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二人の時間
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カイウスが歩くと、蕾だった花も一気に咲いていた。
神秘的な見た目と雰囲気で、本当に神様になってしまったんじゃないかと錯覚してしまう。
遠くに行ってしまう不安でカイウスに近付くと、俺の手首に触れた。
そのまま指輪を眺めて、触れていた。
持ち主は元々カイウスだから、カイウスは拒絶されなかった。
俺に指輪をくれた事も忘れているから、不思議そうだ。
「俺に似た力を感じる、人間じゃないのか?」
「…ただの人間だよ」
「そう、じゃあそろそろ本題に行こうか」
カイウスはすぐに指輪への興味がなくなったのか、俺から手を離した。
カイウスを楽しませる…どうするか、俺にはこれくらいしかない。
芸も何もない俺は、口を開いた。
歌を歌い、カイウスに想いを届けたいと思った。
歌っている途中で、何処に隠れていたのか…精霊が花の後ろから顔を出して、俺の周りをぐるぐると回っていた。
歌を止める事なく、最後まで歌い終わり深呼吸してカイウスの方を見た。
つまらないって言われたらどうしよう、他に出来る事なんて思いつかない。
「それは?」
「え?歌、だよ」
「うた……聞いた事がない、でも…悪くない」
カイウスにそう言われて嬉しかった。
もっと聞かせてほしいとカイウスにリクエストをもらい、歌を歌った。
カイウスのためならいくらでも歌うよ。
俺が唯一出来る事がカイウスに気に入ってもらえて良かった。
しばらく歌い続けて、カイウスは後ろを振り返った。
あそこは多分地下に続く入り口があるんだろうな。
「そろそろメシアが帰ってくるな、思ったより楽しめたよ…またおいで」
「カイウス、外に出れば俺以外に歌を歌っている人はいっぱいいるよ、聞いてみたくない?」
「引かれないな、君の歌で充分だから」
カイウスはそう言って奥に向かって歩いていった。
まだまだカイウスを連れ出す事が出来ないな。
外に出たくなる都合のいい歌はないものなのかな。
神が帰ってきたら、カイウスともう会えないようにされるから大人しく今日は帰ろう。
明日の約束をしたから、明日また行こう。
部屋に戻ってリーズナに報告しようと俺も小屋から出た。
次の日の真夜中、また俺は小屋にやって来ていた。
「カイウス?いる?」
名前を呼びながらドアを開けたが、小屋には誰もいなかった。
また遅れてくるのかな、と銀色の花を眺めながら待っていた。
少し待っても来る気配がなくて、だんだん不安になった。
なにかあったんじゃないのか?カイウスは大丈夫?
奥の個室に入るなとは言われていないが、何となく行くのをためらっていた。
地下に続く道になっているなら、なんとなくダメなのかと思っていた。
カイウスとの仲はせっかく普通にはなっているのに、嫌がる事はしたくなかった。
でも、カイウスになにかあったんなら助けたい。
個室の扉を開けて、中を覗き込んだ。
個室の中は休憩所のようで、小さな噴水が真ん中にあって豪華な装飾がされた大きなソファーがあった。
ソファーを囲むように銀色の花が集まっていた。
虹色の見た事がない蝶も噴水の近くを舞っていた。
一瞬蝶が精霊に見えたけど、精霊の一種だけど俺がいつも見ている人型の精霊とは違った。
ソファーで寝ている人が見えた。
起こさないように近付いて、寝顔を見つめた。
カイウスが寝ている、今日はお疲れだったのかな。
何をしてたのかは分からないけど、なにかあったわけじゃなくて良かった。
起こさないようにしようと、ソファーを背にして座った。
昨日は歌っている時間があっという間に感じたけど、今日はゆっくりと時間が進んでいるようだ。
蝶に向かって人差し指を向けると、軽く触れて飛んでいってしまった。
地下に続く扉があると思ったけど、なさそうだな。
それとも何処か隠し扉でもあるのかな。
