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痛い愛情
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地下に行くと、皆こんな姿になるのだろうか。
あの扉で拒絶されるけど、地下の担当になった人はどうやって入るんだろう…地下にいる人にも許可をもらうのかな。
面倒そうにこちらにやってくる医者は、俺の腕を見ていた。
俺もかなり酷い状態だけど、見慣れているのか淡々と見ていた。
「任務でこうなったんですか?ライム様」
「いえ…ちょっと…」
「喧嘩で来てほしくないんですけど、ただでさえ毎日死にかけの患者が来るのに」
「ごめんなさい」
「まぁ、こんな状態の貴方を追い返したらいろいろと面倒事になりそうなんで、今回だけ特別ですからね」
「ありがとうございます」
軽く手当てしてもらって、包帯で巻かれた。
流石に感覚がない腕を治す事は出来ないと言われてしまった。
数日様子を見て、戻らなかったらまた来る事になった。
今回だけと言っていたが、また見てくれるみたいだ……凄く嫌そうな顔をされたけど…
医務室を出て、歩いていたら誰かに肩を掴まれた。
無理矢理振り返られて、後ろにいた人と目線が合った。
俺を見るジークの顔は変わっていないように見えて、至近距離で見ているからこそ分かった。
いつもより瞳が鋭い…なにかにイラついている様子だった。
腕を掴まれて引っ張られる、そっちの腕は感覚がないからジークに引っ張られると簡単に腕が取れそうで怖い。
ジークに何処かに連れて行かれるのは嫌だが、感覚がないから腕を振り払う事も出来ない。
嫌だけど自分から歩く事を意識して、ジークに付いて行く。
来たのは俺の部屋ではない、ここって何処だ?
ジークが部屋を開けて、俺が先に入れられて転げた。
床がじゅうたんだからそんな痛みはなくて良かった。
起き上がろうとすると俺の背中を誰かに押さえつけられて、起き上がれない。
押さえつけているというより、踏みつけられてないか?
この場にいるのは俺とジークだけ、だとしたら背中を踏みつけているのは一人しかいない。
「何するんだ!」
「……」
関わりたくないから他人行儀に話していた言葉も忘れて叫んだ。
それでもジークは無言で俺を踏みつけていた。
こんな事される覚えはない、まさか昨日出てけって言われたから怒ったのか?
自分で感情がないって言ってたのに、そのくらいで怒るのか?
俺はジークも人間だとは思ってるけど、そこまで怒る事なのかと疑問がある。
怒るなら殺す対象と結婚させられそうな事だと思う。
ローベルト卿に怒れないから俺に怒ってるとか?とばっちりだ。
とりあえず、腕は感覚はないがそれ以外にはあるから背中を踏みつけないでくれ。
「言いたい事があるなら聞くから、まずは退いてくれ!」
「その腕、どうしたんだ?」
「う…腕?これは自分で階段から落ちて」
階段から落ちただけで火傷みたいな傷になる事はない。
でも今は包帯を巻いているから、傷口が分からない筈だ。
ジークがしばらく黙っていて、まだなにかあるのかと痛みに耐えるしかなかった。
俺の傷なんてジークにとってはどうでもいい事だろ。
早く離してくれ、リーズナと話したい事があるんだ。
遠慮がない足で踏まれて、足跡が背中に出来たら嫌だな…と考えていたら、足が退いた。
それだけならいいが、服を掴まれて無理矢理立ち上がらされた。
首が苦しい、眉を寄せてジークの方を見た。
「お前は愛が大事だと言ったな」
「それが、なん…だよ」
「なら、愛してやる」
「なんっ…」
最後まで声に出す事が出来なかった。
頬に強い衝撃を受けて、軽く体が飛んだ。
床にまた転がり、口内が歯に当たって切れたのか血の味がする。
理解する前にさらに理解出来ない事が起きて驚いた。
なんでいきなり殴られたのか分からない、さっきの会話でまた怒らせた?
