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雨の降る日

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リーズナの挑発だって分かっているが、今の俺の事を言っているように感じて悔しかった。
カイウスを守るために強くなりたいのに、カイウスに頼るなんて…強くなったとはいえない。

深呼吸して、落ち着きを取り戻した。

もう一度やろうと洞窟に向かって走った。
今までも駆け抜ければなんとかなったんだから大丈夫だ、大丈…夫…

リーズナは心の中で時間を刻んでいて、俺の方を見た。

「良かったな、新記録だ…勿論出てくる速さのだけど」

「……はぁ、はぁっ」

変な汗が全身から出てくるみたいで、気持ち悪い。
自分でまだこの岩は突破出来ないって思っているから?
だから、岩を止める事もしないで逃げたのか?

せっかくここまで来たのに、リーズナの時間も使わせたのに…カイウスを守れない俺なんて、カイウスの傍にいる視覚なんて…

ポタポタと涙が地面を濃い色に濡らしていく。

拳を地面に叩きつけても、俺にはどうする事も出来ない。

俺はカイウスの言う通り、大人しくしていた方が良かったのかな。

『俺はどんな事があっても、必ず君のところに戻ってくるから俺のライムへの愛は永遠だから』

カイウスが俺に言ってくれた言葉が脳内に響く。

カイウスは俺の居場所を守ってくれているんだ。
俺の事を一番に想ってくれている。

なのに俺がカイウスの居場所を守らなくてどうするんだ。
怖くても、今…もう一人の自分と戦っているカイウスの方が何倍も辛くて怖いんだ。
カイウスのために俺は恐怖を克服する。

ここで逃げ出すわけにもいかない。

頬をなにかが揺らして、指で拭って目の前を見つめた。
すると、本格的に雨が降ってきた。
雷の音も響いて、リーズナは耳を塞ぎながら雨に対して文句を言っていた。

猫だから雨が苦手なのかな。

「くそっ、最悪だ…おい、今日はもう切り上げるぞ!」

「……」

「聞いてんのかよ!」

「リーズナは先に帰ってて、俺はここを終わらせてから行くから」

リーズナがどんな顔をしているのか、俺の後ろにいるから分からない。
きっとまた嫌な顔をするんだろうな。

俺はここを克服するまで家に入らない、そう決めた。
リーズナは何も言わず、遠ざかる足音だけ聞こえた。

深呼吸をしてから、気を引き締めて洞窟に足を踏み入れた。

数秒で出てきてしまったが、さっきよりは耐えれた。
克服はそう簡単なものではない、だからこそゆっくりと確実に俺はその先に進む。

指輪に触れると、雨に濡れた体を温めてくれるようだった。
軽く指輪にキスをして、洞窟に向かって駆け出した。

何度も行ったり来たりを繰り返していて、荒くなった息を整える。
さっきよりも雨が酷くなってしまったな、カイウス…大丈夫かな。

洞窟を見つめて、行こうと思っていたら視界が急に薄暗くなった。
上を見上げると、いつも上を飛んでいる鷹がいた。

雨の日に鷹が飛べるのか?

リーズナが言っていた違和感を感じて、洞窟の中に隠れた。
今はリーズナもいないし、どうしようか。

ここに神の仲間が来る事は出来ない、カイウスの結界は他の魔力を察知してよせつけない。
でもあの鷹が普通の鳥だと思うのは早すぎる。

もう少し、洞窟の中で様子を伺った方がいい。

その時、視界の景色が不自然に歪んだ。
なにかが弾ける音を聞いて、景色は何事もなかったかのように元に戻った。

え……もしかして、今の…結界が壊れた音?

なんで、今まで鷹が来る事はあったけど結界が壊れる事はなかった。

足音が聞こえる、誰かが俺がいる洞窟の上に立っている。
洞窟を壊されたら生き埋めになってしまうとすぐに洞窟から離れた。

雷が光って、すぐ近くに落ちた事が分かる。
でも、そんな事今の俺にはどうでもいい。

「…だ、誰?」

それが精一杯の俺の言葉だった。

茶色の短髪に、目元が包帯に覆われている男が立っていた。
男は俺と同じ歳みたいだが、それに似つかわしくないほど自分の身長以上に大きなマシンガンを持っていた。

ジリジリと距離を取る俺を無言で見ていた。
目の前が見えているのか分からないが、俺に顔を向けている。

敵か味方か分からないが、結界を破って入ってくるなんて普通じゃない。
家の中に入ったら、せっかくの居場所がまた壊されてしまう。
俺が守らないと、カイウスと俺の大切なの場所を…

お互い無言で少し時が止まったようだった。
どちらが先に動くのか、相手の動きを読まないと…

これは修行ではない。

男の後ろからあの鷹が姿を見せた。

『やれ』

鷹の声を合図に男は俺に向かってマシンガンを構えた。
あの鷹、人の言葉を喋るのか?
それに、上下関係が鷹の方が上に思えた。

攻撃を一度避けても休まる暇はなく、俺に狙いを定めて撃ってくる。
走って避けるだけなら簡単だが、雨のせいで地面が滑りやすくなっていた。
足が取られて、地面に転けてすぐに立ち上がろうとした。

すぐ近くに気配を感じて逃げる暇もなく、頭に強い衝撃を受けた。
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