後ろを振り返るとカイウスの寝顔が見える。
美しい彫刻のような完璧なカイウスはずっと見ていられる。
神秘的な見た目と雰囲気で、本当に神様になってしまったんじゃないかと錯覚してしまう。
遠くに行ってしまう不安でカイウスに近付くと、俺の手首に触れた。
そのまま指輪を眺めて、触れていた。
持ち主は元々カイウスだから、カイウスは拒絶されなかった。
俺に指輪をくれた事も忘れているから、不思議そうだ。
「俺に似た力を感じる、人間じゃないのか?」
「…ただの人間だよ」
「そう、じゃあそろそろ本題に行こうか」
カイウスはすぐに指輪への興味がなくなったのか、俺から手を離した。
カイウスを楽しませる…どうするか、俺にはこれくらいしかない。
芸も何もない俺は、口を開いた。
歌を歌い、カイウスに想いを届けたいと思った。
歌っている途中で、何処に隠れていたのか…精霊が花の後ろから顔を出して、俺の周りをぐるぐると回っていた。
歌を止める事なく、最後まで歌い終わり深呼吸してカイウスの方を見た。
つまらないって言われたらどうしよう、他に出来る事なんて思いつかない。
「それは?」
「え?歌、だよ」
「うた……聞いた事がない、でも…悪くない」
カイウスにそう言われて嬉しかった。
もっと聞かせてほしいとカイウスにリクエストをもらい、歌を歌った。
カイウスのためならいくらでも歌うよ。
俺が唯一出来る事がカイウスに気に入ってもらえて良かった。
しばらく歌い続けて、カイウスは後ろを振り返った。
あそこは多分地下に続く入り口があるんだろうな。
「そろそろメシアが帰ってくるな、思ったより楽しめたよ…またおいで」
「カイウス、外に出れば俺以外に歌を歌っている人はいっぱいいるよ、聞いてみたくない?」
「引かれないな、君の歌で充分だから」
カイウスはそう言って奥に向かって歩いていった。
まだまだカイウスを連れ出す事が出来ないな。
外に出たくなる都合のいい歌はないものなのかな。
神が帰ってきたら、カイウスともう会えないようにされるから大人しく今日は帰ろう。
明日の約束をしたから、明日また行こう。
部屋に戻ってリーズナに報告しようと俺も小屋から出た。
次の日の真夜中、また俺は小屋にやって来ていた。
「カイウス?いる?」
名前を呼びながらドアを開けたが、小屋には誰もいなかった。
また遅れてくるのかな、と銀色の花を眺めながら待っていた。
少し待っても来る気配がなくて、だんだん不安になった。
なにかあったんじゃないのか?カイウスは大丈夫?
奥の個室に入るなとは言われていないが、何となく行くのをためらっていた。
地下に続く道になっているなら、なんとなくダメなのかと思っていた。
カイウスとの仲はせっかく普通にはなっているのに、嫌がる事はしたくなかった。
でも、カイウスになにかあったんなら助けたい。
個室の扉を開けて、中を覗き込んだ。
個室の中は休憩所のようで、小さな噴水が真ん中にあって豪華な装飾がされた大きなソファーがあった。
ソファーを囲むように銀色の花が集まっていた。
虹色の見た事がない蝶も噴水の近くを舞っていた。
一瞬蝶が精霊に見えたけど、精霊の一種だけど俺がいつも見ている人型の精霊とは違った。
ソファーで寝ている人が見えた。
起こさないように近付いて、寝顔を見つめた。
カイウスが寝ている、今日はお疲れだったのかな。
何をしてたのかは分からないけど、なにかあったわけじゃなくて良かった。
起こさないようにしようと、ソファーを背にして座った。
昨日は歌っている時間があっという間に感じたけど、今日はゆっくりと時間が進んでいるようだ。
蝶に向かって人差し指を向けると、軽く触れて飛んでいってしまった。
地下に続く扉があると思ったけど、なさそうだな。
それとも何処か隠し扉でもあるのかな。
後ろを振り返るとカイウスの寝顔が見える。
美しい彫刻のような完璧なカイウスはずっと見ていられる。
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