俺に近付いてくるジークを見て、無意識に後ずさる。
「これが俺の愛し方だ」
「……は?」
「体に俺の痛み、印を刻み込む…お前が望んだ愛だ」
「俺は貴方の愛なんて……っ!?」
頭にもう一発当たり、視界が霞んで見える。
俺が望んだ愛はジークじゃない、それを言いたかったが口を開く前にまた殴られる。
このままだと殴り殺される、でも逃げようとしても這いつくばるしか出来ない。
ジークに前を塞がれて、蹴られて俺の意識はだんだんとなくなっていった。
カイウスに会えるまで、死ぬわけにはいかないのに……
「ぅ……いっ、た」
体を少し動かすだけで体中が痛くて涙が出てくる。
少しも動けず、前を見るしか出来なくて天井だけでこの場所を把握するしかない。
どの部屋も似た天井だから、分からない。
でも記憶を失う前は、ジークに殴られ続けたんだ。
じゃあここはジークの部屋?俺の部屋であってほしい。
ジークが俺を部屋まで運んでくれる優しさがあるとは思えないけど…
俺が起きても静かな室内が続いている、誰もいないみたいだ。
まだ死んでなくてホッとしたが、またジークが来たら殴られそうだ。
今までも殴られた事はあったし、慣れていた筈だけどジークは桁違いだ。
遠慮がない怪力で攻撃してくる、俺が生きているのはきっと指輪のおかげだろう。
指輪がジークの攻撃から俺を守ってくれた。
それでも、俺の指輪をしている方の腕の感覚がないから塞ぎ切れずに食らってしまった。
カイウスの指輪のおかげで、俺はまたカイウスに会えるチャンスが残されている。
行かないと、リーズナに腕の事を話さないといけない。
魔力の攻撃を受けた腕が回復する方法はないか聞きたい。
痛みが全身に走るが、眉を寄せながらも体を動かした。
息を吐いて、少しずつ体を動かしてベッドから転げ落ちた。
「あっ!ぅぐっ…」
鋭い痛みが走って、動きを止めて落ち着かせる。
はぁ、はぁ…と静かな室内で息遣いが聞こえる。
這いつくばって、部屋のドアに向かうと扉が開いた。
あの扉で拒絶されるけど、地下の担当になった人はどうやって入るんだろう…地下にいる人にも許可をもらうのかな。
面倒そうにこちらにやってくる医者は、俺の腕を見ていた。
俺もかなり酷い状態だけど、見慣れているのか淡々と見ていた。
「任務でこうなったんですか?ライム様」
「いえ…ちょっと…」
「喧嘩で来てほしくないんですけど、ただでさえ毎日死にかけの患者が来るのに」
「ごめんなさい」
「まぁ、こんな状態の貴方を追い返したらいろいろと面倒事になりそうなんで、今回だけ特別ですからね」
「ありがとうございます」
軽く手当てしてもらって、包帯で巻かれた。
流石に感覚がない腕を治す事は出来ないと言われてしまった。
数日様子を見て、戻らなかったらまた来る事になった。
今回だけと言っていたが、また見てくれるみたいだ……凄く嫌そうな顔をされたけど…
医務室を出て、歩いていたら誰かに肩を掴まれた。
無理矢理振り返られて、後ろにいた人と目線が合った。
俺を見るジークの顔は変わっていないように見えて、至近距離で見ているからこそ分かった。
いつもより瞳が鋭い…なにかにイラついている様子だった。
腕を掴まれて引っ張られる、そっちの腕は感覚がないからジークに引っ張られると簡単に腕が取れそうで怖い。
ジークに何処かに連れて行かれるのは嫌だが、感覚がないから腕を振り払う事も出来ない。
嫌だけど自分から歩く事を意識して、ジークに付いて行く。
来たのは俺の部屋ではない、ここって何処だ?
ジークが部屋を開けて、俺が先に入れられて転げた。
床がじゅうたんだからそんな痛みはなくて良かった。
起き上がろうとすると俺の背中を誰かに押さえつけられて、起き上がれない。
押さえつけているというより、踏みつけられてないか?
