冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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一緒に朝食

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部屋を出て、まずは食事をしようと食堂に向かった。
昨日は結局何も食べていなかったから、お腹が空いた。

まさか、料理に薬が混ざってる…なんて事ないよね?

食堂の前で足を止めて、そこから先に行くのが無理になった。
何人か兵士や使用人が食堂に入ってくるのを見送った。

食堂に入りたくないのに、俺の腹は無意識に鳴っていた。

水だけにしようかな、水ならさすがに薬は混ぜないだろう。

「あれ、ライム?」

「ハイドレイ!」

向こう側から歩いてきたハイドレイを見つけて、駆け寄った。
ハイドレイは人懐っこい笑みを浮かべていた。

この屋敷で唯一の癒しの場がハイドレイになりつつある。
ゲームの事を考えていた時はハイドレイと関わるのは嫌だった。
俺が死ぬかもしれない状況になるからな。

でも、今はハイドレイがいてくれて良かった。
ハイドレイが友達で、本当に良かった。

「何やってんだ?こんなところで」

「えっと、お腹空いちゃって…」

「そっか、じゃあ一緒に食うか?」

そう言ってハイドレイは手に持っていた袋を見せてくれた。
これって、もしかしてお弁当?

でも、ハイドレイのお弁当を分けてもらうって事はハイドレイは食べる量が減るって事だよな。

唾を飲んで、美味しそうだけどハイドレイに悪いなぁと思った。
俺は笑って「そんなお腹減ってないから大丈夫!」と言った。
流石にハイドレイの食べる分を貰うわけにはいかない。

ハイドレイは遠慮するなと言ってくれたその時、俺の腹は空気を読む事をしてくれなかった。

「ライム」

「本当大丈夫、今のは…気のせいだから」

「今日は天気いいし、外で食おうぜ!」

俺が何を言っても聞かず、背中を押された。
それがハイドレイのいいところだよな。

お言葉に甘えて、少しだけ貰う事にした。

屋敷の庭にやってきて、座って袋を広げた。
クマさんが作ってくれたお弁当で、とてもいいにおいでさらにお腹が減ってきた。

先に俺に選ばせてくれると言ってくれた、小さなおにぎりをもらった。

「ありがとう」

「遠慮しないで、食べたいものあったら言えよ」

「うん」

「朝食食えって言われて来たんだけど、俺も食堂に行きたくなくてな、変なもんが混ざってる気がして」

ハイドレイも同じ事を思っていたみたいだ。
俺と同じく、ハイドレイも薬を飲んでいる設定だからな。

おにぎりを食べながら、目の前を見つめた。
使用人が花の世話をしている。
じょうろを持っている人が多いな。

目線で追ってみると、小さな小屋の周りに咲いてある花の世話をしていた。
凄い生命力だなあの花、小屋全体を覆うように茎が複雑に絡みついている。

「ハイドレイ、あの小屋って何?」

「え?あんなところに小屋なんかあったのか?」

ハイドレイも知らないのか、長く住んでいた俺ですら気付かなかった。
それとも、俺が屋敷を出てから建てられたのか?

もう一口おにぎりを食べる、シンプルな塩おにぎりだけど心に沁み渡る。

朝食を食べ終わって、ハイドレイは忙しそうに騎士の仕事があると行ってしまった。

ローベルト家の屋敷に出入りしないといけないし、本業の騎士の仕事を疎かに出来ない。
両立しないといけないから大変そうだな。

気になって小屋に近付こうとした。
そういえば、小屋の周りの掃除はしていたが小屋の中には誰も入らなかった。
なんでか分からなかったが、すぐにその理由が分かった。

足が自然と止まってしまい、小屋のドアには触れられなかった。
頭では前に足を出そうとしているのに、見えない壁が邪魔をしている。
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