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秘密のお話

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俺が薬を飲んでいようが、ローベルト卿は俺の指輪がほしいのには変わりない。
力を使えるのは本当だから…

ユリウスはその事を知らないのか、得意げな顔をしている。

俺を脅しても何にもならないのに、ユリウスはいったい何を考えているんだ?

作った道具をユリウスに気付かれないように背中に隠した。
俺が一番隠したい事は知られないように慎重にユリウスを見た。

「それで、俺に何を望んでるの?」

「ここじゃあなんだから、場所を変えるぞ」

目立つ行動をしたのはユリウスなのに、周りを気にして剣を鞘に戻して俺から離れた。
俺は「だったら俺の部屋は?」とユリウスに提案した。

ユリウスはこちらを少し見てから、歩き出した。
ダメとか言ってないから、いいって事なのか?

ユリウスを部屋には入れたくはないが、ちょっと利用させてもらうことにした。
部屋にジークがいたら、追い出してくれる…この場で話せない事なら今のユリウスにとってジークも邪魔な存在だろう。

ユリウスが倒したテーブルを直してから、道具を抱えてユリウスに付いて行く。
待たされたからか、イラついていたがなんでここでイラつくのかは分からない。

本当はユリウスが倒したんだから、ユリウスが直さないといけないのにな。

食堂を歩くと、すれ違う人一人一人が俺達を見ている。
一緒にいるところなんて見た事がないから当然か。
ユリウスが俺に絡む時は、いつも一方的に喧嘩を売っているからな。

今も仲がいいわけではないけど、それでもこの光景は珍しい事には変わりないのだろう。

俺の部屋の前に到着して、ユリウスがドアを開けた。
そこには、やっぱり帰りを待ち伏せしていた先客がいた。

「…お前、俺を騙したのか!」

「違う違う!俺もいるなんて知らなかたから!」

半分は知らなかったのは本当だ、いるかもしれないとは思っていたけど。
ジークと一緒になってユリウスを陥れる気なんてない。

ユリウスは俺の胸ぐらを掴んで睨みつけていて、どう言えばいいのか考える。
とりあえず繋がっていない事をちゃんとユリウスに理解してもらわないとな。

俺もユリウスの服を掴んで、内緒話をするように言った。
ユリウスの不快そうな顔は今は無視しよう。

「ユリウス、お願いだ…助けてくれ」

「…は?なにがだ」

「ジークの婚約者になりたくないのにさせられて、暴力振るわれてる事も知ってるだろ…繋がってないし、誓える…あんな奴好きなわけないだろ」

「……」

ユリウスは半信半疑の顔でチラッとジークの方を見ていた。

そして小さな声で「…まぁ、男は好きにならないな」と言っていた。
カイウスを好きな身からして、その言葉には何も言わなかった。
ただ、ジークは嫌いとだけはっきりと言った。

繋がっていない証拠にジークを部屋から追い出してほしいとお願いした。
ユリウスもジークから逃げていたところを見ていたなら分かるような気がするんだけどな。
殴られたところだってユリウスだって見ている筈だ。

俺が殴られても何とも思わないんだろうけど…

「お前が追い出せ、なんで俺がやらなきゃいけないんだ」

「俺の話を聞かないからだよ、ユリウスなら俺よりジークを動かす方法を知ってるかと思って」

「……てか、なんでお前俺を呼び捨てにしてんだ」

ユリウスに顔面を片手で掴まれて、指先に力を込められる。
「痛い痛い!ごめんなさい、ユリウス様!」と言ったら突き飛ばされた。
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