254 / 299
ローベルト卿の部屋
しおりを挟む
「とりあえず次はお前の番だから、ヘマはするんじゃねぇぞ」
「分かってるよ」
ユリウスの欲しい情報が手に入るかは分からない。
でも、なにか情報が聞けるかもしれない。
ユリウスが部屋を出て行き、俺は今夜のためにゆっくりと寝る事にした。
ジークはまた任務のために屋敷を出て行ったとユリウスが言っていたから、今日はぐっすりと眠れそうだ。
真夜中になり、道具を抱えて小屋の前までやってきていた。
今日はカイウスに会わないから、せめて断りを入れようと思った。
「カイウス、俺…ライムだけど、今日話があって来たんだ」
「……話?」
先にカイウスが来て待っていてくれたのか、扉越しにカイウスの声が聞こえた。
一目でもカイウスに会いたい、そこにいるなら尚更だ。
手を伸ばそうとしたが、会ったら離れられなくなるなら手を握りしめて我慢した。
カイウスが気に入ってくれたお弁当を持ってきたんだ、今日は反応が見れないけど気に入ってくれたらいいな。
俺は今日用事があるからカイウスに会えない事を話した。
その代わり、お弁当は持ってきたから食べてほしいと扉を開ける時に邪魔にならないところにお弁当を置いた。
「じゃあ、また明日来るね」
カイウスは返事をしなくて、不安に思って扉を開けようと思った。
大丈夫、ただカイウスを確認するだけだから…
扉を開けた瞬間、俺の視界いっぱいに銀色の花が舞っていた。
綺麗な光景だけど、そこにはカイウスはいなかった。
あれ?カイウスの声が聞こえたと思ってたけど、気のせいだったのかな。
扉を閉めて、何処からか鐘の音が響き渡っていた。
あれは確か、教会の鐘だ…いつも真夜中を知らせる鐘が鳴る。
もう行かないと夜が明けてしまうな。
カイウスはいないけど、小屋に向かって頭を下げた。
すぐにローベルト卿の部屋の真下に立った。
道具を地面に置いて準備をする。
布袋を足に被せれば足跡が残らない。
外からローベルト卿の部屋に入ると、靴に付いている土が部屋のじゅうたんを汚してしまう。
俺だって分からなくても、侵入者が入ったのは誰でも分かる。
だから布袋で土がじゅうたんを汚すのを回避出来る。
折れたクワは研げばまだ使える。
壁をよじ登るために、クワを壁に引っ掛けた。
人を一人持ち上げるからかなりの腕力がいるが、このくらいリーズナの修行だと思えば楽勝だ。
命綱は、何処にも引っ掛ける場所がないから紐なしだ。
慎重に、焦らず、確実にローベルト卿の部屋の窓に近付く。
もうすぐ届きそうになったら、イヤーカフを外して細くした糸を出す。
少し硬い糸の先に少し大きめの輪を作る。
上の窓の隙間から糸を入れて、慎重に動かして、内側からドアを開けた。
思い通りに行って、つい嬉しくて声を上げようとして体がぐらついた。
今体を支えているのは、細い窓枠とクワだけだ。
どちらかを離すだけでバランスを崩してしまう。
体勢を整えて、窓をゆっくりと開いた。
当然誰もいなくて、暗闇の室内が外の光で照らされていた。
ローベルト卿の部屋とはいえ、寝室は別にある。
ここは仕事場で、一番秘密の会話をしやすいところとも言う。
とりあえず周りを見渡して、隠れられそうな場所を探してみる。
机の下は一番気付かれる場所だから却下だ。
物影も角度によって見えるからなし。
周りを見渡してもっといい場所はないかと見てみる。
少し大きめのクローゼットに目が止まった。
クローゼットを開けると、いろんな服が入っていた。
ほとんどが正装だから、大切な用事の時に着るのかな。
普段着はさすがに寝室にあるだろうし、あまりこのクローゼットは開けない…かな。
ローベルト卿の寝室なんて行った事がないから分からないけど、隠れやすい定番といえばここくらいかな。
息苦しいほど狭くもないし、ここにしようかな。
ここは家具が少ないから他の場所は分からない。
クローゼットの端に身を潜めて、ローベルト卿が起きてくるまで待つ。
今日はローベルト卿が起きてから、寝るまで出れない。
だから一日食事や睡眠が出来ないけど、一日くらい大丈夫だ。
そして、時間が過ぎていき…部屋の扉が開いた。
心臓が飛び出そうなほど驚いた。
ローベルト卿の部屋だから、ローベルト卿が来るのは当たり前なんだけど失敗出来ないから緊張感がいつもの倍はある。
ローベルト卿は部屋に入って早々に机に向かった。
誰か来てくれないと、ローベルト卿の仕事だけ見ても仕方ない。
クローゼットの扉の小さな隙間から覗き込む。
その時、誰かがドアをノックしていてローベルト卿が「どうした?」と聞いていた。
ノックした人は中に入ってきて、ローベルト卿に言っていた。
「ジーク様達が偵察から帰ってきたようです!」
「そうか、あの方達には?」
「気付かれてはいません」
「分かってるよ」
