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分からない相手

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「リーズナ、俺は変わってないよ…何も…」

「そうか」

「お前もカイウスを知ってるのか?」

「……まぁ、人並みにはな」

ユリウスはリーズナを見て「ふぅん」と言って、壁に寄りかかった。

カイウスを知っている人がいても不思議ではないからユリウスも特に気にしていない。
俺は指輪の仕上げに、磨いて指輪らしく整える。

リーズナが覗き込んできたからカイウスにあげる指輪だと見せた。
歪なカタチだけど、いろんな角度から見つめていた。

「カイウス、受け取ってくれるかな」

「…俺はあのカイの気持ちは分からない、でも同じカイだから大丈夫だろ」

リーズナに指輪を渡されて、両手で包み込む。
うん、きっと大丈夫だ……カタチは歪だけど、カイウスと心が繋がっていれば…

指輪が完成して、なくさないように手に握って持つ。

リーズナに今はどのくらいの時間かと聞いたら、屋敷に到着したらもう夜遅かったらしい。
それなら、家に帰る時にはいい時間になってるだろう。

今日は約束してないけど、カイウス…いるかな。

「リーズナ、早速渡してくるよ」

「そうか、じゃあローベルト家に帰るまで護衛してやる」

「ありがとう、リーズナ」

リーズナと目を合わせて頷いて、ユリウスに「カイウスに届けてくるから、ユリウス様はどうする?」と聞いた。

付いてくるか、付いてこないのかはユリウスが決める事だ。
仲間になる事は断られてしまったからな。

ユリウスは、ため息を吐いて自分もローベルト家に用があると言っていた。
行く道は一緒だと、ユリウスとリーズナと三人でローベルト家の屋敷に戻った。
一日くらいしか経ってないのに、新鮮な外の空気を堪能した。

ユリウスとリーズナはお互い言いたい事がありそうだが、チラチラ見るだけで何も言わなかった。

「あ、先に着替えて来ていい?」

このままの女装姿でカイウスには会いたくない。
何人かに変態扱いされた服を今すぐにでも脱ぎたい。

門の前に来て、夜中に帰ってきたユリウスと俺を見て不審そうに見ていた。
リーズナは怪しまれないように猫の姿に戻り、俺のローブの中にいた。

ユリウスは面倒そうにため息を吐いて、門番になにか渡していてあっさり通してくれた。
騒ぎにならなくて良かったけど、もしかしてお金を払ったんじゃないかと心配になった。

「ユリウス様、いくら払ったの?俺が仕事見つけてなるべく早く返すから」

「別に必要ねぇよ、もういらないものだからな」

「…そうだったの?」

「そんな事より、どうやって今のカイウスに会うつもりなんだよ」

「それは、秘密…かな」

さすがにあの場所の事は話せなかった。
ユリウスを信じていないんじゃなくて、お弁当を作るのを手伝ってくれたハイドレイにも教えていない。
俺とカイウス、二人の秘密の場所にしたかったんだ。
リーズナは知ってるんだけどね。

落ち着いたら、ユリウスにも全て話すつもりだ。

ユリウスは「別に聞きたくはねぇけどな」と俺から目線を外してしまった。
そんなユリウスの肩にローブから出てきたリーズナが乗っかった。

「おい!降りろ!」

『さっさと着替えてこい』

「うん、行ってくるね」

ユリウスとリーズナに手を振って、歩き出した。






※裏の話

ライムが屋敷に入っていき、ユリウスとリーズナだけが残された。
こんなところにいても仕方ないから、屋敷の中に入れば良いんだけど何となく外にいた。

ユリウスはリーズナを怪しい人物のように見つめていた。
門に入る前、確かに人間が猫に変わった…カイウスと同じ人外なのかと思った。

リーズナもユリウスの性格は十分に分かっていたのに、何故ライムといるのか不思議だった。
そもそも仲がいいところなんて見ていないからユリウスはなにか企んでいそうとまで考えていた。

猫の姿はいろいろと話しづらいから、ユリウスの肩から飛び降りて再び大人の人間に姿を変えた。

「おっ、お前っ!それっ!」

「騒ぐな人間、寝ている奴もいるんだぞ」

意外と常識的な事を言って、ユリウスは複雑な顔をしていた。
リーズナは別に争うつもりはない、カイウスとライムに手を出さなければそれでいい。

リーズナもユリウスが精霊の薬を飲んでいると思っていたが、さっきの門番とのやりとりを見て分からなくなっていた。

「あの門番に薬を渡したのはなんでだ?お前のじゃないのか?」

「………お前には関係ねぇだろ、猫男」
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