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裏の話3
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倒れるライムを男と鷹はジッと見つめていた。
もう死んだだろうか、思ったより呆気ない最期だった。
鷹は男に向かって『蜂の巣にしてやればいいのに、なんでしないんだ』と不満そうに言っていた。
別に同情したりしているわけではない、怒られてしまうからだ。
男に与えられた任務はライム・ローベルトを殺す事。
しかも、ただ殺すわけではない…顔が分かる状態で殺すように言われた。
男の主は誰かに見せるために殺すのだろう。
だから蜂の巣になんてしたら、誰が誰だか分からなくなる。
そういう武器を持っているが、男に与えられた任務がそれだから仕方ない。
一発だけだと不安だから何度か頭を殴っておこう。
その前に両足を潰した方がいいかな、顔さえ分かるくらいなら他がなくなっていても大丈夫だ。
人間は脆い、このくらいで死ぬのだから。
巨大なマシンガンを振り上げると、視界になにか光るものが見えた。
それは男の方に伸びて、マシンガンを持つ腕に細い糸が巻き付いた。
それを振り解こうとする前に、目の前
にいたライムが立ち上がった。
糸からは電流が流れて、男の腕を痺れさせた。
痛みに小さな声を上げて、マシンガンが手から離した。
鷹は男に『何してんだ!』と怒っていて、マシンガンを拾おうとしていた。
しかし、その前に足で踏まれて鷹は舌打ちしながら少し距離を取った。
「なんだ、死んだのかと思った」
「俺は死なない!」
「不死身?人間って不死身がいるの?」
『馬鹿野郎!ただの強がりだろ!ダメージは確実に食らっている、さっさと終わらそうぜ』
男と鷹が呑気に会話しているのを見て、眉を寄せる。
鼻から血が垂れてきていて、袖で血を拭う。
正直、今も頭がくらくらするが寝ていたら殺される。
どうにかして戦わなくては生存はまずないだろう。
男の腕と糸で繋がっているが、すぐに鷹がクチバシで切っていた。
糸をイヤーカフの中に戻して、拳を握りしめた。
マシンガンが使えなかったら、まだ勝利がある筈だ。
どんな仕掛けがあるか分からないから俺はマシンガンは使わない。
せめて遠いところに放り投げられれば、時間稼ぎになるかもしれない。
そう思ってマシンガンを足で動かしてみようとしたが、かなり重くてびくともしない。
しかたない、マシンガンの上に立って触らせないようにするしかない。
鷹かこちらに向かってくるから腕で攻撃をガードしつつ払う。
この鷹が聞き取れる言葉で話していた、リーズナと似たような精霊の類いか?
鷹はしつこく攻撃をしてくるから、追い払うのに必死になっていた。
男もライムに殴りかかってきて、男の攻撃をかわしていると鷹のクチバシが頬をかすった。
熱さと痛みに後ろに後ずさると、男はマシンガンを拾った。
マシンガンをライムに向けていて、走り出した。
すぐ後ろで銃の乱射音が響いていて、少しでも止まったら命はないだろう。
ずっと逃げて弾切れを狙うか、いや…弾の替えくらい用意しているだろう。
全部にやっていたら、ライムの体力が限界を迎えてしまう。
さっきの後頭部の衝撃で、長期戦は無理だ。
足の向きを変えて、男に向かって一気に走った。
男はすぐにライムに狙いを定めていたが、すぐに視界から消えた。
気付いた頃にはすぐ傍にライムがしゃがんでいた。
男がマシンガンを向けられない距離まで一瞬で詰める事が出来た。
大きな武器だからこその欠点があり、隙が出来る。
思いっきり下から顎に向けて硬い拳で殴った。
マシンガンを離す事はなかったが、軽くよろけていた。
すぐに距離を縮めて、腹に拳を叩きつけた。
隙を与えず、足で回し蹴りをして頭にヒットした。
まだ倒れるほどではなくて、よろけているだけだった。
鷹がライムの方に攻撃を仕掛けようとするが、男が近くにいるからなかなか攻撃を当てられないでいる。
まだだ、まだ男に体力は残っている…目的が自分を殺す事なら再起不能にするまで攻撃をし続けないと…
男の頬を殴ろうとしたら、かわされてしまい頭にまた衝撃が走った。
雨で濡れた地面に体が倒れて、全身泥に濡れる。
「あまり、調子にのるなよ…人間」
男に肘で殴られて、手が痺れて動かない。
動け動けと焦っていると、後頭部になにか硬いものが当てられた。
それは見なくても、マシンガンなんだという事は分かる。
男は小さな声です「逆らったし、蜂の巣にしてもいいよね、俺の事殴ったし、頭も痛いし、最悪…ムカつくムカつく」とブツブツと独り言を言っていた。
逃げなければ、そう思っているのに体が痺れて動けない。
