っ込めてしまったがハイドレイに近付く。
「ライム、大丈夫なのか?あの二人…」
「え?あー、ユリウス様は大丈夫だよ」
「そ、そうか?」
ハイドレイはユリウスをチラッと見つめて、ユリウスに睨まれてすぐに目を逸らしていた。
その時、広いダンスホールに大きな歓声が響いた。
そちらを見ると、ダンスホールの奥にあるステージに誰かが立っていた。
遠くからでも分かる、ローベルト卿と横には守るように兵士が立っていた。
ジークもステージの方に向かった。
ローベルト卿は挨拶もしないで、すぐに本題を話し出した。
「時は来た、我らローベルト家が栄光を掴む輝かしい日となる…我らに勝利を!!」
周りがローベルト卿に向かって歓声を上げていた。
俺達三人だけ何も声を上げていないから、浮いていた。
ローベルト卿は周りを見渡していた。
神への反逆の説明をしていた。
重要な人物だけに役割があり、後の人達は鉄砲玉にするつもりらしい。
人の命を軽く見ているローベルト卿に腹が立つが、それを変なものだと思っていないローベルト家の人達が異常に思えた。
「我らの切り札はライム、お前だ」
突然名前を言われて、驚いた。
周りの人達も後ろを振り返り、俺の方を見ていた。
ローベルト卿は指輪の力を求めているのは分かっていた。
でも、俺の敵は神だけどローベルト卿の野望に手を貸すつもりはない。
ジークは俺を守る役割を任せていた。
これで、俺は切り札だから前線に行く事はなくなった。
それと同時に、自由も奪われた。
ユリウスとハイドレイは当然のように鉄砲玉として俺とは離れる事になる。
「大丈夫なのか?ライム」
「俺は何とかするよ、俺より二人の方が危ないところに行くんだ…気を付けて」
「お前に心配される事はねぇよ」
心配そうにするハイドレイと対照的にユリウスの顔は笑っていた。
顔は笑っているのに、ローベルト卿を見る目は怒りに満ちていた。
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