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必要な力
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「薬の大切はお前なら分かるだろ、薬を奪いに兵士の前に現れるから早めの始末が必要だ……理由なんて必要ないがな」
「そんなに奪われたくないなら薬をこんなところに捨てるなよ」
「一度裏切った奴はいらないが、薬に魅入られた人間はいい駒になる」
「……まさか、わざと?」
「裏切り者に与える薬なんてない、お前がもらう筈の薬も奪われるかもな」
男は俺が薬欲しさに裏切り者を殺すと思って挑発しているが、そんな事で人を殺すわけがない。
俺は大量に中毒者を増やそうとしているローベルト卿が許せない。
どんだけの人が悲しめばやめてくれる?…いや、やめてもくれないんだろうな。
拳を握りしめて、その場を離れた。
後ろから男も付いて来るが、もう気にしない事にした。
ハイドレイが言っていた作戦も、ハイドレイを誘った騎士がいた。
彼もまた、ばら撒かれた薬の被害者なのかもしれない。
目的の男はもう部屋に戻っていってしまった。
男に胸ぐらを掴まれても、なにか言う気分にはなれなかった。
俺がなんて言おうとしても、きっと響かないんだろう。
男にとって、死よりも薬を飲まない事の方が恐怖なのだろう。
「お前がこの任務に失敗したら、お前を殺せと命令がある」
「……」
「悪魔を召喚出来るからローベルト家の奴らは期待はしていた」
悪魔、そういえばそんな話だった…忘れていたな。
召喚できるわけがないのに、不思議な事に信じていたな。
あれはカイウスだし、カイウスは悪魔じゃないし。
俺が言った悪魔は架空の悪魔の話、カイウスの話ではない。
俺はただの人間だが、そう簡単に殺されるわけにはいかない。
胸ぐらを掴む男の腕を掴んだ。
指輪が光って、男の体を弾き飛ばした。
こんな力が出ると思ってなくて、俺でもびっくりした。
男はすぐに立ち上がっていて、何ともない顔をしている。
「その力は、ローベルト家には必要だ」
「なに…?」
「指輪から力を発しているのは分かっている、でも指輪に触れられないのならお前ごと手に入れるしかない」
指輪の力?さっき吹き飛ばしたのが指輪のおかげだったのか?
カイウスが、俺を守ってくれたのかな。
この指輪の力を男に知られて、男は指輪を手に入れたくてさっき触ろうとしたのか?
でも、さっきはまだ吹き飛ばすほどの力は見せていないけど…
この人はローベルト家のために生きているんだろうな。
たまに兵士をバカにしている態度は気になるけど。
でも、俺に任務が無理だと思ったから殺すなんて脅したんじゃないのか?
俺がローベルト家にとって必要だと思ったらやらなくて良いんだってならないか?少なくとも俺はそう思った。
「俺が任務に失敗しても、ローベルト家にいられる?」
「そうだ、ローベルト家に戻ってきたいのならその力をローベルト家のためだけに使え」
まさか、この男からそんな優しい言葉が返ってくるなんて思わなかった。
人を殺さないなら、それがいい…それでカイウスを助けに行けるのなら…
夜遅くなり、俺は早速屋敷に帰りたいとお願いした。
男は早く帰れば怪しまれると言っていてもう少し待つ事にした。
そんな早い時間じゃないのに、なんでそんな事を言うのかな。
周りを見渡すと、びっくりした光景があった。
あの騎士だ、さっき動いていたから浅い傷だったんだと安心していたが、もうあんな立って歩けるくらいに復活したのか?