(カイウス、俺…もう…)
その時、指輪が一瞬光ったように見えた。
『おい、戻ってこいってメシアが言ってる』
「待って、まだ殺してない」
『何キレてんだよ、さっきは蜂の巣にしないとか言ってたのに』
「だってコイツ、俺を殴った…このメシアの化身であるこの俺を…殺さないと気が済まない!」
ボーッとする思考の中で、メシアという聞き覚えがある名前を頭に浮かべた。
確かメシアって神の仲間が神をそう呼んでいた。
だとすると、やはりメシアの味方だったのか。
でもどうやって結果を破ったのか気になったが、今はそれどころではない。
マシンガンを後頭部に押し付けられて、心臓がうるさいほど飛び跳ねた。
「すぐに終わらせる」と言って、カチャと音が耳に聞こえた。
『ダメだ、新しい神の誕生に立ち会わないともっと怒られるだろ!メシアがずっと望んでいた一度しかない晴れ舞台なんだから』
「………」
『終わったらコイツを痛めつければいいさ、どうせ動けない』
「…………分かった」
マシンガンが後頭部から離れて、一瞬で男の気配が消えた。
ライムは薄れる意識の中、指輪の光が輝いているのを見た。
薄暗い牢獄の中、ある男は何も考える事なく、死んだように過ごしていた。
壁に背中を向けて、その時が来るのをジッと待っていた。
待つのはもう慣れている、何年も何分に感じるほどの時間を過ごしてきた。
外が少し騒がしくなったと思ったら、鉄格子の向こう側で吹き飛ばされた血だらけの騎士が横たわっていた。
その騎士を踏みつけて、別の騎士が牢獄の鉄格子を開けた。
「あの方が呼んでいる、もう魔力は使える筈だ」
偉そうに言っている男を見つめて、牢獄から出た。
ずっと窮屈だったんだ…良かった…出れて…
彼には感謝しないといけない、牢獄を開けた騎士団の裏切り者に…
神の力で死ねるんだ、これ以上ないほどの幸福だろう。
首を掴んで、手に炎をまとうと鎧を着ていても全身を炎が包み込み、燃やし尽くした。
感謝するべき相手はもう一人いた、こんな牢獄に入るきっかけを作った男だ。
もう一人にも腹が立つが、メシアに殺されるのは面倒だから手は出さないでおこう。
ライム・ローベルト、人間の分際で神を殴るなんて…死ぬよりも苦痛を味わわせてやろう。
長い髪を三つ編みに結びながら男は牢獄から出た。
もう死んだだろうか、思ったより呆気ない最期だった。
鷹は男に向かって『蜂の巣にしてやればいいのに、なんでしないんだ』と不満そうに言っていた。
別に同情したりしているわけではない、怒られてしまうからだ。
男に与えられた任務はライム・ローベルトを殺す事。
しかも、ただ殺すわけではない…顔が分かる状態で殺すように言われた。
男の主は誰かに見せるために殺すのだろう。
だから蜂の巣になんてしたら、誰が誰だか分からなくなる。
そういう武器を持っているが、男に与えられた任務がそれだから仕方ない。
一発だけだと不安だから何度か頭を殴っておこう。
その前に両足を潰した方がいいかな、顔さえ分かるくらいなら他がなくなっていても大丈夫だ。
人間は脆い、このくらいで死ぬのだから。
巨大なマシンガンを振り上げると、視界になにか光るものが見えた。
それは男の方に伸びて、マシンガンを持つ腕に細い糸が巻き付いた。
それを振り解こうとする前に、目の前
にいたライムが立ち上がった。
糸からは電流が流れて、男の腕を痺れさせた。
痛みに小さな声を上げて、マシンガンが手から離した。
鷹は男に『何してんだ!』と怒っていて、マシンガンを拾おうとしていた。
しかし、その前に足で踏まれて鷹は舌打ちしながら少し距離を取った。
「なんだ、死んだのかと思った」
「俺は死なない!」
「不死身?人間って不死身がいるの?」
『馬鹿野郎!ただの強がりだろ!ダメージは確実に食らっている、さっさと終わらそうぜ』
男と鷹が呑気に会話しているのを見て、眉を寄せる。
鼻から血が垂れてきていて、袖で血を拭う。
正直、今も頭がくらくらするが寝ていたら殺される。
どうにかして戦わなくては生存はまずないだろう。
男の腕と糸で繋がっているが、すぐに鷹がクチバシで切っていた。
糸をイヤーカフの中に戻して、拳を握りしめた。
マシンガンが使えなかったら、まだ勝利がある筈だ。
どんな仕掛けがあるか分からないから俺はマシンガンは使わない。
せめて遠いところに放り投げられれば、時間稼ぎになるかもしれない。
そう思ってマシンガンを足で動かしてみようとしたが、かなり重くてびくともしない。
しかたない、マシンガンの上に立って触らせないようにするしかない。
鷹かこちらに向かってくるから腕で攻撃をガードしつつ払う。
この鷹が聞き取れる言葉で話していた、リーズナと似たような精霊の類いか?
