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さようなら
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俺は一度、カイウスの中に入ったらもう一人のカイウスがいた。
あれは現実ではなく、カイウスの精神世界だった。
精神世界だけどカイウスの力が強くて、触れる事が出来た。
ここもきっとそうだ。
俺は無意識でカイウスの精神世界に迷い込んでいたんだ。
それでも、カイウスは消えずにここにいる事が嬉しかった。
精神世界ならもう目が覚めなくても構わないと思うほどに…
「カイウスは人格が変わってもずっと意識あるの?」
「あぁ、ライムが一生懸命になってくれていた事も覚えてるよ…直接は動けなかったからごめん」
カイウスが謝る事じゃないよと頭を横に振った。
俺は俺の意思でここにいるんだ、カイウスにずっと守られているわけにはいかない。
俺がカイウスを守るんだ、大切な人を守れる力はあると思っている。
カイウスにとって俺がまだ不安で頼りないだろうけど、いつかカイウスが認めてくれるほどの頼れる男になるんだ。
だから俺は神なんかにカイウスは渡さない!
だから「俺が嫌いじゃないのに離れるってちゃんと納得出来る理由を教えてほしい、隠し事されると寂しい」とカイウスに言った。
カイウスはしばらく考えてから口を開いた。
「もうすぐこの人格も魔力に呑まれて消滅する」
「そんな、助ける方法はないの!?」
「……ない、これは止められないんだ」
カイウスが最後に一目でも俺に会いたいと思ってくれたからこの場所に来れたんだ。
最後なんて、そんなの嫌だ…行かないでよ。
カイウスが眠った時のように、またなにか方法があるかもしれない。
そうだ、もう一度過去に戻ってカイウスを助ければ…
いろいろ考えて、カイウスに伝えてもカイウスは何も言わず俺を抱きしめた。
なんで、なんでカイウスはそんなに落ち着いてるの?
人格が消滅するって事は死ぬ事と同じなのに…
「ライム、落ち着いて聞いてほしい」
「…ぅ…ぅ」
「メシア……神が近々人間と戦争を起こすつもりだ」
カイウスの言葉に、感情が追いついていないが必死に耳を傾ける。
神もローベルト今日と同じ事をかんがえているんだな。
だとしたら、国ごと巻き込んだ大きな戦争になるかもしれない。
カイウスも銀色のカイウスも戦争には興味はない。
でも、神が無理矢理にでも引っ張り出すかもしれない。
そうなったら面倒だけど、銀色のカイウスは参加するかもしれない。
銀色のカイウスは人間と戦争を起こしても構わないと思っているから。
カイウスは表に出てこれないから、どうする事も出来ない。
神は真っ先にローベルト家に襲撃を仕掛ける事を教えてくれた。
こそこそしていても、神には全て筒抜けなんだな。
俺もカイウスに話すと、カイウスも「やっぱりな」と言っていた。
「だったら尚更ローベルト家から離れてくれ」
「…俺とカイウスが敵同士になるから?」
「そうだ、今の俺もライムの事は気に入っている…元は同じ人間だからな……でも、いつライムに危害を加えるか分からない」
「……だから、離れてくれって言うの?」
「ごめん、でも…ライムには幸せになってほしい…俺と出来なかった事をしてくれ」
カイウスは俺のためにそう言ってくれているんだろう。
でも、それがどんなに残酷な事を言っているか分かってる?
他の人と幸せになってもカイウスはいいの?
なんで、カイウスもそんな泣きそうな顔をするの?
俺達はどんな困難も乗り越えてきたのに。
ここで終わらせて、諦めてそれでカイウスは幸せになれる?
カイウスが俺の幸せを望んでいるのと同じくらい、俺もカイウスの幸せを望んでるんだよ。
「カイウスは俺が他の人を好きになっても平気?」
「……俺はもうすぐ消えてしまう、だからライムを大切にしてくれる人なら構わない」
「本当に?」
「……………あぁ」
「そっか、分かった」
あー、ダメだな…なんでこんな時に涙が溢れて視界が歪むんだろう。
俺の初恋で、今までずっと一途に愛していたカイウスが目の前にいるのに何も見えないや。
カイウスは今、どんな顔をしているんだろう。
俺は、最後くらいは笑ってカイウスを見たい。
カイウスが俺に未練がなくなるようにしっかりしないと…
俺がずっとカイウスを好きで居続けるなんて言ったら、きっとカイウスは俺が幸せになれないって思ってる。
だから俺が他の人を好きになる事は構わないって言ったんだ。
心にもない事を言ってまで、俺の幸せを願った。
俺もカイウスに言おう、未練がないって安心させたい。
ぎこちない笑みを向けて、カイウスに伝えた。
「カイウス、今までありがとう…さようなら」
「ライム…俺もありがとう」
カイウスがそう言うと、カイウスの足元からリーズナが現れた。
そんなところにいたの?カイウスの中に出入り出来るリーズナだから居ても不思議じゃないか。
ここにいたから指輪が反応しなかったんだなと納得した。
カイウスはリーズナに合図すると俺のところまで来て、通り過ぎた。
後ろを見ると、さっきまでなかった大きな扉があった。
俺が扉を開けると、小屋の個室が広がっていた。
「そこから帰れる、またこの扉を開けたらダメだ…次は地下への道に変わる」
「うん、分かった」
一歩踏み出せば、本当にカイウスとお別れなんだ。
カイウスはリーズナに「ライムを頼んだぞ」とだけ言っていた。
後ろを振り返ったら、何処にも行きたくなくなる。
心を無にして一歩一歩踏み出して、後ろで扉が閉まった。
リーズナはさっさと前に進むから慌てて付いて行き小屋を出た。
どのくらいいたんだろう、真っ暗だった外は少し明るくなっていた。
『これからどうするんだ?』
「ん?」
『荷物まとめてローベルト家を出るんだろ』
「そうだね」
またジークが部屋に来て邪魔されたら困るから荷物をまとめないと…正直ほとんどないからまとめるのは楽なんだけどね。
あれは現実ではなく、カイウスの精神世界だった。
精神世界だけどカイウスの力が強くて、触れる事が出来た。
ここもきっとそうだ。
俺は無意識でカイウスの精神世界に迷い込んでいたんだ。
それでも、カイウスは消えずにここにいる事が嬉しかった。
精神世界ならもう目が覚めなくても構わないと思うほどに…
「カイウスは人格が変わってもずっと意識あるの?」
「あぁ、ライムが一生懸命になってくれていた事も覚えてるよ…直接は動けなかったからごめん」
カイウスが謝る事じゃないよと頭を横に振った。
俺は俺の意思でここにいるんだ、カイウスにずっと守られているわけにはいかない。
俺がカイウスを守るんだ、大切な人を守れる力はあると思っている。
カイウスにとって俺がまだ不安で頼りないだろうけど、いつかカイウスが認めてくれるほどの頼れる男になるんだ。
だから俺は神なんかにカイウスは渡さない!
だから「俺が嫌いじゃないのに離れるってちゃんと納得出来る理由を教えてほしい、隠し事されると寂しい」とカイウスに言った。
カイウスはしばらく考えてから口を開いた。
「もうすぐこの人格も魔力に呑まれて消滅する」
「そんな、助ける方法はないの!?」
「……ない、これは止められないんだ」
カイウスが最後に一目でも俺に会いたいと思ってくれたからこの場所に来れたんだ。
最後なんて、そんなの嫌だ…行かないでよ。
カイウスが眠った時のように、またなにか方法があるかもしれない。
そうだ、もう一度過去に戻ってカイウスを助ければ…
いろいろ考えて、カイウスに伝えてもカイウスは何も言わず俺を抱きしめた。
なんで、なんでカイウスはそんなに落ち着いてるの?