騎士を見ていたら、男はそろそろ帰るかと言っていた。
裏道から出て、目的の男がいる建物の横を通った。
男は何かを落として、少し大きな音が立った。
後ろを見ると割れた瓶が地面に落ちていて、中から白いものが出ていた。
それを見て、男に落とし物だと伝えようとした。
その時、建物から誰かが出てきて急いで白いものを拾っていた。
それが目的の男だって気付く前に、俺の横をなにかが通った。
それは目的の男に目掛けていた。
目的の男は大剣を振り落とされて、叩き潰された。
斬られたという表現が不釣り合いなほど、それが人だって分からなくなるほどに無惨な姿へと変わってしまった。
「な、何して……殺さなくて良くなったんじゃ…」
血に濡れた剣を握りしめる男は、無言で俺を見ていた。
「そんなに奪われたくないなら薬をこんなところに捨てるなよ」
「一度裏切った奴はいらないが、薬に魅入られた人間はいい駒になる」
「……まさか、わざと?」
「裏切り者に与える薬なんてない、お前がもらう筈の薬も奪われるかもな」
男は俺が薬欲しさに裏切り者を殺すと思って挑発しているが、そんな事で人を殺すわけがない。
俺は大量に中毒者を増やそうとしているローベルト卿が許せない。
どんだけの人が悲しめばやめてくれる?…いや、やめてもくれないんだろうな。
拳を握りしめて、その場を離れた。
後ろから男も付いて来るが、もう気にしない事にした。
ハイドレイが言っていた作戦も、ハイドレイを誘った騎士がいた。
彼もまた、ばら撒かれた薬の被害者なのかもしれない。
目的の男はもう部屋に戻っていってしまった。
男に胸ぐらを掴まれても、なにか言う気分にはなれなかった。
俺がなんて言おうとしても、きっと響かないんだろう。
男にとって、死よりも薬を飲まない事の方が恐怖なのだろう。
「お前がこの任務に失敗したら、お前を殺せと命令がある」
「……」
「悪魔を召喚出来るからローベルト家の奴らは期待はしていた」
悪魔、そういえばそんな話だった…忘れていたな。
召喚できるわけがないのに、不思議な事に信じていたな。
あれはカイウスだし、カイウスは悪魔じゃないし。
俺が言った悪魔は架空の悪魔の話、カイウスの話ではない。
俺はただの人間だが、そう簡単に殺されるわけにはいかない。
胸ぐらを掴む男の腕を掴んだ。
指輪が光って、男の体を弾き飛ばした。
こんな力が出ると思ってなくて、俺でもびっくりした。
男はすぐに立ち上がっていて、何ともない顔をしている。
「その力は、ローベルト家には必要だ」
「なに…?」
「指輪から力を発しているのは分かっている、でも指輪に触れられないのならお前ごと手に入れるしかない」
指輪の力?さっき吹き飛ばしたのが指輪のおかげだったのか?
カイウスが、俺を守ってくれたのかな。
この指輪の力を男に知られて、男は指輪を手に入れたくてさっき触ろうとしたのか?
でも、さっきはまだ吹き飛ばすほどの力は見せていないけど…
この人はローベルト家のために生きているんだろうな。
たまに兵士をバカにしている態度は気になるけど。
でも、俺に任務が無理だと思ったから殺すなんて脅したんじゃないのか?
俺がローベルト家にとって必要だと思ったらやらなくて良いんだってならないか?少なくとも俺はそう思った。
「俺が任務に失敗しても、ローベルト家にいられる?」
「そうだ、ローベルト家に戻ってきたいのならその力をローベルト家のためだけに使え」
まさか、この男からそんな優しい言葉が返ってくるなんて思わなかった。
人を殺さないなら、それがいい…それでカイウスを助けに行けるのなら…
夜遅くなり、俺は早速屋敷に帰りたいとお願いした。
男は早く帰れば怪しまれると言っていてもう少し待つ事にした。
そんな早い時間じゃないのに、なんでそんな事を言うのかな。
周りを見渡すと、びっくりした光景があった。
あの騎士だ、さっき動いていたから浅い傷だったんだと安心していたが、もうあんな立って歩けるくらいに復活したのか?
騎士を見ていたら、男はそろそろ帰るかと言っていた。
裏道から出て、目的の男がいる建物の横を通った。
男は何かを落として、少し大きな音が立った。
後ろを見ると割れた瓶が地面に落ちていて、中から白いものが出ていた。
それを見て、男に落とし物だと伝えようとした。
その時、建物から誰かが出てきて急いで白いものを拾っていた。
それが目的の男だって気付く前に、俺の横をなにかが通った。
それは目的の男に目掛けていた。
目的の男は大剣を振り落とされて、叩き潰された。
斬られたという表現が不釣り合いなほど、それが人だって分からなくなるほどに無惨な姿へと変わってしまった。
「な、何して……殺さなくて良くなったんじゃ…」
血に濡れた剣を握りしめる男は、無言で俺を見ていた。
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