鷹はしつこく攻撃をしてくるから、追い払うのに必死になっていた。
男もライムに殴りかかってきて、男の攻撃をかわしていると鷹のクチバシが頬をかすった。
熱さと痛みに後ろに後ずさると、男はマシンガンを拾った。
マシンガンをライムに向けていて、走り出した。
すぐ後ろで銃の乱射音が響いていて、少しでも止まったら命はないだろう。
ずっと逃げて弾切れを狙うか、いや…弾の替えくらい用意しているだろう。
全部にやっていたら、ライムの体力が限界を迎えてしまう。
さっきの後頭部の衝撃で、長期戦は無理だ。
足の向きを変えて、男に向かって一気に走った。
男はすぐにライムに狙いを定めていたが、すぐに視界から消えた。
気付いた頃にはすぐ傍にライムがしゃがんでいた。
男がマシンガンを向けられない距離まで一瞬で詰める事が出来た。
大きな武器だからこその欠点があり、隙が出来る。
思いっきり下から顎に向けて硬い拳で殴った。
マシンガンを離す事はなかったが、軽くよろけていた。
すぐに距離を縮めて、腹に拳を叩きつけた。
隙を与えず、足で回し蹴りをして頭にヒットした。
まだ倒れるほどではなくて、よろけているだけだった。
鷹がライムの方に攻撃を仕掛けようとするが、男が近くにいるからなかなか攻撃を当てられないでいる。
まだだ、まだ男に体力は残っている…目的が自分を殺す事なら再起不能にするまで攻撃をし続けないと…
男の頬を殴ろうとしたら、かわされてしまい頭にまた衝撃が走った。
雨で濡れた地面に体が倒れて、全身泥に濡れる。
「あまり、調子にのるなよ…人間」
男に肘で殴られて、手が痺れて動かない。
動け動けと焦っていると、後頭部になにか硬いものが当てられた。
それは見なくても、マシンガンなんだという事は分かる。
男は小さな声です「逆らったし、蜂の巣にしてもいいよね、俺の事殴ったし、頭も痛いし、最悪…ムカつくムカつく」とブツブツと独り言を言っていた。
逃げなければ、そう思っているのに体が痺れて動けない。
(カイウス、俺…もう…)
その時、指輪が一瞬光ったように見えた。
『おい、戻ってこいってメシアが言ってる』
「待って、まだ殺してない」
『何キレてんだよ、さっきは蜂の巣にしないとか言ってたのに』
「だってコイツ、俺を殴った…このメシアの化身であるこの俺を…殺さないと気が済まない!」
ボーッとする思考の中で、メシアという聞き覚えがある名前を頭に浮かべた。
確かメシアって神の仲間が神をそう呼んでいた。
だとすると、やはりメシアの味方だったのか。
でもどうやって結果を破ったのか気になったが、今はそれどころではない。
マシンガンを後頭部に押し付けられて、心臓がうるさいほど飛び跳ねた。
「すぐに終わらせる」と言って、カチャと音が耳に聞こえた。
『ダメだ、新しい神の誕生に立ち会わないともっと怒られるだろ!メシアがずっと望んでいた一度しかない晴れ舞台なんだから』
「………」
『終わったらコイツを痛めつければいいさ、どうせ動けない』
「…………分かった」
マシンガンが後頭部から離れて、一瞬で男の気配が消えた。
ライムは薄れる意識の中、指輪の光が輝いているのを見た。
薄暗い牢獄の中、ある男は何も考える事なく、死んだように過ごしていた。
壁に背中を向けて、その時が来るのをジッと待っていた。
待つのはもう慣れている、何年も何分に感じるほどの時間を過ごしてきた。
外が少し騒がしくなったと思ったら、鉄格子の向こう側で吹き飛ばされた血だらけの騎士が横たわっていた。
その騎士を踏みつけて、別の騎士が牢獄の鉄格子を開けた。
「あの方が呼んでいる、もう魔力は使える筈だ」
偉そうに言っている男を見つめて、牢獄から出た。
ずっと窮屈だったんだ…良かった…出れて…
彼には感謝しないといけない、牢獄を開けた騎士団の裏切り者に…
神の力で死ねるんだ、これ以上ないほどの幸福だろう。
首を掴んで、手に炎をまとうと鎧を着ていても全身を炎が包み込み、燃やし尽くした。
感謝するべき相手はもう一人いた、こんな牢獄に入るきっかけを作った男だ。
もう一人にも腹が立つが、メシアに殺されるのは面倒だから手は出さないでおこう。
ライム・ローベルト、人間の分際で神を殴るなんて…死ぬよりも苦痛を味わわせてやろう。
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