ユリウスの欲しい情報が手に入るかは分からない。
でも、なにか情報が聞けるかもしれない。
ユリウスが部屋を出て行き、俺は今夜のためにゆっくりと寝る事にした。
ジークはまた任務のために屋敷を出て行ったとユリウスが言っていたから、今日はぐっすりと眠れそうだ。
真夜中になり、道具を抱えて小屋の前までやってきていた。
今日はカイウスに会わないから、せめて断りを入れようと思った。
「カイウス、俺…ライムだけど、今日話があって来たんだ」
「……話?」
先にカイウスが来て待っていてくれたのか、扉越しにカイウスの声が聞こえた。
一目でもカイウスに会いたい、そこにいるなら尚更だ。
手を伸ばそうとしたが、会ったら離れられなくなるなら手を握りしめて我慢した。
カイウスが気に入ってくれたお弁当を持ってきたんだ、今日は反応が見れないけど気に入ってくれたらいいな。
俺は今日用事があるからカイウスに会えない事を話した。
その代わり、お弁当は持ってきたから食べてほしいと扉を開ける時に邪魔にならないところにお弁当を置いた。
「じゃあ、また明日来るね」
カイウスは返事をしなくて、不安に思って扉を開けようと思った。
大丈夫、ただカイウスを確認するだけだから…
扉を開けた瞬間、俺の視界いっぱいに銀色の花が舞っていた。
綺麗な光景だけど、そこにはカイウスはいなかった。
あれ?カイウスの声が聞こえたと思ってたけど、気のせいだったのかな。
扉を閉めて、何処からか鐘の音が響き渡っていた。
あれは確か、教会の鐘だ…いつも真夜中を知らせる鐘が鳴る。
もう行かないと夜が明けてしまうな。
カイウスはいないけど、小屋に向かって頭を下げた。
すぐにローベルト卿の部屋の真下に立った。
道具を地面に置いて準備をする。
布袋を足に被せれば足跡が残らない。
外からローベルト卿の部屋に入ると、靴に付いている土が部屋のじゅうたんを汚してしまう。
俺だって分からなくても、侵入者が入ったのは誰でも分かる。
だから布袋で土がじゅうたんを汚すのを回避出来る。
折れたクワは研げばまだ使える。
壁をよじ登るために、クワを壁に引っ掛けた。
人を一人持ち上げるからかなりの腕力がいるが、このくらいリーズナの修行だと思えば楽勝だ。
命綱は、何処にも引っ掛ける場所がないから紐なしだ。
慎重に、焦らず、確実にローベルト卿の部屋の窓に近付く。
もうすぐ届きそうになったら、イヤーカフを外して細くした糸を出す。
少し硬い糸の先に少し大きめの輪を作る。
上の窓の隙間から糸を入れて、慎重に動かして、内側からドアを開けた。
思い通りに行って、つい嬉しくて声を上げようとして体がぐらついた。
今体を支えているのは、細い窓枠とクワだけだ。
どちらかを離すだけでバランスを崩してしまう。
体勢を整えて、窓をゆっくりと開いた。
当然誰もいなくて、暗闇の室内が外の光で照らされていた。
ローベルト卿の部屋とはいえ、寝室は別にある。
ここは仕事場で、一番秘密の会話をしやすいところとも言う。
とりあえず周りを見渡して、隠れられそうな場所を探してみる。
机の下は一番気付かれる場所だから却下だ。
物影も角度によって見えるからなし。
周りを見渡してもっといい場所はないかと見てみる。
少し大きめのクローゼットに目が止まった。
クローゼットを開けると、いろんな服が入っていた。
ほとんどが正装だから、大切な用事の時に着るのかな。
普段着はさすがに寝室にあるだろうし、あまりこのクローゼットは開けない…かな。
ローベルト卿の寝室なんて行った事がないから分からないけど、隠れやすい定番といえばここくらいかな。
息苦しいほど狭くもないし、ここにしようかな。
ここは家具が少ないから他の場所は分からない。
クローゼットの端に身を潜めて、ローベルト卿が起きてくるまで待つ。
今日はローベルト卿が起きてから、寝るまで出れない。
だから一日食事や睡眠が出来ないけど、一日くらい大丈夫だ。
そして、時間が過ぎていき…部屋の扉が開いた。
心臓が飛び出そうなほど驚いた。
ローベルト卿の部屋だから、ローベルト卿が来るのは当たり前なんだけど失敗出来ないから緊張感がいつもの倍はある。
ローベルト卿は部屋に入って早々に机に向かった。
誰か来てくれないと、ローベルト卿の仕事だけ見ても仕方ない。
クローゼットの扉の小さな隙間から覗き込む。
その時、誰かがドアをノックしていてローベルト卿が「どうした?」と聞いていた。
ノックした人は中に入ってきて、ローベルト卿に言っていた。
「ジーク様達が偵察から帰ってきたようです!」
「そうか、あの方達には?」
「気付かれてはいません」
60
お気に入りに追加
8,302
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる