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利用関係
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しかし、全てが最近狂い始めた。
ジークが俺の婚約者として、ローベルト卿の後継者になってしまった。
話が違うと何度もローベルト卿に訴えたが、ローベルト卿は全く聞く気がなかった。
それどころか、薬をちらつかせて従えと言っていた。
しかも、カイウスが来てからユリウスの地位はもっと下がっていた。
ユリウスがジークを殺してローベルト卿の後継者になっても、その上に超えられない神の存在があった。
どう足掻いても、カイウスに敵わないと見せつけられただけだった。
どんな強い武器を開発しても、どんなに薬を飲んでも、カイウスのいる地下への扉に触れる事すら出来なかった。
「俺は命令されるのは嫌いだが、裏切られるのはもっと嫌いなんだ」
「……なんで、俺にそんな話をするの?」
「お前が食堂を避けたり、一度も誰かに薬を強請っていないところを見ると薬を飲んでいないのは分かってる」
確かに最初の設定を忘れてた。
薬は中毒性があるから、長時間飲まなくて何ともないわけがない。
ユリウスは自分の事ばかり考えているようで見ているんだな。
俺が嘘をついてまでローベルト家に帰ってきた理由はローベルト家に復讐するためなんだと威張って言っていた。
ユリウスからしたら、今まで酷いことをされた俺が帰ってきた理由なんてそれしかないと思ったんだろう。
実際はカイウスを助けるためだけど、当然カイウスをまだ恨んでいるユリウスに言えるわけがない。
ユリウスはローベルト家に復讐するつもりなのか。
そこで俺を使ってなにかをするつもりらしい。
カイウスに手を出そうとするなら許せないが、俺を利用するつもりなら俺もユリウスを利用出来ないだろうか。
ユリウスはローベルト卿の近くに行く事は出来る。
いくら後継者ではなくなったとはいえ、信用はされていると思う。
だとしたら、情報を手に入れやすい気がする。
「言っておくが、お前に拒否権なんてねぇからな…この話を知ったからにはお前にもやってもらう」
「…元からそのつもりだったんだろ」
「あ?生意気な口聞いてんじゃねぇよ」
ユリウスは仲間という事ではなく、あくまで利用関係だから俺に協力してもらおうと思っても、信用していない顔をしているんだろう。
俺もユリウスは信用していないから、お互い様だ。
この関係の方がユリウスに罪悪感を抱かないで済む。
ユリウスを利用しようとしているから俺も同じだ。
ユリウスはズボンのポケットから薬を取り出した。
決意するように、薬の入った入れ物を握りしめた。
「ローベルト卿の野郎に俺の力を見せつけて、薬を全て奪ってやる!」
「…薬は体に悪いから止めた方が…」
「俺に指図してんじゃねぇ!ローベルト卿を騙すために薬も飲めない腰抜けに言われたくねぇ!」
薬を全部奪うって、中毒になってると思って言っただけだったのに、腰抜け扱いされてしまった。
薬を飲まないのが腰抜けなら、俺は腰抜けでいいかな。
それに、ローベルト卿を騙すためにあの薬を飲みたくない。
精霊の命から出来たものなんだ、自分が力を欲する代わりに命を犠牲にするなんて間違ってる。
ユリウスは薬が神から与えられるものとしか思っていないんだろう。
ローベルト卿から薬を全て奪う事が出来たら、ユリウスが手にする前に俺が処分する。
精霊の命を処分するのは心が痛いが、私利私欲に利用されるくらいなら俺の力で終わらせる。
その時は、きっとカイウスも一緒にいてくれるよね。
ユリウスは俺の胸ぐらを掴んで、至近距離で睨みつけていた。
今日だけでどのくらいユリウスに胸ぐらを掴まれたんだろう。
「いいか、俺はローベルト卿を裏切ろうとしているんだ、バレたら処刑される…もう引き返せねぇんだ!俺を裏切るような真似をしたら問答無用で殺す!」
「……分かってるよ、薬の事を父さんに知られたくないし」
俺はユリウスに嘘を付いた。
薬を飲んでいない事を知られても、俺の立ち位置は変わらない…指輪がある限り。
だから知られても別に構わない。
だけど、ユリウスを信用させるために嘘を付いた。
どんな事を言っても、ユリウスは信じない。
だから弱みを握ったと思わせた。
結局信用出来るのは弱点だからね。
お互い言われたら人生が終わる弱みを掴んだ…とユリウスは思っている。
今の俺は悪役みたいだな、と内心苦笑いした。
俺の思った通りユリウスは満足そうな顔をしていて、俺から手を離した。
「早速だけど、お前にやってもらう事がある」
「暴力はダメだから」
「……あ?」
「そんな事をしたらすぐにローベルト卿の耳に入るから、止めた方がいい」
血の気の多いユリウスの考えている事なんて分かっている。
俺はローベルト家に直接手を出す気はない。
それをするのは騎士団で、俺のようなただの一般人がやっていい事ではない。
ユリウスは騎士団も裏切ってはいるが、まだ騎士団だからユリウスが悪を制裁するならまだ大丈夫だ…悪以外にやるのは当然ダメだけど…
それを言っても、正義のためにやってるんじゃないと怒られて終わるだけだ。
だから俺は冷静にならないといけないとユリウスに言った。
俺が意見するのは気に入らないと言いたげな顔をしていた。
どう伝えたらいいのか俺も分からないんだ、不快だったら謝るよ。
でもユリウスはさっきのようにブチギレる事もなく、舌打ちだけで終わった。
「じゃあどうするつもりなんだよ、先にカイウスを殺すのか?」
「ダメ!!」
「あ?だったら何が出来んだよお前は」
ユリウスが俺を睨みつけるから、俺は情報収集をしたいと提案した。
何事も情報が一番大切だ。
本音を言うと、俺の何かしらの情報が欲しいんだけどね。
ジークが俺の婚約者として、ローベルト卿の後継者になってしまった。
話が違うと何度もローベルト卿に訴えたが、ローベルト卿は全く聞く気がなかった。
それどころか、薬をちらつかせて従えと言っていた。
しかも、カイウスが来てからユリウスの地位はもっと下がっていた。
ユリウスがジークを殺してローベルト卿の後継者になっても、その上に超えられない神の存在があった。
どう足掻いても、カイウスに敵わないと見せつけられただけだった。
どんな強い武器を開発しても、どんなに薬を飲んでも、カイウスのいる地下への扉に触れる事すら出来なかった。
「俺は命令されるのは嫌いだが、裏切られるのはもっと嫌いなんだ」
「……なんで、俺にそんな話をするの?」
「お前が食堂を避けたり、一度も誰かに薬を強請っていないところを見ると薬を飲んでいないのは分かってる」
確かに最初の設定を忘れてた。
薬は中毒性があるから、長時間飲まなくて何ともないわけがない。
ユリウスは自分の事ばかり考えているようで見ているんだな。
俺が嘘をついてまでローベルト家に帰ってきた理由はローベルト家に復讐するためなんだと威張って言っていた。
ユリウスからしたら、今まで酷いことをされた俺が帰ってきた理由なんてそれしかないと思ったんだろう。
実際はカイウスを助けるためだけど、当然カイウスをまだ恨んでいるユリウスに言えるわけがない。
ユリウスはローベルト家に復讐するつもりなのか。
そこで俺を使ってなにかをするつもりらしい。
カイウスに手を出そうとするなら許せないが、俺を利用するつもりなら俺もユリウスを利用出来ないだろうか。
ユリウスはローベルト卿の近くに行く事は出来る。
いくら後継者ではなくなったとはいえ、信用はされていると思う。
だとしたら、情報を手に入れやすい気がする。