人格が消滅するって事は死ぬ事と同じなのに…
「ライム、落ち着いて聞いてほしい」
「…ぅ…ぅ」
「メシア……神が近々人間と戦争を起こすつもりだ」
カイウスの言葉に、感情が追いついていないが必死に耳を傾ける。
神もローベルト今日と同じ事をかんがえているんだな。
だとしたら、国ごと巻き込んだ大きな戦争になるかもしれない。
カイウスも銀色のカイウスも戦争には興味はない。
でも、神が無理矢理にでも引っ張り出すかもしれない。
そうなったら面倒だけど、銀色のカイウスは参加するかもしれない。
銀色のカイウスは人間と戦争を起こしても構わないと思っているから。
カイウスは表に出てこれないから、どうする事も出来ない。
神は真っ先にローベルト家に襲撃を仕掛ける事を教えてくれた。
こそこそしていても、神には全て筒抜けなんだな。
俺もカイウスに話すと、カイウスも「やっぱりな」と言っていた。
「だったら尚更ローベルト家から離れてくれ」
「…俺とカイウスが敵同士になるから?」
「そうだ、今の俺もライムの事は気に入っている…元は同じ人間だからな……でも、いつライムに危害を加えるか分からない」
「……だから、離れてくれって言うの?」
「ごめん、でも…ライムには幸せになってほしい…俺と出来なかった事をしてくれ」
カイウスは俺のためにそう言ってくれているんだろう。
でも、それがどんなに残酷な事を言っているか分かってる?
他の人と幸せになってもカイウスはいいの?
なんで、カイウスもそんな泣きそうな顔をするの?
俺達はどんな困難も乗り越えてきたのに。
ここで終わらせて、諦めてそれでカイウスは幸せになれる?
カイウスが俺の幸せを望んでいるのと同じくらい、俺もカイウスの幸せを望んでるんだよ。
「カイウスは俺が他の人を好きになっても平気?」
「……俺はもうすぐ消えてしまう、だからライムを大切にしてくれる人なら構わない」
「本当に?」
「……………あぁ」
「そっか、分かった」
あー、ダメだな…なんでこんな時に涙が溢れて視界が歪むんだろう。
俺の初恋で、今までずっと一途に愛していたカイウスが目の前にいるのに何も見えないや。
カイウスは今、どんな顔をしているんだろう。
俺は、最後くらいは笑ってカイウスを見たい。
カイウスが俺に未練がなくなるようにしっかりしないと…
俺がずっとカイウスを好きで居続けるなんて言ったら、きっとカイウスは俺が幸せになれないって思ってる。
だから俺が他の人を好きになる事は構わないって言ったんだ。
心にもない事を言ってまで、俺の幸せを願った。
俺もカイウスに言おう、未練がないって安心させたい。
ぎこちない笑みを向けて、カイウスに伝えた。
「カイウス、今までありがとう…さようなら」
「ライム…俺もありがとう」
カイウスがそう言うと、カイウスの足元からリーズナが現れた。
そんなところにいたの?カイウスの中に出入り出来るリーズナだから居ても不思議じゃないか。
ここにいたから指輪が反応しなかったんだなと納得した。
カイウスはリーズナに合図すると俺のところまで来て、通り過ぎた。
後ろを見ると、さっきまでなかった大きな扉があった。
俺が扉を開けると、小屋の個室が広がっていた。
「そこから帰れる、またこの扉を開けたらダメだ…次は地下への道に変わる」
「うん、分かった」
一歩踏み出せば、本当にカイウスとお別れなんだ。
カイウスはリーズナに「ライムを頼んだぞ」とだけ言っていた。
後ろを振り返ったら、何処にも行きたくなくなる。
心を無にして一歩一歩踏み出して、後ろで扉が閉まった。
リーズナはさっさと前に進むから慌てて付いて行き小屋を出た。
どのくらいいたんだろう、真っ暗だった外は少し明るくなっていた。
『これからどうするんだ?』
「ん?」
『荷物まとめてローベルト家を出るんだろ』
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またジークが部屋に来て邪魔されたら困るから荷物をまとめないと…正直ほとんどないからまとめるのは楽なんだけどね。
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