この場にいるのは俺とジークだけ、だとしたら背中を踏みつけているのは一人しかいない。
「何するんだ!」
「……」
関わりたくないから他人行儀に話していた言葉も忘れて叫んだ。
それでもジークは無言で俺を踏みつけていた。
こんな事される覚えはない、まさか昨日出てけって言われたから怒ったのか?
自分で感情がないって言ってたのに、そのくらいで怒るのか?
俺はジークも人間だとは思ってるけど、そこまで怒る事なのかと疑問がある。
怒るなら殺す対象と結婚させられそうな事だと思う。
ローベルト卿に怒れないから俺に怒ってるとか?とばっちりだ。
とりあえず、腕は感覚はないがそれ以外にはあるから背中を踏みつけないでくれ。
「言いたい事があるなら聞くから、まずは退いてくれ!」
「その腕、どうしたんだ?」
「う…腕?これは自分で階段から落ちて」
階段から落ちただけで火傷みたいな傷になる事はない。
でも今は包帯を巻いているから、傷口が分からない筈だ。
ジークがしばらく黙っていて、まだなにかあるのかと痛みに耐えるしかなかった。
俺の傷なんてジークにとってはどうでもいい事だろ。
早く離してくれ、リーズナと話したい事があるんだ。
遠慮がない足で踏まれて、足跡が背中に出来たら嫌だな…と考えていたら、足が退いた。
それだけならいいが、服を掴まれて無理矢理立ち上がらされた。
首が苦しい、眉を寄せてジークの方を見た。
「お前は愛が大事だと言ったな」
「それが、なん…だよ」
「なら、愛してやる」
「なんっ…」
最後まで声に出す事が出来なかった。
頬に強い衝撃を受けて、軽く体が飛んだ。
床にまた転がり、口内が歯に当たって切れたのか血の味がする。
理解する前にさらに理解出来ない事が起きて驚いた。
なんでいきなり殴られたのか分からない、さっきの会話でまた怒らせた?
俺に近付いてくるジークを見て、無意識に後ずさる。
「これが俺の愛し方だ」
「……は?」
「体に俺の痛み、印を刻み込む…お前が望んだ愛だ」
「俺は貴方の愛なんて……っ!?」
頭にもう一発当たり、視界が霞んで見える。
俺が望んだ愛はジークじゃない、それを言いたかったが口を開く前にまた殴られる。
このままだと殴り殺される、でも逃げようとしても這いつくばるしか出来ない。
ジークに前を塞がれて、蹴られて俺の意識はだんだんとなくなっていった。
カイウスに会えるまで、死ぬわけにはいかないのに……
「ぅ……いっ、た」
体を少し動かすだけで体中が痛くて涙が出てくる。
少しも動けず、前を見るしか出来なくて天井だけでこの場所を把握するしかない。
どの部屋も似た天井だから、分からない。
でも記憶を失う前は、ジークに殴られ続けたんだ。
じゃあここはジークの部屋?俺の部屋であってほしい。
ジークが俺を部屋まで運んでくれる優しさがあるとは思えないけど…
俺が起きても静かな室内が続いている、誰もいないみたいだ。
まだ死んでなくてホッとしたが、またジークが来たら殴られそうだ。
今までも殴られた事はあったし、慣れていた筈だけどジークは桁違いだ。
遠慮がない怪力で攻撃してくる、俺が生きているのはきっと指輪のおかげだろう。
指輪がジークの攻撃から俺を守ってくれた。
それでも、俺の指輪をしている方の腕の感覚がないから塞ぎ切れずに食らってしまった。
カイウスの指輪のおかげで、俺はまたカイウスに会えるチャンスが残されている。
行かないと、リーズナに腕の事を話さないといけない。
魔力の攻撃を受けた腕が回復する方法はないか聞きたい。
痛みが全身に走るが、眉を寄せながらも体を動かした。
息を吐いて、少しずつ体を動かしてベッドから転げ落ちた。
「あっ!ぅぐっ…」
鋭い痛みが走って、動きを止めて落ち着かせる。
はぁ、はぁ…と静かな室内で息遣いが聞こえる。
這いつくばって、部屋のドアに向かうと扉が開いた。
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