「言っておくが、お前に拒否権なんてねぇからな…この話を知ったからにはお前にもやってもらう」
「…元からそのつもりだったんだろ」
「あ?生意気な口聞いてんじゃねぇよ」
ユリウスは仲間という事ではなく、あくまで利用関係だから俺に協力してもらおうと思っても、信用していない顔をしているんだろう。
俺もユリウスは信用していないから、お互い様だ。
この関係の方がユリウスに罪悪感を抱かないで済む。
ユリウスを利用しようとしているから俺も同じだ。
ユリウスはズボンのポケットから薬を取り出した。
決意するように、薬の入った入れ物を握りしめた。
「ローベルト卿の野郎に俺の力を見せつけて、薬を全て奪ってやる!」
「…薬は体に悪いから止めた方が…」
「俺に指図してんじゃねぇ!ローベルト卿を騙すために薬も飲めない腰抜けに言われたくねぇ!」
薬を全部奪うって、中毒になってると思って言っただけだったのに、腰抜け扱いされてしまった。
薬を飲まないのが腰抜けなら、俺は腰抜けでいいかな。
それに、ローベルト卿を騙すためにあの薬を飲みたくない。
精霊の命から出来たものなんだ、自分が力を欲する代わりに命を犠牲にするなんて間違ってる。
ユリウスは薬が神から与えられるものとしか思っていないんだろう。
ローベルト卿から薬を全て奪う事が出来たら、ユリウスが手にする前に俺が処分する。
精霊の命を処分するのは心が痛いが、私利私欲に利用されるくらいなら俺の力で終わらせる。
その時は、きっとカイウスも一緒にいてくれるよね。
ユリウスは俺の胸ぐらを掴んで、至近距離で睨みつけていた。
今日だけでどのくらいユリウスに胸ぐらを掴まれたんだろう。
「いいか、俺はローベルト卿を裏切ろうとしているんだ、バレたら処刑される…もう引き返せねぇんだ!俺を裏切るような真似をしたら問答無用で殺す!」
「……分かってるよ、薬の事を父さんに知られたくないし」
俺はユリウスに嘘を付いた。
薬を飲んでいない事を知られても、俺の立ち位置は変わらない…指輪がある限り。
だから知られても別に構わない。
だけど、ユリウスを信用させるために嘘を付いた。
どんな事を言っても、ユリウスは信じない。
だから弱みを握ったと思わせた。
結局信用出来るのは弱点だからね。
お互い言われたら人生が終わる弱みを掴んだ…とユリウスは思っている。
今の俺は悪役みたいだな、と内心苦笑いした。
俺の思った通りユリウスは満足そうな顔をしていて、俺から手を離した。
「早速だけど、お前にやってもらう事がある」
「暴力はダメだから」
「……あ?」
「そんな事をしたらすぐにローベルト卿の耳に入るから、止めた方がいい」
血の気の多いユリウスの考えている事なんて分かっている。
俺はローベルト家に直接手を出す気はない。
それをするのは騎士団で、俺のようなただの一般人がやっていい事ではない。
ユリウスは騎士団も裏切ってはいるが、まだ騎士団だからユリウスが悪を制裁するならまだ大丈夫だ…悪以外にやるのは当然ダメだけど…
それを言っても、正義のためにやってるんじゃないと怒られて終わるだけだ。
だから俺は冷静にならないといけないとユリウスに言った。
俺が意見するのは気に入らないと言いたげな顔をしていた。
どう伝えたらいいのか俺も分からないんだ、不快だったら謝るよ。
でもユリウスはさっきのようにブチギレる事もなく、舌打ちだけで終わった。
「じゃあどうするつもりなんだよ、先にカイウスを殺すのか?」
「ダメ!!」
「あ?だったら何が出来んだよお前は」
ユリウスが俺を睨みつけるから、俺は情報収集をしたいと提案した。
何事も情報が一番大切だ。
本音を言うと、俺の何かしらの情報が欲しいんだけどね。
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